補習授業部の合宿3日目。
私は今日もシャーレから彼女達が待つ合宿所への道のりを早足で歩いていた。
「急がないと...」
昨日シャーレへと戻った後、リンから送られてきた仕事の一部をこなしていたのだが予想外に時間がかかってしまい、起床するのが遅れてしまったのだ。
手伝ってくれたユウカにも呆れられてしまったが、少し合宿所にも書類を持ち込んだ方がいいかもしれない。
そんなことを考えながら進んでいた所、合宿所までもう少しというところで見覚えのある子の姿が視界に入った。
「マリー?」
「え?」
私に呼ばれたマリーは振り返ると驚いた顔をしていたが、それからすぐに微笑むとこちらに駆け寄ってきた。
「シャーレの先生、ですよね?お噂は聞いてます、まさかここで会えるなんて....私のことをご存知だったんですね」
「え、ああ、まあね。マリーは何か用事?」
「はい、少し補習授業部の皆さん...というより、アズサさんに」
「アズサに?」
「以前アズサさんが保管庫を占拠して正義実現委員会の方々と争いになった件があったのは覚えていらっしゃいますか?...その原因、というか前にあった事なんですが、ある生徒の方がいじめを受けている所をアズサさんに助けられたと教えていただいたんです」
「その時アズサさんに怒られた方々の連絡が歪曲されて正義実現委員会に伝わってしまったらしく、それであの騒動に....今日はその謝罪と、彼女が助けてくださった生徒の代わりにお礼をしようと思いまして」
「そっか、なら私も丁度合宿所に行く所だから一緒に行こうか」
「はい、お願いします」
それから少しの間、私はマリーと色々話をしながら歩いた。
最近のトリニティのこと、マリーが所属するシスターフッドのこと...更にはこれから行われる予定のエデン条約についてなど。
そんな会話をしているとやがて合宿所に辿り着いた。
「つきましたね、失礼します」
マリーは軽くノックをしてから入り口に手をかける。
....そのタイミングで私はあることを思い出した。
(確か前にもマリーがここを尋ねてきたことがあった様な....その時は確か...!)
「あ、マリー!今は....!」
「え?...っ!きゃあ!?」
ドォォォォォン!!
マリーが扉を開け中に足を踏み入れた瞬間、突然入り口付近が爆発し辺りに煙が立ち込めた。
「ど、どうして急に爆発が...!?え、あ!こ、こっちにも!きゃぁぁぁ!?」
「ま、マリー、一回出てきた方が...」
「けほっ...け、煙で前が....あっ」
ドォォォォォン!
何度も何度も小規模な爆発が起こる建物、その量は凄まじく、充満しすぎた煙が入り口からモクモクと立ち上っているのがはっきりわかるほどだ。
「ふむ、仕掛けは上手くいったみたいだ。これで防衛の面は保証されたな」
「あ、アズサちゃんっ!?勝手に仕掛けたら危ないですからね!?」
「ちょっと!あの子大丈夫なの!?」
微かにそんなアズサとヒフミの声が聞こえてくる、やはり先程までのトラップはアズサが仕掛けたもののようだ。
私は苦笑いを浮かべつつ、口元を押さえながら煙の中を進んで行ったのだった。
「はい、お水」
「ありがとうございます」
「本当にすみません....アズサちゃん?」
「うっ...ごめん、てっきり襲撃かと」
「わ、私は大丈夫ですから。そんなに謝らないでください」
それから4人の待つ部屋まで辿り着いた私とマリー、彼女はコハルから受け取った水を飲むとほっと一息ついていた。
そんなマリーの前ではヒフミに肩を掴まれ申し訳なさそうな顔をしているアズサ、そんな彼女達をニコニコしながら見守っているハナコが見える。
「えっと、お怪我がないようで良かったです。それで...シスターフッドの方がどうしてここに?」
「それは....」
ヒフミの疑問にマリーは先程私に話してくれたことをもう一度4人に話していく。
アズサの事件の真相、そしてアズサへの謝罪と感謝、マリーからの話を聞き終えた4人は納得し各々が彼女との会話に花を咲かせていた。
「ではそろそろお暇させていただきますね、皆さんお邪魔いたしました。先生もご案内してくださりありがとうございます、それでは」
やがてマリーも帰る時間となり、彼女はいそいそと立ち上がると私達を見て頭を下げ合宿所を後にしていった。
「そういえばごめんね、今日は遅れちゃって」
「いえ!先生には色々していただいてるので気にしないでください。そういえば先生、朝に模擬試験をやってみたんです!その結果がですね....」
そうしていつもの様に合宿が始まったのだが、それから暫くが経った頃
「ふぅ、少し休憩を...あれ?この本って誰のですかね?」
ぐぐっと背中を伸ばしていたヒフミが、ふと教室の隅に落ちていた本を見つけ不思議そうにそれを手に取った。
「私のじゃないけど」
「私も違いますね〜....あら?よく見たら聖書の様ですし、もしかしたらマリーちゃんのものでは?」
「あ、本当ですね。でもマリーさんが出て行ってから結構経っちゃいましたし...」
おそらくアズサのトラップにかかった際に落としてしまった事に気づかないままマリーが帰ってしまったのだろう。
だがトリニティ本校舎まではかなり距離がある、今から向かうとなるとかなり時間がかかってしまうだろう。
「よし、なら私が行ってくるよ。今は休憩時間だし、その後もヒフミ達が問題を解いてるのを待ってるだけだからね」
「え、先生がですか?でも流石に悪いですよ....」
「大丈夫、それに最近運動不足だから歩きたい気分なんだ」
「まあまあ、先生がそう仰ってくれているのならいいのではないですか?私達はお言葉に甘えてお勉強しておきましょう♪」
私の言葉にハナコがそう言い説得してくれる。
ヒフミは申し訳なさそうな顔をしていたが、やがて頷くと私に本を手渡しお願いしてくれた。
「先生、向かう途中に何があるかわからない。私も護衛でついて行ってもいい?」
「アズサちゃん、駄目ですよ?お勉強をしないと先生が困ってしまいますから...それに、テストを頑張ってあのぬいぐるみを貰うんですよね?」
「っ!そうだった、すまない。必ずあのふわふわで可愛いやつを手に入れなければいけないんだった」
「あ、アズサちゃん、1番の目的はテストで合格する事ですからね?」
「まあ、気をつけて行ってきなさいよね」
私はそんな彼女達の様子を見て笑いながら、マリーを追いかけるために急いで走り出したのだった。