今月忙しく、書く時間が中々とれなくなるので更新頻度が以前より下がるかもしれません。
後、お気に入り登録ありがとうございます。
薄暗い空間、気づけば私はそこに立っていた
....何故私はこんな所にいるのだろう
ふと視線を下ろすと視界に入ってきたのは血の滲んだ包帯に包まれた自身の腕
それを認識した瞬間幾度も経験してきた激痛が私の全身を蝕んでくるが、そんなものはどうだっていい
それよりも私の意識が向いたのは、いつの間にか目の前でしゃがみ込み啜り泣いている1人の少女
見覚えのあるその姿に私はゆっくり腕を伸ばす
『私が...私が悪いのっ....!』
”違う、〇〇〇のせいじゃないよ”
少女の名を口にしようとするが、上手く声に出来ない
『先生....ごめんなさい...』
涙を流す少女に寄り添おうと足を動かす、しかし体はどんどん重くなるばかりで近づく事すらできない
そんな時、突然背後に謎の気配を感じ取った
先程まで何もなかった空間、そこには私を仄かに照らす”光”があった
”光”はただそこに存在しているだけ...だがまるで私をじっと見つめているかの様な、そんな感覚を私に錯覚させてくる
『.....先生?』
背後から〇〇〇が私を呼ぶ声が聞こえる
”....〇〇〇、大丈夫だよ”
私はその声に答え、”光”に導かれるように手を伸ばした
『...い、先生!』
「っ!」
力強い声に私は目を開け飛び起きる。
目に入るのは見覚えのあるシャーレの壁、更に顔を横に向けるとシッテムの箱からこちらを覗き込んでいるアロナの姿。
『...先生の起床を確認』
「....アロナ?さっきの声は...」
『寝ていた先生が何かにうなされている様でしたので、呼びかけを行っていました。体調は大丈夫ですか?』
「そっか...心配かけてごめんねアロナ、ちょっと仕事に追われる夢を見ちゃって」
『提案、一度連邦生徒会の方に相談された方がいいのでは。先生が倒れてしまっては元も子もないでしょう』
「あはは、今度リンちゃんに相談してみようかな」
私は先程見た光景のことは伏せながらアロナに答え、ベッドから起き上がる。
(そうか、昨日はセリカの拉致を阻止して...アロナと過ごして...そのまま寝ちゃったんだっけ)
仮眠室を出ながらシッテムの箱を操作していると、アヤネからモモトークが届いていた事に気づく。
『先生、おはようございます。先生の方はお仕事大丈夫でしたか?昨日ホシノ先輩から連絡されていたとは思いますが、セリカちゃんや私達は特に怪我などはなかったので安心してください』
『昨日の一件からセリカちゃんの事を考え、今日は対策委員会はお休みにしようとあの後決めました。なのでまた後日先生にお越しいただきたいのですが、よろしいでしょうか?』
30分程前に届いていたそんな分面に了解の返事を送り、私はアロナと共に朝の作業を終わらせていく。
そのまま流れる様に残りの事務作業に取り掛かる事数時間、腕を伸ばしバキバキと鳴る肩をほぐしながら一息ついていた私の耳にモモトークの通知音が聞こえてきた。
「セリカ?」
送信相手はまさかのセリカ、思わぬ連絡に驚きつつもモモトークの画面を開いて内容を確認する。
だがそこには特に文は書かれておらず、アビドスのとある場所の位置情報が添付されているのみだった。
『アビドス区画内の公園の様です、特に珍しいものなどはない普通の場所だと思われます』
「公園か....」
私はかつての世界であったセリカとの会話を思い出しながら、手元の書類をよけて立ち上がる。
『行かれるのですか?』
「うん、セリカからのお誘いだからね。それにもしあの子が1人でいるなら心配だし」
昨日の今日で1人で外出しているとなると、何かしら目的があるのだろう。
そもそも外出している事を他の4人に連絡しているのかもわからない、わざわざ公園を指定しているとなるとあまり聞かれたくない内容の可能性もある。
私はセリカに今から出発する旨を伝えてシャーレを出た。
