先生と空崎ヒナの結婚生活 作:シャーレの先生
※エピソード毎に一人称で書くか三人称で書くかブレちゃっていますが、書きたい話優先してこうなっちゃってます。すみません。
先生が目を覚ますと腕の中でヒナが眠っている。うわぁ、キスしたい。ギュッと抱き締めたい。いい匂いがする。嗅ぎたい。嗅いだ。すごく嗅ぐ。ヒナを起こさないようにゆっくりと抱き締めて、先生はヒナの体温と匂いを堪能する。
全身で感じ取るヒナが脳に達すると、脳はその情報を余すことなく処理する為に覚醒を始め、夢心地の先生の意識がはっきりとする。
先生はヒナを起こさないように細心の注意を払いながらヒナの身体の下から腕を抜き、さながら
「おはようアロナ」
「おはようございます先生。今日はお休みですが、早起きですね」
「なんかお腹空いちゃってさ」
こっそり寝室から持ち出していたタブレット型デバイス「シッテムの箱」に話し掛けると、その中のOS、アロナが挨拶を返す。朝食の準備の為に料理用のプレイリストを呼び出すと、セイアの哲学書朗読の音声が流れ出す。なんか…………ランダム再生で変なものを引き当ててしまったが、またこれも青春ということにする。
朝ご飯の準備でいい匂いが立ち込めて来た頃、ヒナが起きてくる。
「おはようヒナ。今日これから仕事? 起きたらヒナがいたから、お弁当に出来そうなもの作ったけど」
「うん」
寝ぼけヒナは洗面所に吸い込まれて行き、帰ってきてから返事をした。
「おはよう先生。今日は休みよ。先生もそうなの? 嬉しい」
寝起きで頭ぽやぽやのヒナはそのまま食卓に付く。可愛い。
「じゃあ一緒に朝飯が食えるね!!
ヒナがいつ起きるかわかんないから手癖で作ったので、めっちゃ日本風だよ。おにぎりがこっちからシャケ、おかか、梅干しはヒナ苦手だから私用。
ネギ入りの出汁巻き玉子は今作ったとこで、それときんぴらごぼうとひじきと大豆の煮物は残り物だからちょっと乾いちゃってるけど、今からチンする。豆腐とマッシュルームの味噌汁は、もうすぐ煮えます」
「朝から豪華。素敵な旦那様ね」
「意外と優良物件だったろ? でもお弁当用に作ってたからちょっと塩っぱいかも」
「先生の故郷の味は大抵美味しいから心配してない」
「まぁ、あのゲヘナ風紀委員長の胃袋を掴めたなんて、光栄ですわ〜〜!!」
褒められた先生は急激に似非お嬢様になる。何故なるのかは誰にも分からなかった。
「玉子美味しい」
「ふっ、褒めても何も出ないぜ。焼き立てだから特別美味いのさ。あーいや、出るかもヒナ今日一日休み?」
「そう。明日の朝まで」
「なるほど。私も一緒なので、2人でお出掛けしようか。デート。おデート。shall we?」
「いいけど。行きたいところのプランが、ない」
「我が意を得たりとばかりに、プランがあります。私の趣味に付き合ってもらうことになるけど」
「ゆっくりできるところならなんでも良いかな」
行儀は良くないが、先生は箸を持った右手の小指で卓上に置いたタブレットを操作する。
「ワイルドハントでヒナに是非見て欲しかった個展があったんだ。だからそこ行って、時間があればワイルドハントの街並みを散歩しながらお昼適当に摘んで、色んなバンドが入れ替わり立ち替わり演奏するバンドハウスがあるのでそこに行ってダラダラ演奏聞きながら夕食にして、早めにボチボチ帰れば明日にも響かないでいい感じにリフレッシュ出来るかなって。どう?」
ヒナはおにぎり越しにタブレットを見て、「任せるわ」と一言。
そうと決まれば話は早い。朝食を食べ終えた2人は先生がヒナの着替えを手伝うなど無駄にイチャイチャしながら出掛ける準備をし、少しお洒落しながらも帽子を目深に被った地味な身バレを防ぐ格好でワイルドハントへ向かった。
