アビドス3章更新きますね、楽しみ。
「....って.....するの....」
「.......が......るから」
私の傍で誰かの話し声がうっすらと聞こえてくる。
だんだんと意識がはっきりしてくるのを感じながら、私は先程までの記憶を思い返していく。
(何故か道に倒れてて......目の前にシロコが居て.....それからまた気を失って......)
「っ!シロコ!」
「うわっ、びっくりした!」
「あ、目が覚めたみたいですよ」
彼女の名を口にしながら勢いよく起き上がると、目の前には3人の少女の姿があった。
眼鏡をかけ、何かの書類を持ちながらこちらの様子を伺っている少女。
警戒心を露わにしながら、思い切りこちらを睨みつけている少女。
ニコニコと笑顔を浮かべながら、そんな2人を見ている少女。
アヤネ、セリカ、ノノミ.....私がよく知る生徒達がそこに居た。
「ちょっとあんた何者なの!何のつもりでアビドスに来たのか答えなさい!」
「セリカちゃん、そんなに詰め寄っても答えてくれないと思うよ...」
彼女達を見ていると私の脳内にかつての思い出が蘇り、自然と目からは涙が溢れてしまう
「え、う、嘘!何で泣いてるのよ!?」
「あーセリカちゃん泣かせちゃいましたね〜」
「せ、セリカちゃん謝った方がいいんじゃ...」
「私のせい!?」
「ごめん、ちょっと目に埃が入っちゃってね.....セリカのせいじゃないよ」
「よ、よかった....って何であんたまで気安く名前で呼んでるのよ!しかも何か嬉しそうだし!」
こんなやり取り全てが懐かしく、ついつい頬が緩んでしまう。
だがセリカを怒らせたままにするのは申し訳ない、私は涙を拭い気持ちを切り替え彼女達に尋ねた。
「ところで私はどうやってここに?実は倒れてからの記憶が無くて...」
「ああ、それはシロコ先輩です。気絶させてしまった人が居て困ってると言っていたので、一度こちらの方に連れてきてもらったんです」
「そっか、シロコが.......」
あの時の出会いを改めて思い返す、だがそれと同時に新たな疑問も浮上してくる。
そもそも何故私は生きているのだろうか。
私は確かにあの時…いや、それよりも前に死んでいて既に肉体も消滅した筈だ。
だが事実私は今ここにいる。
最初は夢かと思ったが流石に現実としか思えない様な感覚ばかりで、これを夢だとはっきりと否定する事ができない。
それに時期としては、彼女達が私を知らない事から私がアビドスにやって来た直後ということに....
「....るの?」
「.......ん?」
少し考えに耽っている内にセリカが私に何か話しかけていたようだが見事に聞き逃してしまった。
「だから何であんたがシロコ先輩を知ってたのかって聞いてるの!」
「あ、あーそれは....」
とにかく考えるのは後だ。
確かに今の彼女達にとっては、初対面である筈の私が色々と彼女達の事を知っているというのはおかしな話だろう。
「実は私は.....」
そう言って普段から胸ポケットにしまっていた名刺を取り出してセリカに手渡した。
「名刺?.....連邦捜査部S.C.H.A.L.E........ええええええ!」
「シャーレって事は....」
「ま、まさか最近着任した先生って」
セリカは大声を上げて、ノノミは口に手を添えて、アヤネは困惑した様子でそれぞれ驚きを露わにしている。
「元々アビドスの事は話には聞いて気になっていたから近い内に訪ねようと思っててね、君達の事はその時に調べたんだ」
とりあえずそれらしい理由で誤魔化してみたが、どうやら3人とも納得してくれた様だ。
「なるほど、だからシロコちゃんの事を知ってたんですね.....良かったですねアヤネちゃん!丁度シャーレに連絡をしようとしてた所だったじゃないですか」
「確かにタイミングは良かったわね.....ちょっと待って、さっきシロコ先輩思い切り蹴り上げて気絶させたって言ってたけど」
「せ、先生!お怪我などはありませんか!?」
なるほど、それで気を失っていたのか。
あの時私も気が動転していてついシロコに抱きついてしまったけれど、よくよく考えてみれば誰かに見つかれば即ヴァルキューレ案件だったかもしれない.....。
「だ、大丈夫だよ!あれは私が悪かったから...それより、そのシロコは今はどこにいるのかな?運んでくれたお礼を言いたいんだけど」
「シロコ先輩ならこちらを訪ねてその後すぐ見回りに行ってくると言って出ていきました。先程先生が目を覚ましたと連絡しておいたので、しばらくすれば帰ってくると思います」
「そっか、ならそれまで少し席を外しても良いかな?私も色々と連絡しなきゃいけない事があるから」
「はい、わかりました!では少しの間休憩ということで」
「じゃあ私は先輩を起こしてくるわ、きっとまだ屋上で寝てるだろうし」
そう言って部屋を出たセリカの後に続き、廊下を歩きながら現状を整理する。
何故かはわからないが、どうやら私はかつてのキヴォトスにいるらしい。
そして先程の彼女達の話から考えると、今はアヤネがシャーレに援助要請のメッセージを送ってくる前の時期。
ここは私の過去なのかそれとも全く別の世界なのか.....非現実的な話ではあるが、宇宙戦艦やら”並行世界の私”という存在がいた時点で今更かと思い直す。
「ひとまずは様子見かな」
過去の記憶から今の私は色々と知っている事が多い。
だがこの世界でも全く同じ様な事が起こる保証なんてないし、それらを何も考えずに言いふらしても周りから変な目で見られてしまうだけだ。
できる限り自然に接さなければ...そう心に留めた後、私は服の内側にあるシッテムの箱を取り出した。
部屋を出た理由はもちろん連絡を取る事ではない。
あの時、シロコと会った瞬間からずっと彼女とも会いたいと思っていた。
......私が以前持っていたものとは違い傷ひとつない画面を撫でながら口ずさむ。
″.....我々は望む、ジェリコの嘆きを。”
”.....我々は覚えている、七つの古則を。”
澄んだ青空が広がる空間。
以前は失われてしまっていた教室の一角、そこに彼女の後ろ姿が見えた。
白く長い髪に黒を基調としたセーラー服。
頭には黒のカチューシャをつけ、その上に白いリボンが揺れている。
少女はこちらの存在に気づくと振り返り
「先生、お待ちしておりました」
無機質な喋り方でこちらに話しかけてきた少女。
そんな彼女に私は安心感と同時に懐かしさも覚えた。
.....ダメだ、今日はどうも涙腺が緩くなってしまう。
そんな何度目かの溢れる感情を抑えた私は彼女と向き合い口を開いた。
「うん、ただいまアロナ」
そう言って私はあの時別れたもう1人の少女、アロナの元へと歩み寄った。