対策委員会編2章完結です。
後書きにも書きましたが、続きの投稿は話の構成を考え終わるまで未定です。
シャーレの一室にて、机に溜まった書類をめくる音が静かに響く。
ある程度読み進め書面にサインをするという作業を数時間程繰り返していた私はバキバキと鳴る背中を伸ばし呻き声を上げた。
アビドスで起こった様々な事件....あれから今日まで2週間程経過していた。
その間は、あの時起こった出来事について連邦生徒会からまるで尋問の様に長時間聞き取りをされたり、救出に駆けつけてくれたお礼をするため他の学校へ出向いたり、舞い込んできた仕事を処理したり...まあその殆どはいつもとあまり変わらない日々に時間を費やしていた。
私は事情説明やお礼を言いに行った際の彼女達の会話を思い出す。
『わかりました、本件に関しては我々連邦生徒会の方で調査を進める事になるでしょう』
今回の件は、連邦生徒会が発足した機関の顧問である私が攫われた...見方を変えれば連邦生徒会の組織へ危害を加えたと言えるとの事で、連邦生徒会側がカイザーグループの調査に乗り出す事を決めたらしい。
何にせよ、これでシロコ達も多少は助かるきっかけになったので私としては攫われ得だったかもしれない.....そんな事を人前で話せばおそらく説教では済まなくなるので口が滑っても言えないが...
『本当に良かったです....私達の問題で先生にもしもの事があったら...』
『ほんと、一時はどうなるかと思った。シロコ先輩なんか1人で飛び出そうとしたから止めるの大変だったんだから』
シロコ達の元へ向かった際、彼女達の雰囲気は以前よりも明るいものとなっていた。
連邦生徒会が介入すると知った事で、自分達の抱える問題が多少は改善される事にホッとした様だ。
それでも完全に解決した訳ではないが、今の彼女達ならどんな事でも乗り越えていけるだろう。
『ふふふっ...別にあれくらい当然の事をしたまでよ』
便利屋68の4人にも本当にお世話になった。
私とホシノがたどり着くまでシロコ達に手を貸し、私を助けてくれた時もカイザー兵の足止めをしてくれたらしい。
ただ、話している時にお腹を鳴らしていたので便利屋稼業の方は少し寂しい事になっているのかもしれない....。
『ああ、せっかくあの子達が頑張ってくれたんだ。なら途中で投げ出すなんてできねぇよ』
柴関ラーメンの大将は今後も店を続けるそうだ。
カイザーから提示されていた立ち退きの件も理事が失踪した事で白紙になった様で、その他の店もアビドス活性化のため経営を再開する事にしたらしい。
なんでも、大量の紙幣が詰め込まれた鞄がメモ書きと共に置いてあったらしくそれを元手に破壊された街の復興も少しずつ進めていくとの事だ。
『...です。いいですか!今回はヒナ委員長のご厚意で助かった事をきちんと自覚してください!ちょっと、聞いてるんですか!』
ゲヘナへ向かった時は、そこでアコにヒナの優しさ、慈悲深さ、素晴らしさを延々と説かれ、それを見たヒナが呆れた様に溜息をついていたのが印象的だった。
いかにヒナの事を尊敬しているかが伝わってきたのでつい頬を緩めながら聞いていたのだが、それが真面目に聞いていないと捉えられてしまい、最終的にその日は夕方近くまでアコの話を聞く事となってしまった。
『あくまでたまたまトリニティの1生徒がアビドスに居て、たまたま彼女の近くにあったトリニティの榴弾砲が作動してしまっただけだよ。...ところで....今度時間がある時にこの前の様に話でもしないかい?何、心配しなくていい、ただの雑談さ』
最後にトリニティへ尋ねた時は、心なしか明るくなったセイアが出迎えてくれた。その時教えてくれた事だが、どうやらあれからナギサやミカとも話す機会が増えたらしく、今まで溜め込んでいた気持ちを少しだけ話す様になり、気持ちが楽になったそうだ。
そんな彼女達とのやり取りに思いを耽る中、部屋にはアラーム音が鳴り響く。
『疑問、本日何か予定があるのですか?』
覚えのないアラーム音にアロナが尋ねてくる。
彼女はあの件以降どうも私を守れなかったのは自分の責任だと思い込んでしまい、それから休む事なく仕事をし続けたり、私を必要以上に気にかけたり等しばらくの間自分を追い込み気味だった。
勿論私は彼女の責任なんて思ったことは一度も無いし、その事で彼女が変に思い詰め苦しむ姿も望んでなんかいない。
その事を彼女に根気よく伝え続け、その甲斐あってか最近はいつも通りの調子を取り戻してくれた様で安心している。
「うん、ちょっとシロコからのお誘いでね。だからアロナはその間ゆっくり休んでていいよ」
『わかりました』
私はシロコに今から向かう旨を連絡すると、部屋の鍵を閉めてシャーレを発った。
「先生頑張って、もう少しだよ」
「はぁ....!はぁ.....!」
私はシロコからの声援を受けながら必死に足を動かしていた。
額には汗が浮かび呼吸もままならなくなる中、気力を振り絞りペダルを漕ぎ続ける。
何故今私はそんな事になっているのか...それは彼女に誘われてサイクリングをしている最中だったからだ。
景色の良い場所があるから今度一緒に見に行こうと言われ軽く了承したのがきっかけだったが、まさかここまで大変なものだったとは....いや、これは私の体力が無さすぎるのが原因か?