2人が向かった先はワイルドハントの生徒の小さな小さな個展。中に入ると作者であり自ら案内役もしていた生徒が挨拶をしようとするが、個展内に作者以外には誰もいないことを確認し帽子を脱いだ先生とヒナを見て、固まってしまう。シャーレの先生とゲヘナを支配する風紀委員長その人が周囲にハートマークを飛ばしながらやってくると、それに割って入るのはまぁ普通では無理であろう。先生は一度こちらに目配せをしてくれたので、作者の生徒はそれで挨拶を行ったことにすることにした。
個展ではキヴォトス各地の裏路地や市街地の「道」を描いた風景画が展示されている。
生活感のある道の絵は学園毎にずいぶん違う景色だと思いながら、でも共通する部分もあると思いながら、ヒナは絵を順番に鑑賞していたが、あるゲヘナの裏路地の絵を見て足が止まった。
しばらく2人は立ち止まり、それを見て先生が声をかける。
「この絵良いよね。このちょっとゴッホっぽい、って言ってもキヴォトスじゃゴッホはいないか。ええと、印象派っぽいけどどこか作者の意図というか、思い入れが込められた感じがただの日常的な裏路地に素晴らしい日々があるんだって気付かされる感じがするのが良い」
「先生の言ってることはよくわからないけど、見慣れた景色なのに、すごく特別に感じる。でもこの景色を見てると落ち着く気持ちもなる」
先生は待ってましたとばかりに手を揉んで言う。
「そう! そうなんですよヒナさん。
ところであの、この素晴らしい絵が1枚3万円程でですね。愛しのヒナ様にプレゼントしたいな〜なんて。まだあまり注目されていない、これから人気が出るだろうっていう作家さんの絵であの今買うと非常にお得だと思うんですね……」
「何枚買ったの?」
「昨日、2枚程……」
「昨日? はぁ」
ヒナは案内役も兼ねて在廊していた作者の生徒に向き直り、頭を下げる。
「昨日今日と2日も連続で押し掛けてしまってごめんなさい。先生、芸術作品が好きで気に入るとすぐ買っちゃうものだから、シャーレの廊下が大変なことになってるの。しかもノンジャンルであちこちに置くからもうなにがなんやら」
「あのインスピレーションに任せたノンジャンルで渾然一体となってるのが良いんだって」
わかってない、とばかりに嘯く先生をヒナは一睨みして黙らせる。
「でもあの絵は確かにとても良いと思ったから、1枚買わせていただきます」
「もう1枚ほ」
先生は素早く足を踏まれて黙った。
「2枚いただきますね」
ヒナが他の絵を見ている間、先生は2枚の絵の購入手続きを行い、2人は個展から外に出た。
先生はヒナの手を握り、上機嫌で言う。
「ヒナの絵、どこに飾る?」
「先生のコレクションと一緒にしてしまっていいわ。風紀委員の本部はたまに襲撃があるから、穴が空いたりすると勿体ないし」
え〜、いいの〜、なんてニコニコしている先生にヒナは釘を刺す。
「使えるお金はあっても使う時間がないのが私達の悩みだと言っても、無駄遣いは良くないと思う」
「無駄じゃないもん。ヒナが好きな景色と、ヒナが子供の頃から見てた景色の絵と両方欲しかったんだもん」
「それにこれから有名になる作家さんの絵なら、先生が4枚も独占しないで、みんなに買ってもらった方がいいんじゃない?」
「そ、それを言われると弱いんだけど、でもウチらって、こういう何気ない平和な日常の景色を守る為に毎日仕事してるんだなって思えるものを、身近に置いときたくて」
ヒナは小さく溜息を零す。
「やっぱり私が好きだった方の絵、風紀委員本部に飾るわ。頑丈な額とシャーレで使ってる展示用防弾ガラスもセットで貰える?」
先生は満面の笑みを浮かべてヒナの頭にキスをする。
「もう。こんな往来の真ん中でやめて」
「じゃあ往来の真ん中じゃないところで」
先生はヒナの手を離すと、そのまま腕をヒナの腰に回し、脇道に連れ去る。
誰もいないことを確認し、先生はヒナの腰と頭を抑え少し持ち上げるように、ヒナは先生の首に両腕を回し先生を引っ張るように。お互いを求め合い唇を重ねる。ヒナの僅かに空いた歯の間に舌をねじ込むと、ヒナの身体はピクピクと震える。先生はそれを強く抱き留め、更に激しくヒナを求める。
