偽りの道をもう一度   作:Mrふんどし

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情報

「くそ...!何でたった4人に....」

 

便利屋68と風紀委員会の戦闘開始からしばらく経過した現在、風紀委員率いる部隊の大半が地に倒れ伏していた。

 

「だ、だから戦闘をしてはいけないと....」

 

イオリとチナツは息を切らしながら、お互い肩を支え合いよろよろと立ち上がる。

 

「みんな大丈夫?怪我はない?」

 

「大丈夫...だけど、流石にこれ以上の戦闘継続は厳しいかもね、弾も残り少ないし」

 

「まだだ、お前達をここで逃すなんて...」

 

「ちょっと!どういう状況よこれ!?」

 

イオリが再び戦闘を開始しようとした瞬間、私達の後方から大きな声が響く。

 

「誰かが大規模な戦闘をしてるってアヤネちゃんから聞いて来てみたら....何があったのよ!」

 

「あら、便利屋の方々もいますね〜」

 

『それに、あちらの制服は...ゲヘナの風紀委員会です!』

 

「あの方達は...どうやらここアビドスの生徒の様です。彼女達まで参戦するとなると更にこちらが不利になります」

 

「っち、さらに援軍か...でもこのままじゃ作戦が」

 

『アビドス対策委員会の奥空アヤネです!何故私達のアビドスでこのような行動をとったのか説明をお願いします』

 

『それについては、私の方から説明をさせていただきます』

 

「な、あ、アコちゃん!」

 

「アコ行政官....」

 

アヤネがイオリ達に問い詰め少し言い淀んだ彼女達が口を開こうとした時、突然通信が開かれ彼女の目の前にアコの姿が映し出される。

 

『行政官...つまり風紀委員のナンバー2ですね』

 

『ふふ、あくまで風紀委員長の補佐という立場なだけですよ』

 

「もしそうならそこにいる風紀委員達があそこまで緊張するなんておかしい」

 

『...ふむ、どうやらそれなりに観察眼はある様ですね、少し見直しました。ちなみに情報ではアビドスの生徒会が5名残っていると聞いていましたが...残りの1名はどちらに?』

 

『....今は席を外しています。それと生徒会は既に解散し、今私達対策委員会が代理のようなものです。それよりも、今回のアビドス内での戦闘行為は我々対策委員会は認めるわけにはいきません、納得のいく説明を求めます』

 

『成る程、状況は理解しました。ひとまず先程の愚行は謝罪しましょう...全員、武器を下ろしてください』

 

アコは風紀委員の部隊にそう伝達すると、アヤネ達に頭を下げる。

 

「なっ!あ、アコちゃん!私は命令通りにやっただけで....」

 

『まずは無差別に発泡せよ、なんて命令はしていなかったと思いますが?』

 

「う...そ、それは」

 

『他の学園自治区の付近なんですから、その辺りは注意するのが当然でしょう?』

 

イオリはアコの圧に押されバツが悪そうに渋々と黙る。

 

「....とりあえず、我々としては早くそこの校則違反者を捕まえたいのですがご協力いただけますか、対策委員会の皆さん?」

 

『....お断りします。貴方達のやっている事は自治権の観点から見て明確な違反です。そのため、私達がその指示に従う正当性は無い筈です』

 

『.......』

 

アヤネとアコの睨み合いが行われる中、後ろでその様子を見守っていたカヨコが口を開いた。

 

「....いい加減、白々しい嘘をつくのはやめたら?天雨アコ」

 

『カヨコさん....』

 

「嘘?どう言う事?」

 

「風紀委員がやってきた時も思ったけど、私達を捕まえるだけにしては数が多すぎる。ただ、これは他の部隊との戦闘を想定していたのなら説明がつく」

 

「おまけに他の自治区にこれだけの数の部隊を送り込むなんて非効率な運用を、あの風紀委員長がやるなんて考え辛い」

 

「だからアコ、これはあんたが独断で行った作戦...そして、その狙いはたった5人のアビドス生徒に対するものでもない。なら答えは1つ.....ここにいるシャーレの先生を捕まえにきたって所でしょ」

 

「え、せ、先生を!?何で!?」

 

『.....成る程流石カヨコさんです』

 

そう呟きアコは何処かに指示を飛ばすと、その合図と共に遠方から更なる部隊が姿を現した。

 

「嘘!どれだけ隠してたの!?」

 

「今ここにいる人数と同じくらいの数...」

 

『事の次第をお話ししましょうか....先日の事です、ゲヘナの情報部によりある連絡を受けました。シャーレの先生が、トリニティのティーパーティーと会合していたと』

 

『トリニティは我々ゲヘナ学園と長きに渡り敵対関係の学園...その生徒会とシャーレが何かしらの接点を持っている。その時私はシャーレというものをあまり知らなかったので、以前チナツさんが書いた報告書に目を通し確認しました』

 

『そして改めてシャーレの権限、仕組みを知り、それらを踏まえた上でこの先シャーレの先生はとても危険で不確定な要素になると判断しました。先程申した通り、そんな何が起こるかわからない存在がティーパーティーとの会合をしていたとなれば、トリニティとシャーレとの間に既に何かしらの関係があると疑うのも当然でしょう』

 

『もしそうであれば、今後行われるトリニティとの条約にどの様な影響を与えるかわかりません。よって、条約が締結されるまでの間シャーレの先生を我々風紀委員の庇護下にお迎えさせて頂こうかと』

 

『....要するに先生を連れて行くって事ですか?』

 

「なら余計従うわけにはいかない」

 

「そうよ!勝手な事言わないで!」

 

『....はぁ、すんなり事が進むとは思っていませんでしたし、仕方ありませんね。では...』

 

