転がる死屍累々を眺めながらクーは呟いた。
「全く、練習相手にもならねぇとはな」
「相手は普通の人間よ!」
凛のツッコミが冴えわたる。
「全く……つまらないぞ」
ネロが不満そうに呟く。
「そんなことないわ。格好良かったわよ」
「うむ! 当然だな」
凪乃の言葉で一瞬で機嫌が直った。
ほのぼのした雰囲気が変わったのを一番先に気が付いたのはクーだった。
「! 嬢ちゃん」
「うわっ」
クーが凛を掬い上げて後方へと飛ぶ。
「奏者!」
「!」
ネロの声にはっとした凪乃はネロの腕をつかみ後方へと移動した。
目の前には気絶させたはずの死屍累々が起き上がる姿が見える。しかし、その目はとても空ろだ。
「うわ、ゾンビ?!」
「何だあれは」
凪乃とネロが見たままを述べる。
「どうすんだよ」
「って言っても人間でしょあれ」
★
一番風呂場に近い戦闘地点では少女と凪人が睨み合っていた。
「ふふふっ」
少女がにまにまと笑う。その目にはうすら寒いものが宿っているような気がした。
「つか、お前きめぇな」
「いやぁ、同類と会っちゃうなんてね。きみはアレ? どんな願い事でも叶えばいいのになぁとか思ってたクチ?」
凪人に期待を込めた目線を向ける少女。
「いや、正直いらねぇとは思ったがもらった……つか、押し付けられたんでしょうがなく持っているって感じだが?」
ハッと鼻で笑うような表情で凪人が答えた。
「ええーもったいない。なんでも願いが叶うのに」
少女の目が淡く光った。しかし、その光は濁りに満ちていて凪人とは180度違っている。
「お前の場合反転しているがな」
「ふーん、その眼綺麗だね。『ボクに頂戴』」
凪人の目を見つめながら少女は答えた。
「『断る』」
「うー。やっぱこれだけだとだめか」
残念と言いつつも楽しそうにしているのはこの場に誰かいたら指摘するだろう。
「残念だな。俺が落ちるなら遠坂か相方だけだ」
自信満々に言っているが後者はどうなのだろう。
「うわぁ、リア充爆発しろ」
「するかよ」
「うわ、即答」
「爆発も炎上も死亡フラグもお断りだ!」
凪人の服装が彼の相棒である赤き錬鉄の英雄の服へと切り替わる。その手には夫婦剣が握られていた。
「おお、かっきー。じゃあ特別特価ということで!!」
少女の服装があの全ての悪を押し付けられた復讐者の服装へと変わる。もちろん女性用に服装は変わっているが。
「さて、正々堂々なんて絶対にないけどやりますか」
「はっ、上等!」
月の聖杯の使者と冬の聖杯の具現者による直接戦争の火ぶたが切って落とされた。
★
そんな大きな戦いが始まっていることなぞつゆ知らず。絵師はのんきに絵を描いていた。
「よし、完成」
明久が脚立の上で伸びをする。足下のアマテラスは首を傾げた。
「わぅ?(扉?)」
「まあ、入った人にかわかりませんってことで」
明久が携帯で誰かに連絡をかける。使用禁止? 戦争中じゃないからいいでしょ。
「あ、こちら絵師、作業完了。オーバ」
『ん、了解。無駄に量が居たからな。まだ全滅してねぇけどいいか?』
どうやら雄二に連絡を入れていたらしい。
「いいよー。五百人来ようが大丈夫」
★
その頃、
「っ」
「はっ、口ほどにもないな」
腕や足にけがを負った凪に少年は悪人のような顔で笑う。
「テメェみたいな雑種には興味ねぇんだよ。ま、テメェのあの狐みたいな奴だったら我の所にこさせんだがな」
王の財宝からルールブレイカーのようなものを取り出す。その姿を見た凪が二マリと笑って呟いた。
「――――――ね」
「何だ?」
聞き逃したらしく尋ねるあたりは普通の反応と言えるかもしれない。
「いやぁ、実に君は偽物だね。そう言いたかっただけさ。ぼくが知っている英雄王は確かに慢心しているときは残念だったけど慢心を捨てればラスボスって感じのかっこいい人物だったさ。ウチの玉藻が何だって? あえて言わせてもらうけど玉藻はぼくのだよ。それはこの次元においてはどんなことがあったって変わらないね。ルールブレイカーでも何でも持ってきなよ。残らずぼくが打ち砕いてやる。君に勝てるのかって? ぼくは偽物である君なんかよりもっと英霊らしく行かせてもらうよ。まあ、ぼくが一緒に居る玉藻に勝てるサーヴァントなんてそうそういないだろうけど」
ノンブレスで言い切った。凪の怪我がすべて治っていく。コードキャストを発動させたらしい。ついでに言うのならば服装も変わっていた。
「ふっざけ」
その言葉にキレたらしく王の財宝を発動させる少年、それを見た凪がさらに笑った。
「いやあ、実に慢心の限りを尽くしているねぇ。偽物君? キャスタークラスの本性を知らないとお見受けした。そんじゃあ、まあ『殺させて』頂きますか」