たっぷりとお互いの唾液を交換し息が上がった2人は、指を絡ませ合うように手を繋ぎ何事もなかったかのように去って行った。先程まで2人がいた裏路地は、絵で描かれていたように輝いていた。
なんとなく街並みをブラブラしてから、2人はバンドハウスへ向かう。人目につかないように端の暗い席に座りいくつか料理をアラカルトで頼むと、運ばれてきたドリンクを掲げる。先生としてはアルコールではないのが寂しいが、未成年の生徒がほとんどなキヴォトスではアルコールを出す飲食店などほぼない。大人の先生とヒナたちの方が珍しいのだ。
「キヴォトスの平和に乾杯」
「その結果の2人の休日に乾杯」
あとは料理を摘みながら、この曲が好きだのあの演奏が素敵だのと音楽の話していたが、お互いに段々仕事の愚痴が増えてきた。
「てかパンちゃんって何さ。百歩譲ってパンケーキに命が宿って動くのはいいとして、あの触手はどっから生えてきたんだ。タコとかイカとか入れてる訳じゃないんでしょう?」
「風紀委員でも原因究明の為にジュリに再現してもらったことあるけど、何回かに一回いつの間にかパンちゃんが出来上がるの。同じ手順で作って成功した普通のパンケーキは美味しいのに」
「勝手に成長して大きくなってるしな。質量保存の法則とか効いてんのかなあれ。どっかに閉じ込めて端っこから切って焼いたら永久機関完成したりしない?」
「軍事兵器として運用出来ないかっていうアイデアは風紀委員内でもあったけど、調査の結果無理だって」
「あーその結果が『色々調べた結果、何も分からないし誰にもコントロール出来ないし訳わからん』って発表されたヤツでしょ? 最後にフウカが据わった目でパンちゃんを焼却処分するのが無慈悲で可愛いってバズったヤツ。
お陰でパンちゃんも可愛い珍獣くらいに思われてたまに逃げ出した個体がいてもすぐSNSにアップされるから素早く対処出来るようになったし、パンちゃんを使って悪さしようってジュリを狙いそうな輩もよくわからん珍獣の形した勝手に動く手榴弾くらいの認識になったからドローンと普通の手榴弾用意した方が早いし確実だってことになってジュリが狙うこともなかったし、あのギャグ落ちにした発表は見事なもんだった。
あれアコちゃんの手腕でしょ? やるなぁアコ行政官と広報部」
嘘なしで可愛いっていう印象付けだけで情報操作するの、やっぱ女の子のセンスには勝てないわー、と先生がしきりに褒めていると、ヒナが突然何処かにメッセージを打ち始めた。
「どうした? 仕事入っちゃった?」
「違う。でも私は怒った。先生が他の子ばっかり褒めるから怒った」
「えええ、そんな急に。あれお酒飲んでないよね?」
先生はヒナの飲んでいた飲み物を少し舐めてみるが、アルコールの香りはしない。
「私は絵も上手じゃないし、ピアノも最近練習してないし、そもそもバンドサウンドの演奏なんてやったことないし、フウカとジュリには可愛いって言ったのに私には可愛いって言ってないし、アコのことだけアコちゃんとか呼ぶし」
「ええええ、アコちゃんって呼んでるのもう何年も前からじゃん。今更……。仕事中アコちゃんと私で意見が分かれると言い合ってるうちにお互いヒートアップしがちだから、せめて呼び方を柔らかくしてヒートアップし辛くしようってイオリが提案したやつヒナも見てたじゃん。いやヒナが嫌なら辞めるけどさ。
あとえ、今日ってヒナのこと可愛いって言ってなかったっけ? ああ今朝寝起きヒナ見て可愛いって思ったけど言ってはなかったわ仮に言ってても寝惚けて覚えてなさそうだし」
「思ったなら言って。寝起きで覚えてなくとも言って。
アコの呼び方はそれでいいけど。私にも可愛い呼び方して」
「あーはい。ごめんなさい。ヒナちゃん可愛い! ハニー! ラブ~!」
