「あ、見えてきましたね〜」
「ね、ねえ!こんなにスピード出して大丈夫なの!?」
「凄いぞヒフミ、こんなに戦車を乗りこなす奴は見た事ない」
「私今回が初めてで自分でもどう動かしてるのかよくわかってないんですけど!?」
現在私達は正義実現委員会の子達が乗って来た戦車でハルナ達を必死に追いかけていた。
───
『ヒフミ、今から戦車に乗ってハルナ達を追いかけようと思う』
『え、戦車でですか!?...確かに追いつくにはそれしかないかもしれませんが、操縦はいったい...』
『そこでお願いがあるんだけど...戦車の操縦をヒフミに任せたいんだ』
『.....?....っ!?えええええええ!?!?!?』
───
あの時の会話とヒフミの悲鳴にも似た叫びを思い返しながら、私はハッチから顔を出し戦車の外に捕まっていた3人へ指示を飛ばす。
「アズサとハナコはハルナ達からの攻撃に気をつけながらトラックのタイヤ目掛けて射撃、コハルは二人のサポートをお願い」
「了解した」
「わ、わかったわ...ってきゃあ!?ちょっとヒフミ!あんまり揺らさないで!」
「そ、そう言われても!」
「任せてください♪でも良いんですか?あの人達のトラックを傷つけてしまって?」
「正確にはハルナ達のトラックじゃないけど....うん、ちゃんと後で謝るよ。今は止める事だけ考えよう」
そんな指示と同時に、逃走するトラックの荷台から一斉射撃が行われた。
「そちらの操縦士は中々の腕前の様で、ならばこちらも全力で抵抗させていただきますわ」
ババババッ!というけたたましい音と共に、戦車の分厚い装甲に銃弾が弾かれ微かに火花が散る。
「ひゃあ!?せ、戦車が!?」
「落ち着いてヒフミ、この戦車の装甲ならまだ耐えられる。そのまま直進して」
「は、はい!」
私の言葉にヒフミは慌てながらも操縦桿をしっかりと握りしめ、徐々に彼女達の元へと接近していく。
ハルナ達もタイヤへの攻撃を避けるように大きく蛇行しながら進んでいたが、やがて動きを見せた。
「あ、トラックが裏路地に!」
コハルの言う通り、ハルナ達の乗るトラックは入り組んだ細い路地へと急ハンドルを切りそこへ入っていった。
おそらく巨大な戦車では追いつけないと踏んでの行動だろう。
「せ、先生どうすれば....」
「よし、私達も曲がろう」
「えええ!?流石に無理があるんじゃ....」
「大丈夫、ヒフミなら上手く出来るよ」
「一体どんな信頼なんですか!?.....っ!えい!」
既に半泣き状態となっているヒフミだったが、覚悟を決めたのか目を固く瞑りながら操縦桿を勢いよく切る。
すると戦車は自身の大きさを無視したかのような挙動を見せ、見事なまでのドリフトを披露したのだ。
「ひ、ヒフミ、あんたどこでこんな技術を身につけてたの...?」
「うふふ、凄いドライブテクニックですね〜」
「ああ、本当に凄いな。ヒフミなら間違いなくどんな状況でも突破できると思う」
「う〜っ....もう絶対戦車には乗りません...!」
ヒフミのおかげで曲がった戦車は建物の壁スレスレを高速で駆け抜け、ハルナ達のトラックとの距離をみるみるうちに縮めていく。
「嘘でしょ!?なんで戦車がこんな細い道をドリフトしてくるのよ!?」
「わー凄い凄い!」
「まさかあそこまで凄腕とは....ですが、私達のゴールドマグロはそう簡単に渡しませんわ」
ハルナ達も必死に私達を振り切ろうとするが、狭い路地裏というのが逆に逃げ場を無くしどんどん距離が縮まっていく。
「アズサ」
「わかった」
とうとう数メートルまで迫った時、私の合図と共にアズサが戦車の車体を蹴りそのまま見事な着地でトラックの荷台へと飛び込んだ。
「っ!」
「行かせない」
アズサは着地と同時に銃を構えるとすぐさまタイヤ目掛けて発砲する。
突然現れたアズサに銃を向けるハルナだったが、その寸前で彼女に武器を弾かれ荷台に押し倒された。
「ぐっ...!これはやられました、お見事ですわ」
「こ、降参!降参だから!」
捕まえられたハルナの他にもジュンコやイズミも銃を手放し手を上げる中、キキィィ!!という激しいスキール音と共にトラックは徐々に速度を落としていく。
やがて完全に停車した所でヒフミも戦車を止め、全員でトラックへ向かおうとした。
だが彼女達はまだ諦めていなかった。
「今よ、まだ逃げられるわ!」
「ああっ!どれだけ逃げるんですか!?」
アズサも身動きしないことに少し油断し力を緩めていたのだろう、ジュンコの声に反応したハルナは一瞬で拘束を抜け出すと3人で一緒にマグロを抱えて走り出した。
「っ!しまった...」
「アズサ、大丈夫だよ」
急いでアズサも追いかけようとするが、私はそんな彼女を止める。
「どうしてだ?このままじゃ...」
「あら、もう追いかけっこはおしまいですの?ではお言葉に甘えて....」
瞬間──
ゾクリ、と。
周囲の空気が急激に凍りついたような錯覚を4人は覚えた。
「...え?」
ハルナ達が背後に何かの気配を感じて振り返る。
するとそこには....どこか赤黒いオーラを全身から立ち昇らせ、首を不自然な角度に曲げ笑う少女が立っていた。
彼女の双眸は血走っており、手にした二丁のショットガンがギリギリと軋む音を立てている。
「キェェェェ.....キャハハハハハッ!!!!」
鼓膜を突き破るような絶叫と共に、少女....正義実現委員会の委員長であるツルギが駆け出した。
「....ふふ、どうやらここまでのようですわね」
「とりあえず、出来るだけ痛くない方法でお願いします★」
....そこからの光景はまさに暴力的と言わんばかりで、ツルギの攻撃を4人は為す術もなく受け次々と白目を剥いて気絶していったのだった。