最近あまり書きまとめる時間が取れず普段よりも間隔が空いてしまいました。
もしかすると2月まで忙しくなる可能性があるので、それまでは投稿頻度が遅くなるかもしれません。
過ぎ去る時間
合宿2日目。
「それじゃあ、始め!」
私はそう合図を出すと、目の前の机に座る4人は一斉に問題を解き始めた。
今彼女達がやっているのは模擬試験、次回受ける第2次学力試験への対策としてまずは全員がわかっていない部分を明らかにしようと言うことになり、私が昨日の夜に急遽作成したものだった。
悩みながらも解答を埋めていく4人を見守りながら待つこと1時間程、全員の採点が終わり彼女達に結果を報告する。
ヒフミ─64点。
アズサ─31点。
ハナコ─4点。
コハル─16点。
「ふむ、思ったよりは取れてたな」
「アズサちゃん!60点は取らないと駄目ですからね!?....とまあこれが今の私達の現状です、このままでは次に受ける試験でも合格できません」
ヒフミは顔を俯かせながら手を握り呟く。
「でもただ闇雲に勉強しても限界があります....先生、お願いしてもいいですか?」
「うん、ちょっと待ってね」
私は彼女に促されながら、今日持ってきた紙袋からいくつかの冊子を取り出し机の上に置く。
「プリントの束?」
「問題集の様ですね」
「?」
「これは一次試験の後に先生にお願いして作ってもらったテスト対策用の問題集です。私達がそれぞれわからなかった項目ごとに分けて作って貰ったので、次のテストまでにこれを完璧に解けるように勉強していくことになります」
ヒフミはそう言いながらこちらに振り返り小さく頭を下げてきた、それに私は笑みで返す。
1次試験から合宿までの期間はあまり無かったので毎日徹夜することになってしまったが、何とか間に合って良かった。
彼女の話を聞いた3人はパラパラと問題集を捲っている。
そんな彼女達にヒフミは言葉を続ける。
「勿論解くだけじゃなくて、自分が理解している部分はちゃんと教え合いましょう!最終的に試験を受けるのは個人ですがそれまではチーム戦です、全員で今度こそ合格を目指して頑張りましょう!」
「....わかった、お互いに苦手なものを補えば上手くいくのは戦闘でも同じだ」
「ふ、ふん!私も早くこんな所おさらばしたいし、仕方ないから協力してあげる!」
「.....」
「ですが!」
彼女の言葉に各々反応を示す中、ヒフミが指をビシッと伸ばしながら唐突に声を上げた。
「難しい目標に向かって進み続けるのはどんな事でも大変です、無理をして続けても意味がありません」
「そこで、私から皆に試験のモチベーションをご用意しました!」
そう言って自分のリュックをガサゴソと弄り始めたヒフミ、それから数秒も経たずに取り出したものをドン!と3人の目の前に曝け出した。
「.....何これ」
まるで変なものを見る様な目になったコハルの問いにヒフミはよくぞ聞いてくれたという態度で語り始める。
「ふふふ、これはモモフレンズのぬいぐるみです!モモフレンズの全員がいるのは勿論、ここにあるのは作られた数が他よりも少ないレアなものなんですよ!ほら、このウェーブキャットさんの背中に小さく縞々がありますよね?これは途中でエラー品として回収されて販売が終わってしまった貴重なぬいぐるみなんです!こっちのペロロ様も...」
「わ、わかった!わかったからもう良い!」
「随分お詳しいんですね〜」
コハルとハナコは若干気のりしていない様子で彼女の言葉を聞いている。
だが一方でそんなぬいぐるみ達を見ていたアズサが大きな声でこの場の空気を震わせた。
「...っ、可愛い!」
「うそ!?」
「あら」
「あ、アズサちゃん、モモフレンズの魅力をわかってくれるんですか!?」
「ああ、これは....いや、このふわふわした全部の生き物が可愛すぎる...!こんなもの今まで見たことがない!特にこの白くて丸い子、どこを見ているのかよくわからない目、いったい何を考えているんだ....」
「そうなんです!そこがペロロ様の可愛い所なんですよ!これ以外にも色々とペロロ様にはシリーズがあるんです!」
「そうなのか....この長いやつも凄く良い、首に巻いたら暖かそうで...」
「勿論!そう言った商品も売られてますよ!最近だと...」
あっという間に2人だけの世界に入り込んでしまったヒフミとアズサ、そんな彼女達を見てコハルとハナコは苦笑いを浮かべていた。
「...ねぇ、全然ヒフミ達が話してる内容がわからないんだけど」
「まあとても幸せそうですし、良いと思いますよ?」
私も彼女達の熱狂ぶりに相変わらず驚かされながらも、私が知る変わらない姿に1人懐かしさを覚えていた。
「そういえば、先生もモモフレンズにお詳しいんですよね!」
「えっ」
「そうなのか?」
「はい!前にブラック....いえ、ちょっと遠くに出かけていた時に先生からそう伺っていたんです」
...もしかしてブラックマーケットで不良に追いかけられていたヒフミと出会った時の事だろうか。
確かにあの時は突然でそんな風な事を言った気もするけど....
「そうだったのか、今度このぬいぐるみ達の事について詳しく教えて欲しい」
「良いですね!モモフレンズトークです!」
(...次までに私も勉強しておく必要があるかもしれない)
「というか勉強の話はどうしたのよ!問題解くんでしょ!」
「はっ!す、すみませんつい興奮してしまって....」
「うふふ、でも2人とも可愛らしかったですよ♪」
「私としたことが、少々取り乱してしまった。でも約束しよう、必ずやこの任務をクリアしてあの不思議なぬいぐるみを手にして見せる...!」
こうして、紆余曲折ありながらも2次試験に向けた本格的な勉強会が始まったのだった。
それから暫くして迎えた休憩時間、外に出ていた私はシロコに電話をかけていた。
『ん、先生どうしたの?』
「やあシロコ、昨日はあれから大丈夫だった?」
『うん、昨日は全員で学校に泊まった。特に問題も無かったから大丈夫』
内容は勿論昨日出会った少女について、私がそれとなく尋ねるとシロコは私が帰った後のことを話してくれた。
あれから遅くまで様子を見ていたが、帰る場所も今はまだ無いとの事でひとまず学校で過ごしてもらう事に決めたそうだ。
けれどもいきなり1人きりにするわけにもいかず、昨日は全員でお泊まり会を実行したのだとか。
『まだ元気は無いけど、ノノミに凄く懐いてる』
「あはは、そっか...安心したよ。ごめんね、急に連絡して」
『ん、別に良い。先生も頑張って』
そうして電話を切った私は合宿所の壁にもたれかかりながら今後のことを考える。
やはりこの世界は私がいたあの世界とは僅かに違っている、それが今回の事で改めてはっきりした。
...だからこそ、今こうして比較的何事も無く日々を過ごしている事に違和感も覚えていた。
私がまだ気づいていないだけで、何か重大な事が進んでいるのではないか?それを思わずにはいられない。
特に気になるのはアリウスの....いや、あの"ゲマトリア"の動向、けれども今は大胆に動く事は得策じゃ無い。
あの時話したセイアからも今は出来る限り普通の生活を続けた方が良いと言われている。
(....アイツは何を企んで...)
だがその時鳴り響いたアラームの音に、私は埋め尽くされる疑問を一度振り払う。
そろそろ休憩も終わりだ、とにかく今は彼女達の事に集中しよう。
私は深く息をついてから、合宿所の中に戻って行った。