「なるほど....」
とあるオフィスの一室にて、電話を片手に話している男、そしてその様子を静かに眺めている人物の影があった。
「練習の経過はわかった。それで、実戦はいつになる予定だ?」
彼らのアビドスでの目的...アビドス砂漠に埋められているであろう”宝”を見つける、そしてアビドスをカイザーの手によって支配する、これらの障害であるアビドス高等学校を排除するべく様々な手を打っているが、電話相手への返答から察するに現状はどうも芳しくないらしい。
「1週間以内か...わかった、では良い報告を期待している」
そう言い電話を切り深い溜め息を吐く男。
「...ふむ、奴らの戦力やデータは正確なものだった筈....何かしらのミスが?いや....」
「お困りのようですね」
「いや、別に困ってはいない。ただ連中の戦力がこちらの予想を超えていただけの事だ。それらを修正すればどうとでもなる」
「........」
少しの間オフィス内に沈黙が流れる。
「...いえ、あのデータに不備はなかったかと」
「なんだと?」
「正確には、あのデータ以上に今のアビドスが強くなっていたと解釈した方がいいでしょう」
「...では考えられるその要因は?」
「現時点ではなんとも、ただその可能性が高いのも事実。それらが起こった変化要因を確認してみましょう」
「.......」
無言で立ちすくす男を背にオフィスを出て暗い廊下を歩きながら、謎の人物は思考する。
「...継続的な襲撃による彼女達の戦力削減、高額の借金の利息による肉体的及び精神的負担、彼女達の拉致による有利な取り引き、そして便利屋と呼ばれる生徒による再度の襲撃....彼の作戦は普通であれば通用する可能性は高かった」
だが、実際には予想よりも彼女達の回復や対応が早く逆にこちら側が敗北する始末。
結果、それらの作戦は全て無に返す事となった。
これほどまでに計画が狂うとなると、それ程何かしらの大きな要因があった事は間違いない。
「....まるで、初めからこちらの手が全て読まれている様な不気味さがありますね...実に興味深い」
ここキヴォトスでそれだけの変化を起こせるもの...これまで確認出来なかった事象...最近起こった無視できない問題...。
「....もしかすると、今後我々ゲマトリアにも影響がある可能性も考えなくてはなりませんね...クックック...!」
黒く揺らめく頭を震わせる不気味な人物の笑い声がしばらく廊下に響き渡っていた。