「な、何ですか!これっ!!!??」
いつもと変わらない筈の朝、部室を訪れたアヤネを出迎えたのは机に置かれた1つの手紙。
アヤネからの連絡を受けすぐさまシロコ達も合流し、4人は残されていた手紙を無言で読んでいた。
そこに書かれていたのはホシノの筆跡でハッキリと書かれた経緯を説明する内容に、同封された退部届。
昔からスカウトを受けていた事。
今回、そのスカウトを受ける事でアビドスの借金の大半がなくなる事。
その条件として自分がアビドスからいなくなる事。
その他にも私達への謝罪の言葉の数々に、先生へのメッセージ...
「アビドス最後の生徒会だから私が責任をとる....って、ふざけないでよ!今まで一緒になんとかしてきたのに....!」
「セリカちゃん...」
「これでアビドスを救えても、先輩がいないならそんなの意味ない....」
「.......」
セリカは涙目になりながら怒り、アヤネはそんなセリカを見ながら同じく目に涙を浮かべている。
シロコは床に座り込んで顔をうずめており、ノノミは未だに手紙を離さず握りしめていた。
「.....先生は?」
「連絡はしてみましたが、一向に返事がなくて....」
「どうして先生まで...これから私達どうすれば...」
「...とにかく助けないと、まだ間に合うかもしれない」
シロコがそう呟いて立ちあがろうとした瞬間
ドカアァァァァァァァァン!!!
「っ!爆発!?」
「な、何なの!」
「これは.....え、ど、どうしてカイザーが?カイザーPMCが街を攻撃しています!」
「「「!!!」」」
「距離はそこまで遠くありません!」
「...行こう、今はカイザーを止めるしかない」
4人は顔を見合わせ頷き、すぐさま装備を整え行動を開始した。
対策委員会が爆発地点へと辿り着いた時には、逃げ回る住人に街を破壊しながら部隊を引き連れ進軍するカイザーPMCの姿がそこにはあった。
「うわぁぁぁぁ!」
「に、逃げろ!」
「この自治区には既に退去命令が下っている!さっさと退け!」
「ふふふふっいいぞ、このまま進め!アビドス高等学校を占拠するんだ!」
「待ってください!」
「ん?...おや、誰かと思えば君達か。私自ら学校まで出向いてやろうと思っていたが、手間が省けて助かったよ」
4人に気がついたカイザーPMC理事が周りの兵士達に合図を送り一度攻撃を停止させる。
「何故街を攻撃するなんて真似を!いくら貴方達が土地の所有者であっても許される事ではありません!」
「それに、学校はまだ私達アビドスのものです!貴方達の行為は立派な不法行為です!」
「ホシノ先輩はどこ?答えて」
「くくくっ、何を言い出すかと思えばそんな事か」
カイザーPMC理事は彼女達を鼻で笑う仕草をしながら答える。
「君達は我々が不法行為をしていると言っているが、ならとっとと連邦生徒会とやらに通報すればいい。我々は別に構わんぞ」
「何ですって!」
「だが、今まで連邦生徒会が君達の言い分を聞き入れた事はあったのか?君達を助けた事は?他の組織もそうだ、どうだ?答えてみろ」
「それは....」
「今更泣き言を言った所で君達を助けに来るお人好しはいない....ああそうだ、シャーレの先生とやらが残っていたな。そいつに泣きついてみたらどうだ?...姿が見えない様だがとうとうそいつにも見捨てられたか」
「っ!」
「ふんっ...そもそもアビドス生徒会の最後のメンバー、小鳥遊ホシノが退学した時点で公的な部活、委員会、生徒会、更に自治区まで無くなったアビドスはもはや学園都市の学校としての自立存続が不可能となった」
「よって、君達は既に何者でもないのだよ。そんな君達が何の権利を主張する気だ?」
「まだ対策委員会が残ってる!私達がいるのに、そんな勝手な言い分は通用する筈ないでしょ!」
「......ない」
「え?」
セリカの反論にアヤネが顔を俯かせながら呟く。
「対策委員会は...公式に許可を受けている部活じゃない、私達が来た頃にはもう生徒会が無くなってたから.....」
「え、そ、それって...」
「非公式、非公認な委員会...対策委員会という部活ごっこを君達が勝手にしているに過ぎない。つまり、君達の存在は誰であろうと証明しようがない....くくくくっ!これでわかったか?君達が我々を止められる理由など現時点では何も無いのだよ」
「そんな.....」
「ハハハハハッ!まさか、その様子だと本気で我々を止めようと?本気であれだけの借金をたった5人だけで返そうとしていたのか?これは滑稽だ!」
言葉を失っている彼女達を見た理事は高らかな笑い声を辺りに響かせる。
「安心したまえ、君達の大事な学校は...アビドスは我々が有効活用してやるとも。さあお前達、進行を開始.....」
彼女達を無視してカイザーPMC理事が周りの兵士達へと再度指示を飛ばそうとしたその時
ドカァァァァァァァァン!!!
