投稿再開、時計じかけの花のパヴァーヌ編第1章スタートです。
といっても今回と次話はプロローグの様なものなのでストーリーに入るのはその次からの予定です。
以前の様にまだ最後までの流れを考えきれていないのと、書き貯めをしていない為、投稿頻度は遅くなるかもしれません。
それでも大丈夫という方は読んで頂けると嬉しいです。
新たな始まり
「........」
取り付けられた大きな窓から暖かな陽の光が差し込む室内、そこには椅子に座り真剣な眼差しで手元の書類をチェックしている人物の姿があった。
各学園から送られてきた申請書に設備等の要望が書かれた用紙...更には連邦生徒会から届けられた生徒達の使用する銃弾や補充希望の物資の見積書等々その内容は多岐にわたる。
それらが大量に机の上に積まれ、その人物を囲っている光景はまさに檻の様だと言えるだろう。
『報告、添付された書類データの確認が終わりました、全て問題ありません』
「もう終わったの?流石アロナだね、ありがとう」
画面越しに映るアロナと呼ばれた白髪の少女は、褒められると僅かにわかる程度だが頬を緩ませる。
「お願いしてた分は終わったみたいだし、アロナは休んでもいいよ」
『提案、先生も一度休息をとった方がいいかと。先日から様子を見ていましたが、今日までまともに睡眠時間をとっていなかった筈です』
「私はまだ大丈夫。ほら、残りもまだあるし」
私は手元の書類の束を指しながら心配そうにこちらを窺っているアロナに答える。
『...そちらはまだ期限に余裕があったと思われますが?』
「うん、でも折角シャーレに送ってくれたものだから出来るだけ早く対応してあげたくて」
『しかし、もし先生が倒れてしまう事態になればそれこそ他の作業に支障が出てしまいます。まずは身体を休め余力が充分な時に対応する事を提案します』
「うーん、別に身体は何ともないし...」
『今すぐ、休むよう、提案します』
アロナは少し怒った様な表情を浮かべ、じっとこちらを見つめながら再度そう提案してくる。
「わ、わかった!ちゃんと休むから...」
そんな彼女から放たれる圧にとうとう根負けしてしまった私は両手を挙げて降参すると、そのまま彼女に促される形で仮眠室へと向かう事となった。
備え付けられたベッドに身体を預けると、先程まで感じていなかった疲労感が一気に全身へ押し寄せてくる。
どうやら私が気づいていなかっただけで身体は既に悲鳴をあげていたらしい。
もしあのまま働いていれば彼女の言う通り途中で気を失っていたかもしれない。
....アビドスでの一件以降変に気を張り詰めてしまっていたのか、こうなるまで気づかなかったとは情けない限りだ...アロナには感謝しなければ。
目を瞑りながらそんな事を考えている内に、徐々に私の意識は深い底へと沈んでいき.....
私の目の前には、感情が抜け落ちてしまった様な顔をした少女がこちらへ銃口を向けている姿が映し出されていた。
『ごめん、先生....こうするしか...』
そう呟きながら銃を握る少女の右手は緊張からか小刻みに震えている。
『これで...これで、終わる筈だから....!』
『.......』
場面が切り替わる。
『理解できぬ』
『何故だ、”色彩”がわざわざあの者に接触する理由等ない』
全身を白装束に覆われ無機質な仮面を身につけた集団が、私の方を見て話し合っている。
『まさか、あの者が死の神の代わりになると?』
『理解できぬ...”崇高”、”神秘”、”恐怖”、いずれも持たぬ無価値な存在が色彩の嚮導者になり得るのか?』
『だがあの”箱”の力を我々が所有できるのならば、理解する必要もない』
『いいだろう、お前の望みを叶えよう』
『お前に、”偽りの先生《プレナパテス》”の名を与える』
再び場面が切り替わる。
目の前には真剣な眼差しでこちらを見つめる”私”の姿。
崩れゆく意識の中、私は自分自身に彼女達を託す旨を伝える。
それを聞いた”私”は小さく頷くと手元のシッテムの箱を操作し、私の背後に座り込んでいた少女に脱出シーケンスを使用した。
『....!』
彼女は自身の身に何が起こったのかを察したのか、目を丸くしながらこちらに手を伸ばしてくる。
『せ、先生....』
『.....シロコ』
彼女の姿が消えると同時に、私の意識は途切れた。