ヒナはしきりに褒める先生を空虚な顔で無視してお会計を済ませると、残っていた料理をひょいひょいひょいと口に入れ、先生の口にもいくつか投げ込み、残っていたドリンクの2人の分両方をぐいと飲み干す。ヒナは先生の腕を掴んで店から引きずり出す。少し痛みを感じる程に強く掴んでいるヒナの手は熱い。本当に酔っているみたいだった。アップル&グレープフルーツのスパークリングジュースがあまりにもシードルみたいな味で酔った気になっているのかも知れない。ストレス溜まってたのかなぁと先生は反省していた。
店の外には見覚えのある車が停まっていた。ゲヘナの送迎車だ。運転手がその扉を開けて待っていた。
「先生今何時?」
「19時05分。こんなに出来上がってるけどまだ早いな」
「19時05分。奥さん大事にしない罪で逮捕」
「大事にしてるよぉ」
泣き言を言いながら先生はゲヘナ学園最強、いやキヴォトス最強かも知れないと噂される風紀委員長、空崎ヒナに逮捕された。ちょっと怖い。
ヒナからの指令はもう受けているのか、車はすでにどこかへ向かっている。ヒナが黙っているので誰も喋らない。とても怖い。
「ヒナ委員長専用の送迎車は椅子を倒して照明をこうすると、いい感じになるようにしてあるッス!」
車内の照明がピンク色になり、天井から小さなミラーボールが出て来て、ヒナに銃床でヘッドレスト越しにどつかれている。この運転手が一番怖いよ!!
「これが私が使える中で一番足が速かった手段だっただけ」
誰に対しての言い訳かわからない言葉をヒナは呟く。
しばらく走ってゲヘナに着き、車が音もなくゆっくりと停車する。先生も途中から気付いていたが、この運転手、ふざけたことを言っていたが恐ろしく優秀な運転手だ。この運転手の運転で窓から外が見えず大音量の音楽が流されていたりしたら、きっと先生では車が動いているのか止まっているのかもわからず、現在位置が不明な状態でどこかに拉致監禁することも可能であろう。そう思うくらいであった。
そうされていないということは、ヒナも本当に本気で怒っている訳じゃないだろうと思いながら、先生が車を降りるとそこはゲヘナのライブハウス。
中に入ると楽器を持った生徒が何人か居て、グチグチと喋っている。皆ヒナの顔を見て黙った。何この子たち。
「貴方達、私に借りがあるでしょう? 一晩で返せる機会をあげる」
どうやら前に何かトラブルをヒナが解決してあげた楽団が、ヒナと先生の為に一晩演奏をしてくれるようだった。
先生は置かれた椅子にポツンと座らされ、ヒナと楽団は裏へ引っ込んでいった。後ろを振り向くと、壁に寄りかかって立つ運転手が「何も知らない」とジェスチャーを送ってくる。少し待つと、楽団と一緒にヒナがステージ上に現れた。ヒナがピアノに座る。
ヒナは大きく深呼吸をする。先生はその様子をつぶさに見つめる。鍵盤に指が落とされ、演奏が始まる。曲はゲヘナ出身の作曲家が作った有名な
ピアノの演奏に楽団の弦楽器が加わり、ピアノ四重奏となる。切なさを感じる旋律が、曲が進むに連れて悲しみの音が減っていき、暖かな幸せを感じる香り高くロマンチックな旋律に変わっていく。その情熱は徐々に不安定になっていき、まるで消える前の蝋燭の如く、揺らぎ輝いてピタリと演奏が終わった。
余韻が冷めたところで、ヒナがステージから降り、こちらへ走ってきた。
「ちょっと間違えた。髪、纏める為のゴム貰ってけど、上手く纏まらなくて邪魔。もうちょっと上手く縛れる?」
ヒナは汗をかいて少し息が上がっている。その髪をかき上げゴムで縛り直すが、確かにヒナのボリュームの多い髪はこれでは不十分だろう。仕方がないので纏めて捻ってヒナのマシンガンから7.92x57mmモーゼル弾を借りて簪代わりに2本刺す。
「激しく動かなければ大丈夫だと思う。頑張って」
「ありがとう。行ってくる」
ヒナは再び段上に上がると、今度は映画音楽の演奏が始まる。同じメロディが繰り返される中、ここではないどこかへ浮遊した気持ちが霧散して去って行ってしまうような曲。
最後は楽団は楽器を構えず、ピアノ曲。キヴォトスで最も有名であろう
演奏が終わり、先生が拍手をする。楽団も皆も拍手をして、その中心でヒナはお辞儀をして、段上から先生へと飛び込んでくる。飛び込んでくる!?