「っ!な、何事だ!」
『緊急連絡!北の方角で大規模な爆発が発生!部隊が巻き込まれて大勢が負傷中です!』
『東の方でも爆発を確認!合流する筈の部隊との連絡が途切れました!』
「何だ!何が起こっている!」
予想外の連絡に先程までの余裕を崩し始める理事。
そんな理事から対策委員会を遮る様現れた4人の影。
「あ、貴方達は.....」
「ぬぅ?き、貴様らは....!」
「.....まったく、何を暗い顔をしているのかしら?」
アヤネ達を背にした少女は続ける。
「どんなに苦労しても、どんなに頑張っても、報われる事なんて無い」
「何の解決の手立ても見つからず、得るものも無く、ただあるのは不条理な現実ばかり」
「....でも、己すら信じられなくなったら僅かな希望の可能性すら消えてしまうわ。貴方達は自分の力を信じられない程弱い人間だったの?」
「アルさん....」
「便利屋68...!何故貴様らがここにいる!私の依頼もろくにこなせず、その上この私に楯突くつもりか!」
「便利屋68....?貴方、何か勘違いをしている様ね」
「何っ!」
「私達は貴方の依頼なんか受けた覚えは無いわ、だって私達は....」
その言葉を合図に4人はそれぞれ”袋”を取り出すと頭へ被り
「今ここにいるのは....覆面カルテットだもの!」
そう言い放った後、アルの隣に立っていたムツキによって理事の後方に向かって何かが大量詰まった鞄が投げ込まれる。
その鞄は大きく弧を描き地面へ落ちた瞬間
ドォォォォォォォォォォォン!!!!
その場にいた兵士達を巻き込む程巨大な爆発が起こった。
爆発による煙で視界が奪われている隙にアヤネ達と共に少し離れた場所まで移動したアルは、先程の緊張が遅れてやって来た様で大きくため息をつく。
「......はぁぁぁぁぁぁ!し、死ぬかと思ったわ!」
「アハハッ!アルちゃん格好良かったよ♪」
「アル様!完璧でした!」
「ど、どうして便利屋の皆さんが....」
自分達を助けてくれた4人に未だに驚きを隠せないアヤネ達。
「別に、大した理由なんてないわ。ただ...アビドスが無くなってあの美味しいラーメンが二度と食べられなくなっちゃうのは困るもの、それだけよ」
アルはそっぽを向きながら答える。
「社長、あんまりゆっくりしてる時間はないみたい。ここからどうするの?」
「勿論、迎え撃つわ....対策委員会、ここは貴方達の大事な場所なんでしょう?貴方達が早々に諦めたら誰がここを守るの!シャキッとしなさい!」
「........!」
「うん、そうだね....アビドスを守らないと!」
その言葉に4人の目に覇気が戻り始める。
「ところで先生は?」
「今はいません...」
「大丈夫よ、先生なら必ず来るわ」
「ん、それまで全力で持ち堪える」
そうして8人の準備が整った所で煙が晴れ、理事の姿が露わになる。
服などに多少の傷がついているものの大きな負傷をした様子はない、だがその目には怒りの感情が渦巻いていた。
「貴様らぁぁぁぁぁ!もう容赦はしないぞ!お前達、あの連中を全力で叩き潰せ!!!」
「対策委員会、交戦開始します!」
「貴方達!行くわよ!」
3者それぞれの言葉を合図に銃声が鳴り響いた。