もう少し描写を増やそうかなと思ったのですが、自分の文才では変な事になりそうだったので削りました。
上手く書ける人が羨ましい...
『はい...便利屋68、陸八魔です』
電話越しからは聞き覚えのある...先日出会った少女の声が聞こえてくる。
「やあ、私の事覚えてるかな?」
『あっ!この前のファンね!....てそうよ!貴方本当はシャーレの先生なんですって!?』
「えっ」
おかしい、アル達にはまだその事は伝えていなかった筈なのだが....
『あ、ちょっとムツ.......やっほー先生♪』
私が疑問に思っていると、電話相手がムツキに変わる。
彼女はどこか楽しそうにその答えを伝えてきた。
『何で私達が知ってるのかって思ったでしょ〜。駄目だよ先生、名刺なんて大事なもの落としたりしちゃ♪』
「....あ」
ムツキに指摘されてポケットを確認してみると、そこにある筈の私の名刺が無くなっていた。
成る程、あの時アルとぶつかった時に落としてしまったらしい。
『まあ先生が誤魔化してた理由とかも気になるけど、わざわざ何でうちに電話してきたの?』
「それは....」
『あ、アルちゃん今私が.....はぁ、はぁ...それで、シャーレの先生がこの便利屋68に何の用かしら?』
息を切らしながら話すアルや電話の奥から聞こえてくる他の3人の声を微笑ましく思いながら、私はアルに要件を伝える。
「アル、急だけど今から君達に依頼をお願いしたい」
『..............へ?依頼?』
「目標はまだ現れないのか?」
「ああ、連絡はまだ届いてない」
アビドス内のとある高地にて怪しげな話をしている少女達。
彼女達は依頼主であるカイザーPMCから譲り受けたFlak41やその他様々な武器を構えながら、もうすぐ仲間から届く筈の指示を待っていた。
今回の拉致目標はアビドス高等学校メンバーの1人である黒見セリカ。
彼女のバイト帰りを狙って襲撃しその身柄をアビドス砂漠へと運ぶという依頼であり、彼女の発見と足止めを行う仲間から合図があり次第ここから狙撃するという手筈となっている...のだが、肝心の合図が中々来ない。
「何やってるんだよあっちの奴らは」
「なあ、一回私達の方から連絡を....」
そう1人が言いかけた瞬間、手元の無線機から通信が入る。
「あぁやっとか、こちら....」
「は、早く撃ってくれ!」
ようやく届いた通信に耳を傾けるが、その通信相手である仲間の様子がどうもおかしい。
「どうした、何が....」
「1人じゃなかった!この前のやつら全員...うわっ!」
通信越しに銃声が聞こえたかと思えば仲間の声が突如途切れる。
更にそこから聞こえてきたのは本来そこにいないであろうアビドス連中の声、何やら想定外の出来事が起こっているらしい。
通信機を乱暴にしまい込み、舌打ちをした少女は周りの仲間に指示を飛ばす。
「とにかく今すぐ目標地点に撃つぞ」
「いいの?」
「ああ、無線機越しに一応合図はあった。とにかく目標を気絶させてしまえばそれでいい、もし他の奴らを巻き込むならそれはそれで....」
「あ、あの....」
「逃すのだけはダメだ。全く奴ら、あの時といい無駄に私達を手こずらせてくれやがって...」
「あの、すみません....」
「なんださっきから!無駄口叩く暇があるなら早く準備を....」
先程から何度も自身に話しかけてくる人物にそう言い放ちながら振り返る。
だがそこに立っていたのは自分達の仲間ではなく、紫がかった髪に制服、そして手にショットガンを持った謎の少女だった。
「へ?」
「あの...ここにいるのがヘルメット団の方達、ですか?」
「え、ああそうだけど」
「そ、そうですか、なら....」
バンッ!
その瞬間、通信機を持っていたヘルメット団員は目の前の謎の少女に至近距離から発砲され気を失った。
「「「は?」」」
あまりに唐突すぎるその光景に周りの仲間達が固まっている中、ショットガンを構えた少女はおずおずと口を開く。
「えぇと、皆さんヘルメット団という事なので....う、撃ちます!」
その言葉が発せられたと同時にどこかから1人は狙撃され、1人は爆発の衝撃で吹き飛ばされ、1人は背後から蹴りを頭に入れられ...次々とその人数を減らしていく。
「な、なんなんだ一体!?...うっ!」
「クフフ♪本当に先生の言った通りだね〜」
「何しようとしてたか知らないけど...まあこれも依頼だし、悪く思わないで」
やがて数分もしないうちにこの場に待機していたヘルメット団全員が地に伏す事となった。
「あの、わ、私ちゃんとできたでしょうか?」
「ええ、合図もバッチリだったわ....ところで先生、此処にいる子達は言われた通り全員気絶させたけれど、これでよかったの?」
「うん、ありがとうみんな。流石は便利屋68だね」
あの電話の後、事前にアロナに調べて貰った場所を伝えそこにいるであろう怪しげな集団を足止めしてもらう...それが今回私がアル達に頼んだ依頼だった。
結果は見事アロナが絞り込んだ場所に彼女達ヘルメット団が陣取っており、こうして今に至る。
「ふふっ...当然よ、なんせ私達は一流のアウトローだもの!これくらい朝飯前だわ!」
ドヤ顔を披露するアルに、彼女の元に駆け寄る3人を見ながら私は内心胸を撫で下ろす。
そんな時、丁度ホシノからモモトークが届いた。
そこにはヘルメット団が自分達を襲おうとしてきた事、それも無事撃退し今からみんなでセリカを部屋に送る等の内容が書かれており、それを見た私は再びホッと息をつく。
(ホシノの方もなんとか上手くいったみたいだ...)
だがまさかホシノ以外の3人も一緒だったとは予想外だった....これは私の落ち度だろう、あやうく彼女達を巻き込んでしまう所だった。
それに今日の出来事はかつての記憶通りであり、私の不安も杞憂であったらしい。
もしかすると今回私が介入した事は全て意味なんてなく、無駄な行動だったのかもしれない。
しかしそれでも、彼女達が少しでも悲しむ可能性を潰せるのなら私は自身の選択に後悔はない。
それからアル達に少し多めの依頼料を支払って別れた私はホシノへの返信を済ませ、シャーレへと急ぎ戻って行った。
『.....先生』
シャーレの椅子で一息ついていた時、アロナが私に問いかけてくる。
『質問、先生は今回の情報をどこで知ったのですか?』
「.......」
『今まで先生が今回の件に関して情報を得る様子は全くありませんでした。...ですが、今日の先生の行動はまるで最初から何が起こるか理解していたかの様に思えます』
...私は目を瞑りながらシッテムの箱のパスワードを起動し、アロナの”教室”へと足を踏み入れる。
「先生.....」
私を見つめるアロナの顔から疑問や不安が伝わってくる。
「ごめん、アロナ。今はそれを説明する事はできない」
「アロナを信頼してないって訳じゃない、ただ...私自身もわかってない事が沢山あってね、上手く言えないんだけど.....」
そんな不安そうにしている彼女の頭を優しく撫でながら、私は言葉を続ける。
「だからどうしても話せない、自分でも虫のいいことを言ってるのはわかってる.....でも私を信じて欲しい、いつかきっと話せる時がくるから」
「.....ください」
「え?」
「...ならば今日は沢山構ってください。今日の私はそれに値する働きをしたと分析しています」
「...ふふっうん、勿論」
その日はアロナが満足するまで構いに構い倒す一日となったのだった。