シロコも多少は汗をかいているようだが、普段の慣れからかその表情には余裕が見える。
....今度から体力をつけるために運動するのもアリかもしれない。
そんな事を考えつつ自分の限界と戦い続ける事十数分。
「ん、着いたよ先生」
「.........」
ようやく目的地に辿り着きシロコに促される様に顔を上げると、そこには視界いっぱいにアビドスの街が広がっていた。
街の一部は砂に覆われつつも確かにそこには人々の努力により築かれた証があり、それは不思議と息を呑んでしまう程美しい光景だった。
「私はここが好き。...どうしてかはわからないけど、それでもサイクリングの時は必ずここに来るの」
「....うん、綺麗だ」
私はシロコと並んで目の前の街を見ていた。
遠くにはアビドスの校舎や見知った商店街もあり、先程まで自分達があそこに居たという不思議な感覚が沸き起こってくる。
そんな中、ふと隣の見てみると目を細め街を見るのに夢中になっているシロコの横顔が映る。
その横顔は、いつか見た”彼女”のものとそっくりで.....
「....ん、先生どうかした?」
私の視線に気がついたシロコは首を傾げ尋ねてくる。
「.....ううん、何でもないよ」
私は直前まで出かけたその言葉を押し込め、笑いかける。
あの時...今の彼女達を見ると決意したものの情けない限りだが、やはり”彼女”だけは難しいようだ。
結局最後まで私が”彼女”に言う事が出来なかった、伝えるべきだった言葉。
今更後悔した所で、あの時間は巻き戻せないし消える事は無い。
だからこそ、この言葉を伝えるのは目の前の彼女であっては駄目だ。
「....シロコ。シロコはこれからどうしたい?」
「これから?...よくわからないけど...みんなと一緒に色んな事をしてみたい」
「みんなで何処かへ行ったり、遊んだり、一緒にバイトをしてみたり....うん、たくさん楽しい事をしたい」
「...勿論、先生も一緒に」
そう言ってこちらを見つめ返すシロコに、私は頷いて再びアビドスの街を視界に収めながら考える。
これから私はどうなるのか、それはまだわからない。
砂漠で目覚めた時の様に、ある時私の意識が突然消えるかもしれない...あるいは一生このままな可能性だってある。
結局、結末がどうなるかなんてものは誰にもわからない。
だが....それでも私が彼女達を見守り続ける、それだけは絶対に変わる事はない。
「ん、先生、そろそろ次の場所に行こう」
「えっ!?も、もしかしてまだあるの!?」
「うん、次も綺麗な所だよ」
「あ、シロコ!待って...!」
そう言って早々に自転車へ乗り込んで走り始めてしまったシロコ。
私は彼女の背を追いかけるため、震える足に再度力を込めた。
↓ここからは少し長い私の感想なので読まなくても大丈夫です。
まずはここまで読んでくださった方・お気に入り・しおり・評価・感想をくれた方々ありがとうございました。
私は最終編そしてプレナパテスが好きで、彼(彼女)を主人公に何か書きたいなと思い本二次創作を書き始めました。
元々対策委員会編2章までの構想は出来ていたので何とかその終わりまで書き切る事ができましたが、それ以降のストーリーに関してはまだ考え中です。
なのでゲーム開発部編・エデン条約編などに進むかは未定ですが、今後書きたい展開は思いついてはいるので構成がまとまり次第続きを書ければなと思っています。
文をまとめるのが正直下手なので駄文だったかと思いますが、少しでも楽しんでいただけたなら嬉しいです。
続きを書いた時か、別の作品かはわかりませんが、その時はまた読んでいただければ幸いです。