先生は慌てて腕を広げ、ヒナをキャッチ。その勢いで回転しながらヒナを抱き留める。
「やっぱり音楽は自分で演奏するより、聴いている方が気が楽でいい」
「でも凄く良かったよ。音の一つ一つが凄く丁寧で、気持ちがこもってたと思う」
「でも結構間違えちゃった」
「その割にはスッキリした顔してるじゃん」
「うん」
ヒナは晴れやかな顔をしていた。ヒナはストレスを溜めていたようだったからどうにかしてあげないと、と先生は思っていたが、ヒナは一人で解消してしまっていた。
「演奏聴いてくれてありがとう」
「演奏してくれてありがとう」
それからは楽団の皆が好きな曲を演奏し、途中で運転手がヒナに頼まれてヒナセーフハウスに置いてあったワインボトルを取りに行って、そのおつまみを買う為に楽団の子達も合わせて皆でお菓子とお惣菜とジュースを大量に買い込み、舞台に立つ者は演奏をするか歌うか踊るかをして、交代して休憩する者はお菓子とジュースで簡単なパーティーを始め、先生とヒナは酔っ払いながら大声で笑い、時には演奏のリクエストをして、歌を歌ったり歌わなかったり、踊りに混ざったり混ざらなかったりした。その夜は音楽と笑顔が耐えなかった。
先生はその夜のことをずっと忘れなかった。無邪気に満面の笑みではしゃぐヒナの顔を。
「おはよう先生」
「おはようヒナ」
2人は自宅のベッドで起きた。先生はどうやって帰ってきたのかは全く覚えていなかったが、無事に家に帰ってきたことにはまず安心した。
だが頭がガンガンする。ヒナの顔色を見ても、たぶん同じような状況だろうと思った。
まず水を飲もうとダイニングキッチンへ向かうと、テーブルの上にトマトジュースとスポーツドリンク、インスタントのあさりの味噌汁がドカドカと大量に置いてあった。十中八九自分が用意したのだろうと先生は思ったが、これが出来るならそんなに酒を飲むなと昨日の自分に言いたかった。
それらを持って寝室に戻ると、行儀は悪いがベッドに座ってトマトジュースをラッパ飲みし、ヒナに渡す。ヒナもそれを受け取り飲むと、汚れた口元を服で拭う。
「最後まで先生のデートプランで行けば良かった」
「いやでも昨日は最高だったよ。惚れ直した」
「ありがとう。でも焼き餅なんて焼くものじゃない。嫉妬が大罪であるということを体感した」
「うーん。大罪ってそういう意味じゃないと思うけど。昨日の嫉妬してるヒナ可愛かったしバンバンしてくれても構わない感じだった」
「……二日酔いのときは、惚れ直しただの可愛かっただの言わなくていいから。照れる元気すらない」
「えー昨日はちゃんと口に出して言えって言ってたのに、ヒナは難しいなぁ」
先生は思った。じゃあちょっと気持ち悪いかなと思って言わないでいたヤツはずっと言わなくて済んだみたいだ。疲れて虚無状態に入ってるんじゃなくて、グロッキー状態の弱りウンザリモードヒナ、レアだし滅茶苦茶可愛くない!?!?!?
参考楽曲
セレナーデ/シューベルト
戦場のメリークリスマス
ノクターン第2番/ショパン
最後の宴会のシーン:アイリッシュ音楽
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