自分はおそらくすぐ読むことはできませんが、アビドスストーリー更新楽しみですね。
「先生....何故こちらに呼び出されたのか、おわかりですね?」
「な、なんとなく......」
目の前に立っているのは、腕を組み物凄く威圧感のあるオーラを漂わせているリン。
そんな彼女に早朝からサンクトゥムターのオフィスへと呼び出されていた私は、体を縮こませながら冷や汗を流していた。
「最近何者かにセントラルネットワークへアクセスされた形跡を見つけたのですが...」
「じ、実はそれには深い事情が....」
「ほう、一個人生徒の端末情報を特定し追跡するというストーカーと捉えかねない行為を平然と行うのならば確かに大層な事情があるのでしょう」
リンの正論がグサグサと胸に突き刺さるのを感じながらひたすら謝罪の言葉を繰り返す姿は、側から見ればなんとも情け無い限りだろう。
「....はぁ、どうせ先生の事です、やむを得ない理由があったのは推測できます。ですがせめて一言声をかけていただかないと、こちらとしても対応に困ります」
「はい、おっしゃる通りです...」
「それと、今回の件はまだ私以外知りません。ただでさえシャーレという存在は一部の連邦生徒会派閥には疎まれています。万が一今回の様な出来事が知られてしまえば、立場が悪くなるのは先生なんですから今後は気をつけてください」
そう言って溜息をつき、困ったように笑うリン。
他の役員を同席させていないというのはリンなりの配慮なのだろう。
「ひとまず、私が伝えたい事は伝えました。もう出て行っても構いませんよ。今日もアビドスの方へ向かわれるんでしょう?」
「ありがとうリンちゃん、今度必ずお詫びをするよ」
「ちゃんは余計です、それに、お詫びならその分仕事で返していただければ大丈夫です。後でシャーレ宛に書類を山程送りますので」
そう言い放ったリンの言葉に今日も徹夜コースか...と思い苦笑しつつ、入り口へと向かう。
「リンちゃん」
「...はい?」
「”いつもありがとう”、本当に色々とリンのおかげで助かってるよ」
それだけ最後に言い残し、私は部屋を出た。
「....はぁ、それはこちらのセリフでもありますよ...先生」
「先生、おはようございます」
対策委員会の部室に入ると、既に全員がそれぞれ席に着き雑談をしている所だった。
「ちょっと、遅いわよ先生!今日は今後の話し合いをするって言ってたじゃない!」
「ごめんセリカ、ちょっと連邦生徒会から呼び出しで...」
「まったく...」
いつも通りのツンツン具合を見せるセリカだが、この間より少し態度が柔らかい様に感じる。
それに関しては純粋に嬉しいものだ。
「あら、セリカちゃん前より先生と仲良くなってますね」
「うん、それに前まで先生って呼んでなかった。何かあった?」
「な、何でもいいでしょ!ほら、それよりさっさと話し合い!アヤネちゃん!」
「あ、うん!コホン....それでは、先生もいらっしゃった事ですし、私達の今後について話し合いを始めましょう」
セリカに急かされたアヤネにより、話し合いがスタートする。
ここアビドス対策委員会の最重要目標である莫大な借金返済、金額にして約9億円。
現時点では毎月の利息分の支払いでもギリギリであり、借金返済をより効率よく行うためには何をすればいいか、その議題がホワイトボードに書き込まれていく。
「はいっ!」
「はい1年の黒見さん」
「これ見て、前に街中で貰ったの!」
そう言ってセリカが元気よく取り出したものは『ゲルマニウム麦飯石ブレスレットであなたも一攫千金』と書かれたチラシ。
「「「「.....」」」」
「これね、身につけるだけで運気が上がる凄いものなの!しかも周りの人に売るとその分....」
ウキウキと説明を続けるセリカに4人は生暖かい目線を送る。
「うーん駄目だね」
「明らかに詐欺」
「えぇっ!? だって説明会に参加して2個も買っちゃったのに....」
「セリカちゃん...今度から知らない人について行ったりしちゃ駄目ですよ?」
「そ、そんな....私の今までのお昼ご飯代...」
深く項垂れてしまったセリカを慰める4人。
私は相変わらずのセリカの純粋具合に懐かしさを覚えている中アヤネが咳払いをして仕切り直す。
「ええと気を取り直して、他に意見はありませんか?」
「はいはーい!」
「では小鳥遊ホシノさん」
アヤネに呼ばれたホシノは机にもたれかかりながら口を開く。
「まず根本的な理由として、うちの全校生徒数が数人しかいないって所が問題なんだよねー。生徒数が多ければ力にもなるし、毎月のお金だってその分増えるし」
「それはそうかもしれませんが...でも一体どうやって...」
「そんなの簡単、他校のスクールバスを拉致すればおっけー」
「なるほど.....え?」
「バスをジャックして転入学書類にハンコ押さないと降りられなくするっていう完璧な作戦ー、どう?」
「それ凄く良い、なら襲撃先を決めないと。それによっては作戦も難易度も変わってくる」
「だ、だめですよ!何を進めようとしているんですかシロコ先輩!それにそんな事先生の目の前で堂々と言っちゃ駄目でしょう!?」
ホシノはやっぱりかーと軽く流し、シロコは明らかに残念がった様子で肩を落とす。
「わかった、ならこれがいい」
「....はい、砂狼シロコさん」
「ん、銀行を襲う」
「はい、銀行をおs....はい!?」
「ターゲットは第一中央銀行、目標金庫の場所、警備員の動線、現金輸送車のルートはバッチリ。簡単だしすぐに沢山稼げる。ほら、覆面もちゃんと用意してるからバレる事はない」
「ほら、じゃありませんよ!さっき私が言った事全然聞いてないじゃ無いですか!そういうのは駄目です!」
「ん....」
「それに!先生もちゃんと注意してください!」
「え、あー...」
彼女達の懐かしいやり取りが微笑ましくつい笑顔で見守っていたのだが、アヤネに怒られてしまった....
