「さて、どうしよう」
凪乃との電話を終えた明久はしばらく店内を歩き回っていた。どれがいいかなぁなんていうのは二の次でどうしてこうなったという思考回路ばかりが優先されている。
「そもそもギャリーと安心院さんたちが喧嘩しなければこんな状況にはなってなかった気がするんだけど」
あーあ、とかぼやきながら店内を見て回っていた明久に誰かが声をかける。
「あ、吉井」
「あれ? 凪乃さん? もしかして、買物?」
声に振り向いてみれば、先ほどまで電話をしていた凪乃だった。授業中止になったのは一緒なのだし、買物に出かけていても可笑しくはない。
「そ、そうなのよ。それにあんな電話あったから………大丈夫かしらって」
「心配してくれてありがとう。でも、いつもの事だし大丈夫だよ?」
「そうなの」
その後、二人で見て回ることにした明久と凪乃はふとぬいぐるみのコーナーで立ち止まった。
「うーん、これがいいかな」
「あら、かわいいわね。アマテラスっぽいし」
明久が手に取ったのは白い犬の人形だった。よく見みればアマテラスに似てなくもない。
「あー、何か見た気がしたけどそれか」
「自分で選んでて気が付かなかったの?」
凪乃ナイスツッコミである。
「まあ、いいや。これで決定」
そのまま喧嘩をつづけているであろう二人のもとへと向かう二人、行って見れば案の定まだ喧嘩をしていた。
「ギャリー、安心院さん これどう?」
二人の前に人形を差し出す。二人は急に入ってきた乱入者に顔を向けた。
「んー?」
「あ、なかなかいいね」
二人の美的感覚に合ったらしい、これで決定しましょうということで決着した。
明久が心底ホッとした顔で、
「それはよかったよ。頼むからさ、その臓物撒き散らしてるのとか鮭に人間の足つけたみたいなのは止めて」
心のそこからの叫びを告げた。
「そういえばそうね」
「ちょっと変だったね」
今更ながらに二人が気が付いた。そもそも臓物を撒き散らした人形とか鮭に人間の足をつけたようなストラップなど需要があるのだろうか?
「母さん好みではあるけど、えぐいのはちょっと」
「御免なさいね………って、あら? あなたは」
「ん? おや、君は明久のクラスメイトじゃないか」
「あ! えっと、こんにちわ」
凪乃が慌てて頭を下げる。その様子を見た二人が顔を見合わせて、あーなるほどといった表情をして言った。
「明久も隅には置けないわね」
「え?」
その台詞に明久が驚く。驚いていると安心院がさらに言った。
「そういうことだね。ギャリー、僕らはお邪魔だしね」
「いや、なんで」
明久が説明を求めようとしたが、
「「じゃあねー」」
ギャリーと安心院はそのまま何処かへ行ってしまった。
「「ええっ、なんで?!」」
★
二人が去った後、
「なんでよ」
いきなり居なくなった保護者? 二人に驚く凪乃
「ごめん、僕も分からないや」
明久も驚いていた。ちなみに手に持っていた白い犬のぬいぐるみはギャリーによって持っていかれている。
「はぁ、とりあえず。買物行く?」
「あー、何か巻き込んでるみたいだし。買いたいものあったら付き合うよ」
相変わらずのフェミニストである。
明久の意見を聞いて凪乃は少々考えてから、
「そうね、そういえばネロが宝石欲しがってたのよね」
「だったら見に行く?」
「そうしましょう」
二人は宝石店へと向かった。
★
蒼髪に中学生ほどの身長の少女がショッピングモールをテクテクと歩いていた。
「うー、ひまひまひまひまひまひまひまひまぁぁぁぁぁ」
いきなり両腕を空へと突き上げた。偶然にも通行人が居なかったのは不幸中の幸いかもしれない。居たら確実に注目の的だっただろう。
「ひまだよぉ。ゆーじー」
居ない彼氏の名前を呟いてみるが、それでどうにかなったらびっくりだ。
暇だと愚痴りながら蒼が横を向けばそこには明久と凪乃が居た。仲良さそうに宝石店でアクセサリーを見て回っている。
「うに? ん、あれ?」
じっくり観察してみれば凪乃の頬が少々赤くなっていた。
その様子を見た蒼は実に楽しそうにニマニマ笑う。
「おー、デートするなんてアッキーも隅に置けないにゃー」
ピロリーン 蒼の携帯がシャッター音を立てた。
デート? 真相、皇帝ネロって宝石好きだったらしいです。
指輪のコーナーだったのは偶然、只単なる偶然です。
甘酸っぱいものを期待した方ごめんなさい。これが自分の限界です。
このまま二人で回ってそうだよなぁ。