「いやぁまさかこんなにはやく見つかるなんてねぇ、感謝するよ」
「ふふっ...これくらい朝飯前よ」
ブラックマーケットの一角、そこには黒い帽子を深く被りマスクで顔を隠している怪しい人物と不敵な笑みを浮かべる少女がいた。
「これは依頼料だ、受け取ってくれ」
少女は依頼人から封筒を受け取るとその場を去り、そのまま表情を崩さず路地裏を進んでいく。
やがて突き当たりに差し掛かった所で現れたのは彼女の帰りを待っていた3人。
「アルちゃんお疲れ〜」
「だ、大丈夫でしたかアル様?」
「社長、どうだった?」
ムツキ、ハルカ、カヨコの3人にそう尋ねられた少女...陸八魔アルはフッと笑みをこぼし。
「なんで依頼が猫探しなのよー!?」
アルは白目をむきながらそう叫んだ。
「折角ブラックマーケットの住人からの依頼って聞いたからどんなアウトローな内容かと期待してたのに!ペットの猫を探してってそんなの全然アウトロー感ないじゃない!」
「でも報酬高かったんだし、うちは今余裕あるって訳じゃないし良かったじゃん」
「それはそうだけど!もっと、こう....なんかあるでしょ!」
やりきれない思いを吐き出すアルだが、それもまた事実ではあるので強く否定できない。
「それよりアルちゃん、何か食べに行こうよ。朝から探し回ってたからお腹空いちゃった」
「わ、私が何処か見つけて来ましょうか?」
「...そうね」
落ち込んでばかりではいられないと、パチンと自身の頬を叩き気合を入れ直す。
なんだかんだ自分もお腹が空いていたアルはそれを誤魔化すように自然と早足になってしまう。
「うわっ!」
「きゃあっ!」
だが周りへの注意を怠っていたからか、突然路地裏から飛び出して来た何者かとぶつかってしまった。
「びっ、ビックリした...ねぇ、貴方大丈夫?」
自分は特に怪我などはなかったが、相手は尻餅をついてしまっておりアルは心配から声をかける
「あ、あぁすみません、こちらの不注意で........アル?」
「へ?」
まさか初対面の相手に名前を呼ばれるとは思っておらず間抜けな返事をしてしまったが、肝心の相手は何故か自分以上に驚いた顔を晒していた。
「アルちゃん、大丈夫〜?」
「あ、アル様、どうかされましたか!」
「社長、何かあったの?」
「大丈夫よ、ちょっとこの人とぶつかっちゃっただけだから。それよりも貴方、何で私の名前....」
「見つけたぞ!」
何故私を知っているのか、それを聞こうとした瞬間前方から見るからに不良ですと言わんばかりの少女達が姿を現した。
「なるほど、仲間と合流する為に逃げたのか!」
「え、え?」
「まあいい、あいつらからも巻き上げちまえば稼ぎは倍だ!」
「えええええええ!ど、どういう事よ!」
「ごめん、完全に私のせいで巻き込んじゃって」
(もう!何でこんな事になってるのよーーー!?)
訳もわからず起きた展開に巻き込まれたアルは、心の中でそう叫びながら銃を構えた。
日も傾き空が夕焼け色に染まった頃、アル達は自分達の仕事場である事務所へと戻ってきていた。
あの後、ブラックマーケットで出会った謎の人物から私達のファンだと言われたり美味しいラーメンを奢ってもらえたりなど色々あり
「ファン...私にファン...ふふっ♪」
「流石ですアル様!」
今だにアルはその余韻に浸り、ニヤニヤと顔を崩していた。
「まさかあそこまで喜ぶなんてね....いつか騙されそうで心配」
カヨコはそんなアルを見て溜息を吐きながら、先程から気になっていた事をムツキに尋ねる。
「さっきからやたらと楽しそうにしてるけど何かあったの?...まさかムツキまで社長と同じ感じとか?」
「んー?あぁ違う違う、これ♪」
そう言ってムツキは手に持っていたある物を渡すと、受け取ったカヨコはそれを見て固まった。
「.........はぁ....なるほどね。社長、ちょっと」
「〜♪なぁにカヨコ?」
カヨコはムツキから受け取ったものを机に置くと、アルはそれを覗き込む。
「連邦捜査部シャーレ....え、なによこれ?」
アルの目の前に出されたものは一枚の名刺。
「ブラックマーケットで拾ったんだー♪多分アルちゃんとぶつかった時に落としたのかもね」
「落とした....?私こんなもの持って.....!?」
そこでようやく何かに気づいたアルはまるで石の様に動きを止め、ギギギッと首を二人に向けて恐る恐る尋ねる。
「ね、ねぇ、もしかしてあの人って...」
「....うん、まあ社長の想像通りだと思う」
「最近噂のシャーレの先生だったんだねー。クフフ♪アルちゃんに必死に誤魔化してる所とか面白かったー♪」
「...?アル様、どうかされましたか?」
「な、なな、なななな....何ですってぇぇぇぇぇぇ!!!!」
その日、これまでで1番の絶叫が事務所内に響き渡った。