「じゃあ次は私ですね〜」
「はぁ...では十六夜ノノミさん」
「はい!犯罪でも詐欺でもない、とってもクリーンな方法です、それは〜アイドルです!」
「はぁ、アイドル....」
「私達全員でアイドルをやってデビューすれば、きっと復興できます!」
「却下ー」
「えぇ、そんなぁ...決め台詞も考えていたんですが...」
その後もやいやいと話を続ける4人。
そんな4人を見て、アヤネが頭を押さえ苦い顔をしつつ
「あの、そろそろ結論を...」
「んーじゃあ先生が選んだものにするって事でいいんじゃない?」
「えっ!本当にさっきの中から選ぶんですか!?」
「大丈夫大丈夫ー、ほら先生は何が良いと思う?」
そうホシノに託された私は考える。
バスジャックはさせられないし、銀行強盗は...おそらくどのみち今後やる事になるだろう。
...アイドルか、そういえばあの頃も結局その姿を見る事は叶わなかったな。
シロコ達がアイドルに....私はその光景を思い浮かべる。
互いに協力し合い、大変な練習をこなすみんな。
時には挫折しそうになりながらも、最後まで諦めずに夢に向かって進み続けるみんな。
ステージに立ち、大勢のファンに囲まれて歌や踊りを披露するみんな....
「あぁ...立派なアイドルになったんだね....」
「先生が泣いてる...」
「ちょ、先生!戻ってきて!」
危ない、あまりの綺麗な光景に意識が持っていかれていたらしい。
セリカに肩を揺すられて私は現実に戻ってくる事ができた。
「じゃあ先生が思わずこうなるほどのアイドル路線で決定ですね♪」
「ん、やるからには全力で」
「いやぁ方針も決まったみたいで良かった良かったー」
「え、ほんとにこれでいいの?ねぇアヤネちゃん....アヤネちゃん?」
セリカがアヤネの方を見ると、黙り込んでいたアヤネは下を向いており、プルプルと体を震わせている。
「.....良いわけ、良いわけないじゃ無いですかああああああああああああ!!!」
そうして手を机の下にかけたアヤネは勢いよく振り上げそれはそれは見事なちゃぶ台返しを披露したのだった。
「はーいアヤネちゃん、お口開けてください♪」
「いやぁごめんねアヤネちゃん、おじさん反省してるからどうか機嫌直して?」
「アヤネ、チャーシュー食べる?」
場所は変わって柴関ラーメン店内、散々アヤネのお説教をもらった私達はセリカが丁度バイトという事で、そのままお昼ご飯を食べにやってきていた。
「はむ...まったく、皆さんもっと真面目にですね...」
「ごめんねアヤネ、ここのお金は私が全部持つから...」
それからお腹が膨れた事で落ち着いてきた様子のアヤネに満足そうに食べ続けている4人。
そんな彼女達を見ながら、私は入り口に意識を向けていた。
やがて数人の足音が聞こえ、勢いよく入り口が横に開かれると同時に元気な声が店内に響き渡る。
「大将、いつものを1つ頼むわ!」
「社長、確かに何度も食べに来てるけどそういう店じゃないと思う」
「アルちゃんはちょっと大人な感じを出したいんだよ♪まあ頼むのは1番安いメニュー1品だけど」
「さ、流石社長です!」
予想通りか記憶通りか、そこへ現れたのは先日もお世話になった便利屋68の4人。
「あら先生じゃない!奇遇ね!」
「...誰?先生の知り合い?」
こちらに元気よく話しかけてくるアルに、少し警戒気味のシロコ達。
アビドス対策委員会と便利屋68、その両名がついに出会う事となった。