今から約7年前
ゲヘナ自治区。ゲヘナ学園が治める自治区であり、呪術師達が介入することがない本来の世界線では治安が悪いことで有名だった。生徒達も金さえ払えば依頼を遂行する便利屋68(ぶっちゃけ高校デビューの良い子達)、テロ軍団とも言える美食研究会、温泉研究会などの物騒な連中も多い。
学級崩壊は当たり前、教育機関としては破綻しており、常に治安維持組織でもある風紀委員会が目を光らせている。だが、それは本来のブルーアーカイブであり、此処では……我らの呪術師が全員参戦してくる。
「君……名前は?」
魔王のような男性、頭にヘイロー……輪っかを着けた女性の夫妻。そして夫妻と共に歩く幼い少女はゲヘナ自治区の路地裏で、生きる気力を失って1人の少年が壁に凭れていた。少年はキヴォトスでは滅多に見られない『人間』だったが……気配が『生徒』に近かった。
今は雨が降っており、少年の顔は今にも辛そうだ。心配した夫妻は少年に近づいて、傘で雨から守ってくれた。
「伏黒……恵」
彼は伏黒恵。伏黒恵次の兄であり、伏黒甚爾の長男。虎杖先生の親友であり、十種影法術の使い手だ。
だが、恵は生きる気力を失っていた。このまま方っておいたら何も食わず飲まず自分で衰弱死してしまうかもしれない。しかし、恵にはそれが許されなかった。
恵の身体はもう、普通の身体ではない。人間の身体をした特級呪物といっても良いだろう。虎杖の身体から抜け出した宿儺に身体を乗っ取られ、そのまま俗と呼ばれる物を呪具に変える儀式で、全身を呪物に近いナニカに変えられた。身体の頑丈さは天与呪縛のフィジカルギフテッド、虎杖先生に匹敵するようになり、簡単に死ねなくなったのだ。
「恵くんだな?こんなところで寝ていれば風邪を引くよ?」
悪魔の男性は優しく恵に話しかける。だが、恵の心の余裕はない。
「放っておいてくれ……」
「しかし……」
「俺のことなんて放ってくれよ!!」
突然、声を荒げる恵。
「俺なんて……もう生きる資格が無いんだよ!!宿儺に身体を乗っ取られて多くの人を殺した!!生きてほしかった人達をこの手で殺した!!津美紀を……姉を殺した!!五条先生も……乙骨先輩の身体も……多くの人を傷付けた!!
そんな俺に生きる資格なんて無いんだよ!!いっそのこと殺してくれ!!」
多くの人を殺ろした。実行犯は身体を乗っ取った宿儺であるが、最愛の義姉、恩師、先輩達や仲間達、親友の兄を殺した。
「辛かったね……」
女性は優しく、恵を抱き締めた。
「恵くん。私達の家に来ないかしら?」
それが伏黒恵と陸八魔一家との出会いであった。その後、陸八魔家に引き取られ、そこで心の傷を癒した伏黒恵……彼は陸八魔の一人娘であるアルから兄のように慕われ、元気になる。
その後、特例としてゲヘナ学園に転入した恵は瞬く間に、ゲヘナ学園の頂点に君臨し……ゲヘナ学園の番長となった。ゲヘナ学園の番長となった後は、ゲヘナ自治区のチンピラを全員鎮圧させ、歩道橋から吊るしたり、チンピラでピラミッドを作ったりして大暴れ。
ゲヘナ自治区の治安は瞬く間に、良くなったのだった。
そして卒業後は腕っぷし+番長として自治区の治安を改善(物理)した功績を買われて、戦術教官としてゲヘナ学園の教員と成ったのだ。
アビドス高等学校。
「へー、お前達、伏黒の教え子だったのか」
「なるほどな、恵の教え子か」
「ほーん、恵お兄ちゃんの教え子ですかい」
突如としてアルのスマホに届いた音声メッセージ。そのメッセージを聞いた虎杖、パパ黒、恵次は一先ずお茶を飲む。数秒間の沈黙が流れた後……
「「「なっにぃぃぃぃい!!」」」
部屋が震えるほどの3人の叫びが反響した。
「どっどうしたのよ……貴方達、恵さんのお知り合い?」
「知ってるもなにも、俺、伏黒の親友!!」
「俺は恵の親父だ」
「俺、会ったことないけど、恵お兄ちゃんの弟」
アルの疑問に答えるように、虎杖、パパ黒、恵次が答える。
「そうですの……恵さんのお友達、お父さん、弟さんですの。世間は狭いですわ…あっ、お茶いただきます」
ずづっとお茶を啜るアルちゃん。再び数秒の沈黙が流れた。
「なっ……なんですってぇぇぇえ!!」
アルちゃん、余りの驚きに絶叫する。
「恵さんは私の兄同然の人ですわ!!6年~7年前に、ゲヘナ自治区で今にも燃え尽きそうな恵さんを見つけたのです!!」
と、その瞬間……校庭に大きな衝撃が響き、巨大で蛇の尻尾を生やした鵺が舞い降りた。この鵺は大蛇と鵺を掛け合わせた鵺……通称大蛇鵺であり、移動はもちろん……大規模放電での攻撃と多彩な活躍が出来るのだ。
その大蛇鵺の頭の上、そこに軍服姿のイケメンが立っていた。そのイケメンこそ、伏黒甚爾と瓜二つの顔立ち……ママ黒そっくりの髪質……伏黒恵(22歳)である。
「伏黒教官だ……」
「教官、本当に飛んできた」
伏黒教官、降臨。これには便利屋68の社員達も驚き、大蛇鵺がどろっと影に溶けると……恵は歩いて校舎の中に入った。
「久しぶりだな、虎杖。6年ぶりだな」
「おう。思ってたよりも元気そうじゃん、伏黒!」
最強コンビ。ここに集結、序でに……
「はじめまして!恵お兄ちゃんだよね!僕、伏黒恵次!お兄ちゃんの弟だよ?」
「弟!?……そうか、宜しくな」
伏黒恵、伏黒恵次、産まれた世界は違えど伏黒兄弟、ここに揃う。
「よっ、恵……」
「俺の親父って事だな。1発殴らせろ」
「恵!?」
「これは俺の分、これは津美紀の分!!これは玉犬の分!!これは鵺の分!!これは蝦蟇の分!!」
「もうやめて伏黒!!おやっさんボコスカ殴らないで!?今のお前のパンチ、俺と宿儺の次に強いから!!」
「御厨子使わないだけマシだろ」
伏黒恵(22歳) 術式 十種影法術(現代解釈無し、魂を知覚する反転術式で式神の復活が可能)、御厨子(平安仕様)
その後、ママ黒とも再会したが……ママ黒相手は優しくハグした恵であった。
後日、ママ黒には22年分の母の日としてカーネーションや高級バッグ等、パパ黒には22年分の父の日としてゲヘナ自治区産の缶ビールの箱が送られたが……
『俺、酒酔えないからな。虎杖にやるか』
ビールはなにも知らない虎杖先生の手で消費されたとか。
「こっ……こんな事が……」
アビドス砂漠。そこで転がる大量の戦車や戦闘ヘリの残骸、そして意識を手放したロボットの皆様。
カイザー理事は上を見上げる。そこには……
「今際の際だぞ」
鼻の上に紅い線が入り、赤燐躍動を発動させた虎杖先生が居た。
どうしてこうなったのかは、次回明らかに!!
次回、カイザー理事……捕まる。
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