白波家、固定電話が鳴った。
「あ、西崎君からだ」
ナンバーディスプレイを見た凪がうれしそうにする。
「携帯番号暗記してるの?!」
「当然でしょ?」
にっこりと笑った後、凪は受話器を取り、楽しそうに喋りだした。
さらに別のところから着信音が響く。
「お、遠坂からだ」
「えっと………」
凪乃が何か言いづらそうにするが、
「いや、文字盤に普通に表示されてるからな?」
「そうよね」
一安心した凪乃だった。
その少し後、また固定電話が鳴る。
「あ、吉井からだわ」
そのまま普通に受話器を取り、話始める。
「「………」」
兄と妹は顔を見合わせ。
「お姉ちゃん、人のこといえないよね」
妹が正論で締めた。
★
一方、ショッピングモールのベンチに若干遠い目をした明久が座って携帯で電話をかけていた。
「あ、凪乃さん? ちょっと相談に乗って欲しいんだけど」
『どうしたのよ』
「あはは、なんて言うかさぁ」
明久は前方に視線をずらす。そこには
「アタシはこっちの方がいいと思うけど?」
「僕は断然こっちだね」
明久の母親への土産で争う美人と美少女が居た。ただし、持っている品がゲテモノ過ぎて逆の意味で人目を惹きつけている。
「どうしよう。人の感性って分からない」
『何事?!』
凪乃はそんな状況なんて分からないのでいきなり何を言い出したのかと驚く。
「あー、実はさ。今、ちょっと買物に来てるんだよね。それでウチの母親になんかお土産を買おうって話になってさ。選んだものがちょっとね………ウチの母親ほど極端ではないんだけど普通の人が買うものじゃないなって」
『ちなみに何よ』
そこまで言われるとはどんなものなのだろうと好奇心から聞いた凪乃は次のひと言で少々絶句した。
「臓物撒き散らした人形か足の生えた鮭」
『………それはちょっと可笑しくないかしら』
想像しただけでもちょっとないなぁと思えてしまう代物だ。
「だよね。どうしよう、母さんああいうの好きなんだよね」
『え? 本当に?』
かなり美人で人好きのする人なのに、と凪乃は驚く。
「せめて普通のを提案するべき? それとも何か食べ物でも買うべきかなぁ」
『とりあえず、普通のものを探したらどうかしら。あなたのお母さんが好きそうなものであなたが許容できそうなもの』
正論を言ってからあれ? と気が付いたことがあった。
「あ、そうしよう。ありがとうね」
『どうってことないわよ。それにしても、わたしでよかったの?』
「え、何で?」
『もっと、こう……仲がいい人居るでしょ? ………メアリーとか』
金髪に青い目をした彼女は明久ととても仲がいい。同じ女というのであれば彼女に聞けばいいのではないだろうか?
「………メアリーって意外とゲテモノ好きなんだよ。ゲルテナの作品でさ、『赤い目』ってあるんだよね。あれが普通って言えるからさ、凪乃さんみたいな普通の感性ある人と友だちでよかった気がする。うん、勇気でた。何か普通の探しに逝ってくるね!」
『え、ちょ よし……』
慌てる声に気づくわけもなく明久は電話を切った。
★
「待ちなさい。ちょっと、何で戦場行くような台詞言ってるの……って切れてるし」
ちょっと、呆然としながら受話器を戻す。
「………大丈夫かしら」
ぼそりと呟いた言葉に敏感に反応してくる
「気になるなら行ってくればいいじゃないか。別に本格的自宅待機じゃないんだし。最悪霊体化すればいいと思うよ?」
「っ………うぅ………」
凪乃は意外にもさっくりと甘言に落ちた。
「………………行ってきます」
「いってらっしゃい」
手をひらひらとさせながら凪が鼻歌交じりにケータイを取り出した。
何をする気かは不明だが。
「♪」
「機嫌いいな」
「いやぁ、人の恋愛って見てるともどかしくて面白いから」
うれしそうな凪の顔を見て凪人がげんなりする。
「さいで」
「お兄ちゃんがすんなりすぎだった分、楽しめるかなぁ」
によによと笑う姿は一種異様にも思える。なんでこうなったと頭を抱えながら凪人は問いかけた。
「お前って本当にさ」
「恋は人を変える劇薬だよ?」
求めている答はそういうことではない。
「何処からどう派生すればそういう人格に落ち着くんだよ」
確かベースは俺、もしくは妹だったよな?! あれか、実は俺や妹にもこういう方向があるとか? うわぁ、嫌だ。脳が全力投球で考え事にひた走ろうとする
「アレじゃないの? 色恋沙汰とかなさすぎた。それから、相棒は一心に愛してくれる良妻ですから」
「もうツッコミいれるの放棄したい」
三人兄妹の長男は俺はもう家族の心が分からないとか念話で相棒に零して、なんでさとのお言葉を頂いていた。
『他人の恋路は蜜の味、自分の恋路は茨道』
そんな話