その言葉と同時に王の財宝が消え失せる。
「な、何で、何でだよ」
「ぼくの知人にね式って人が居てさ。彼女の能力を強制再現させる特殊空間だよ。いやぁ、これってセッティングするのに時間がかかるのさ。キャスタークラスの基本攻撃方針は穴倉に籠ってやってきた敵を迎撃だよ? そんなのも知らずにキャスターの陣地にのこのこ入ってくるってバカじゃない? いや、バカなんだねぇ。最強の能力を持ってるからどうにかなる? ふざけんな、ぼくらはあったようなないような知恵と気力を振り絞ってあの戦争を生き延びたんだ。何度も何度も殺されそうになったさ。ロビンやユリウスの殺気は身に染みるほど痛かったし、ありすたちの無邪気な悪意には背筋が凍るほどだ。それに友人のこの手に掻けた恐怖は今だって思い出したくもないくらいにきついさ。あんたは現実見てねぇんだよ。ここが物語? はぁ? ふざけんな。ここでぼくらは生きてんだ。君らみたいなのは多大なる大大大大迷惑だよ。一昨日きやがれ!!!」
服装が式と同じようなものに変わった凪がパニクった少年を蹴り飛ばした。少年がゴロゴロと転がり壁に叩きつけられる。少年は気絶したようだ。
「はっ、ざまぁねーな」
普段の口調なんて全く欠片もないほどに毒が籠りまくった口調で凪がのたたまわった。
「おお、すげぇ」
「! 誰かな?」
先ほどまでなかった気配に気が付いて凪が振り向く。
そこには茶髪に金目の少年が居た。
「あ、悪い。えっと、はじめましてってやつか?」
「そうだね……見たところ
感じる魔力から同類であると感じた凪が警戒しながらも尋ねる。
「まあ、そういうことでウチのバカ転生者が失礼した」
「あー、やっぱ転生なんだ。痛い言動見てるとそうかなって思ったけど」
「まさか兄貴の宝具取り出してこっちのあいつを
「兄貴……って前世でクーさんとかかわりあったの?」
転生者と言っても色々なクチがあると考えた凪が推理してそういう。
「いや、いい兄貴分だから兄貴」
「あー、なるほど。とりあえずこれ回収しておいてよ」
専門家が居るのであればそちらに丸投げした方がいいしと凪は言う。
「それにしてもキャラモロに変わってんな」
「はっはー、だてにキャス狐の相棒やって無いよ。一緒に居たら毒舌移っただけだから」
「そうか、とりあえずこいつ回収っと」
気絶した少年は何かに吸い込まれるかのように消え失せた。
「あと二人かな?」
三人体制で防衛陣営張って自分のところまでで二人だったことを鑑みて凪が言った。
「だな、俺は回収しているだけだから。あいつにいたっては終わるまで観光行ってくるとか言いやがった」
「へぇ、大変だね」
「誰が?」
「君が」
「どうも」
凪の弱点は西崎とキャス狐
凪の沸点はキャス狐と西崎
そんなわけで久々ながらも凪の本気モードです。兄が技術で姉が物理でいくのであれば凪は正論と持論を織り交ぜた交渉術?で攻めます。本人からしてみればもう少し能力が欲しいとのこと。どっちかと言うと一方的に言っているだけなのでどうなのかなぁって気はします。
久々にステータス、本家風、あくまで風です。
クラス:キャスター/
真名:白波凪
属性:中立・中庸
筋力:E
耐久:D
敏捷:C
魔力:C
幸運:B++
固有スキル
:陣地作成:A++
相方であるキャス狐の分までやっていたせいかこれほどのランクが付いた。
陣の中であれば自分が過去に戦った相手であればどんな人物の能力でさえも再現可能、あくまで陣地内なので解除すれば解放される。規格外能力(今回の「直死の魔眼」など)に関しては徹底的な設定が必要。
:恋する乙女:EX
現在進行形で恋しているためこんな能力が付いている。好いている物や人のピンチになると全能力が二段階アップ。ただし、軽いバーサク状態なので注意が必要、好いているもの以外は完全無視していく
宝具
『最期故の奇跡』[ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:1~4 最大捕捉:×××人]
己の死と引き換えに月の聖杯戦争に参加していた人々を地上に還した逸話から
世界の理を一つだけ変えることが可能、ただしこの宝具の使用
要はまどマギのまどかのように世界の理を変えて概念に成り果てる
『規格外の軌跡』[ランク:A 種別:概念宝具 レンジ:1 最大捕捉:2人]
あまりにもイレギュラーな聖杯戦争を勝ち抜いてきたが故の奇跡の軌跡
どれだけ確実に死ぬような状況下にあろうとも人を救い出せる奇跡を起こせる
その代り、その道のりは平坦なものではなく規格外の連続である