アコが溜息をつき部隊に指示を飛ばす直前、私はアコの前に姿を現した。

 

「アコ、少し待ってほしい」

 

「せ、先生!そいつらの前に出たら駄目よ!」

 

『あら、何でしょうか?』

 

「出来ればここでのこれ以上の戦闘は止めて欲しい。街にも被害が出かねないし、それにこれ以上彼女達や君達が無駄に争って互いに傷つける必要はないと思う」

 

『ではどうしろと?まさか話し合いで解決しろとでも?おそらくそれではアビドスの彼女達は納得していただけないでしょうし、我々としてもこのまま引き下がる事は難しい問題です』

 

「うんそれはわかってる、だから....私が今からゲヘナに向かうよ。そこでヒナに私からこの前あった事を説明して、私とティーパーティーとの間に何も問題がない事を納得してもらう」

 

いきなりの私の発言に一瞬目を開き驚いたアコだったが、彼女はすぐさま冷静になるとこちらに疑うような目線を向けてくる。

 

『....随分と大胆な事をおっしゃるのですね。さっきの私の話を聞いた上での提案ですか?確かに委員長が納得すれば我々としてもそれに従う他ありませんが...残念ながら現在委員長は多忙の身です、そもそも委員長自身が許可を出さない限り....』

 

「良いわ」

 

『そう、こんな風に委員長が良いと言わないと.....え?』

 

突然発せられた声に固まったアコがゆっくりと首を横に向けると、そこには件の風紀委員長のヒナが立っていた。

 

「「い、委員長!?」」

 

『ひ、ひひひひひヒナ委員長!?べ、別の案件で出張中だったのでは!?』

 

「思ったより早く片付いたからさっき帰ってきた...それで、貴方は何で委員会のメンバーを独断で運用していたの?」

 

『そ、それは...こ、校則違反者の便利屋68を捕まえようと....』

 

「便利屋?彼女達の姿は見えないようだけど」

 

『え、い、いつの間に!?』

 

「あ、本当ですね。全然気がつきませんでした〜」

 

『こんなに人がいる中逃げられるなんて、凄いですね....』

 

ヒナの言う通りアル達はいつの間にかこの場から退散していたようで、その姿はどこにも見当たらなかった。

 

「アコ....そもそもそんな嘘をつかなくても、少し前から貴方達の話を聞いてたから理由も知っているわ。...後で嘘ついた分と今回の騒動の反省文ね」

 

『はい....』

 

「それでさっきの話の続きだけれど....私としては構わないわ、先生の方は今からでいいの?」

 

「うん、ヒナが大丈夫なら」

 

「そう...ならさっそく行きましょうか。イオリ、チナツ、帰るわよ」

 

そう言ってヒナは他の風紀委員メンバーに指示を飛ばしゲヘナへと帰還させる。

 

「せ、先生....」

 

「大丈夫だよ」

 

心配そうに見つめるシロコ達を背に私はヒナ達と共にゲヘナへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

そうしてヒナ達と共にやってきたゲヘナの風紀委員会の部室にて、あの日の出来事を正直に話した私は椅子に座り目を瞑って考え込んでいるヒナの言葉を待っていた。

 

「.....そう、つまり先生はその日、トリニティの生徒を助けたお礼としてティーパーティーに呼ばれただけにすぎないと...そう言う事ね?」

 

「そうだね、その後セイアとも話はしたけど....軽い雑談をしただけでシャーレに帰ったよ」

 

「セイア....ティーパーティーのホストね。あまり身体が強くない子だとは聞いているけれど」

 

ヒナはふぅと一息吐くと、正面に座っていた私を見る。

 

「わかったわ、先生の話を信じる」

 

「えっと、嬉しいけど...いいの?」

 

正直な所、信用してくれるかは賭けだったのだが、ヒナは何でもないかのようにあっさりと言い捨てた。

 

「確かに今の時期にティーパーティーと先生が会っていたって話だけを聞けば、アコみたいに警戒するのが普通かもしれないけれど、そもそもそういう問題は万魔殿が主体で動くべき問題だもの。私としては元から特に気にしてないわ」

 

「それに....シャーレのこれまでの行動や、今先生がアビドスに協力している姿を見ていれば、先生が政治的な考えで動いてるだなんて思う方が無理でしょう」

 

ヒナはそう言った後、少し気まずそうな顔をしながら

 

「それと...彼女達、アビドスの子達には後で私から正式に謝罪しておくわ。いきなりあれだけの部隊を引き連れて戦闘行為を行ったのは事実だもの」

 

「ありがとう、ヒナ」

 

「別に当然の事だから。それで.....」

 

ヒナは再度息をつくと

 

「先生は何か、私に尋ねたい事があるんでしょう?」

 

「....やっぱりわかっちゃうんだね」

 

「そもそも本来この程度の事実確認だってあの場で済ませれば良いだけの話。それをわざわざゲヘナに来ると言った時点で何か別の考えがあると察する事ができたわ」

 

そう、ヒナの言う通り私の目的は別にあった。

 

「まあ今回アコ達がやらかしたお詫びもかねて、出来る限りの事は答えるつもりよ」

 

「そっか、じゃあ.....ヒナが知ってるカイザーの情報を教えてほしい」

 

「カイザーについて...?」

 

かつて私達はヒナから情報をもらった事で、結果的にアビドスはカイザーを退かせる事ができた。

 

そのため、この世界でも同様ににカイザーがアビドス砂漠に拠点を構えているのか。

またそれ以上に何か情報を得られるかもしれないと考えた私はヒナがやって来るであろう今日あの場で待っていたのだ。

 

 

 

「そう.....先生はあの子達のために動いているだものね。わかったわ、私が情報部から得たものでよければ教えてあげる」

 

 

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