日も落ち空が夕焼け色に染まる中、公園には1人の少女が柵に体を預けて佇んでいた。
「ごめんセリカ!」
「ちょっと、いつまで待たせるつもりよ!もうこんな時間になっちゃったじゃない!」
「じ、実は来る途中で落とし物をした人が居てね、その手伝いをしてたら...」
「はぁ....ほんとあんたってお人好しなのね」
目の前のセリカはため息をつきながらこちらをジトリと睨みつけてくる。
すぐ向かうと連絡していたのにも関わらず、大幅に遅れてしまった私の責任であるため怒ったセリカに返す言葉もない。
「それにしてもセリカはどうして此処に?しかも1人でなんて」
「......」
私の問いかけにセリカは一瞬ハッとした表情を浮かべると顔を背け、そのままブランコに座る。
「...昨日....昨日の事」
それからしばらく無言の時間が続いていたが、やがてセリカがゆっくりと口を開いた。
「ホシノ先輩や他のみんなから聞いたわ、あんたが私の迎えを寄越したって...その、おかげで助かったわ。あ、ありがとう」
「私のセリカレーダーがビビッときてね。どう?結構優秀なレーダーでしょ?」
「もう!人がせっかく真剣にお礼してるのに!やっぱりあんたは変なやつだわ!」
「あはは、ごめんごめん.....でも、私はただホシノにお願いしただけに過ぎないよ。セリカを助けられたのは対策委員会みんなのおかげだから」
それに、あれはあくまで私にかつての記憶が残っていたからこそ上手くいっただけだ。
それを傲慢にも自分の力だと思う事なんて有り得ない。
「...不安だったの」
不意にセリカがそう言葉を発する。
「あの時、他のみんながいなかったらどうなってたんだろうって、部屋に着いてから色々考えちゃって...そんな事ばかり頭の中をグルグル回ってた」
「もしあのまま攫われて誰にも気づかれなかったらどうしよう、みんなに会えなくなったらどうしようって....そう思うと凄く怖かった」
話し続けるセリカを私は静かに見守る。
「だから、あんたがホシノ先輩に頼んでくれた事に感謝してる。それだけは直接会って伝えたかったから」
そう言ったセリカは顔を上げて
「ねぇ、なんで私達をここまで助けてくれるの? 他の人達や連邦生徒会だって今まで誰も助けてくれなかったのに....」
セリカは私の目をじっと見ながらそう問いかけてくる。
「あの時、協力したいって言ってた時のあんたが正直私は不気味だった。いきなりやって来たばかりの大人があっという間に解決しちゃうし、そのくせ何にも要求しないでそれが当たり前みたいな態度をとるし」
「普通なら疑ったり、リスクを考えるものでしょ。それなのに何で...」
「....うーん、そんなに大層な訳なんてないよ」
私はセリカに答える。
「困っている生徒が、子供がいるならそれを助けない大人なんていない」
「...それは、あんたが”先生”だから?」
「それもあるけど....特に特別な理由なんて私には最初からない。ただ私がそうしたいから、純粋にセリカ達の力になりたいと思ったから...かな」
あの頃も、今も、その気持ちだけは決して変わる事はない。
「だからセリカ、これからも君達の助けに...いや、私も一緒に頑張らせてくれないかな?まあセリカからすれば頼りなく見えるかもしれないけど、あはは...」
「.........はぁ、なんかあんたの顔見てたら悩んでたのが馬鹿らしくなっちゃった」
そう言ってセリカはブランコから立ち上がり少し歩くとこちらに振り向いた。
「いいわ、その代わり何かあればあんたにも連帯責任として動いてもらうから!...だから、その.....」
夕陽のせいか、頬が赤く見えるセリカはこちらに手を差し出しながら口にする。
「改めて、これからよろしく....先生」
「...うん、こちらこそ」
そういうセリカに私も手を差し出し、握手を交わす。
夕陽に照らされ笑うセリカを見ながら、私は彼女を部屋まで送り、その日を終えることとなった。