偽りの道をもう一度   作:Mrふんどし

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かつての危機

あの後モモイに退いてもらい立ち上がった私はシャーレでの当番以来、久しぶりにユウカと対面していた。

私の背後にあった自販機は先程の衝撃で綺麗に凹んでおり、内部から変な機械音が聞こえてくる事からどうやら壊れてしまったらしい。

 

それ程の力で叩きつけられたのにも関わらず私には殆ど傷が無い、おそらくぶつかる直前にアロナが守ってくれたのだろう。

 

「もう、びっくりした。凄い音がしたかと思えば自販機は壊れてるし、それにまさか先生までいらっしゃったなんて」

 

ユウカは腕を組みながら少し不機嫌そうに声をかけてくる。

 

「ご、ごめん。自販機は後でシャーレの方で弁償するから....」

 

「まあそれは別に構いませんけど....それよりも、モモイ」

 

「っ!」

 

ユウカは私の隣に立っていた少女...モモイを睨むように視線を向けると、見つめられた彼女は体を震わせながらユウカを申し訳なさそうな顔で覗き込む。

 

「えっと、よければ何があったか教えてくれると嬉しいんだけど...」

 

私がそうユウカに尋ねると、彼女は溜め息を溢しながらも話してくれた。

 

「....はぁ、そこのモモイが問題を起こしたので捕まえる為に追いかけていたんです」

 

「問題?」

 

「ええ、簡単に言えば他の部室への侵入、不法占拠です」

 

「ち、違うよ!私はただレトロゲームの良さを知って欲しかっただけで...!」

 

「ゲームの素晴らしさを伝えたい!って言って部室に押し入った後いきなりゲームのプレゼンを始めたかと思えば、そのままそこに居座って勝手にゲームを遊び始めた、って聞いたけれど。私の話とどこが違うのかしら?」

 

「うっ...で、でもレトロゲームをもっと知って欲しいのは本当で...」

 

「例えそれが本当だとしても、許可も取らずに勝手にやったんだから同じ事でしょう?」

 

「うぅ.....」

 

ユウカの指摘に言葉を詰まらせるモモイ、そんな彼女を見ていた私はユウカの前に立つと口を開いた。

 

「あー...その事なら私のせいでもあるから、どうかモモイだけを責めないであげて」

 

「え!?」

 

「...先生が?」

 

モモイはいきなり私が口にした事に驚き、ユウカは訝しげにこちらを見つめている。

 

「実は前にモモイからシャーレ宛に相談が届いててね、”レトロゲームを広めたいけどどうすればいいのかわらない”って」

 

「.....モモイ、本当なの?」

 

「え、あ、あー...そうそう!先生なら何とかしてくれるかもって!」

 

「それで何か発表する形にしてみたらどうかって提案したんだけど、何をするかまでは知らなくて。でも元々私が案を出したようなものだから...だから私からも謝らせて貰えないかな?勿論、後で被害にあった部活の子達にも」

 

「........まあ先生がそこまで言うなら、わかりました。モモイ、次から何かやる時はまず話を通してからにしなさいね」

 

話を聞いたユウカは目を瞑りしばらく考え込んでいた様子だったが、最終的に納得してくれたのかそう言葉を残してこの場を去って行った。

 

「.......ぷはぁ!い、息が詰まって倒れるかと思った...!」

 

ユウカが去ると、モモイは緊張から解けたのか大きく息を吐いた。

 

「先生ありがとう!お陰で助かった〜!」

 

「私もその場で思いついた事だから.....でもユウカの言い分も正しいからね、ちゃんと反省はする事」

 

「うん、後でその子達に謝ってくるよ...後、先生にも謝らなきゃ。さっきはぶつかっちゃってごめんね先生、怪我とかしてない?」

 

「私なら大丈夫だよ。ほら、この通りピンピンしてるから」

 

特に問題ない事を大袈裟にアピールすると、モモイは安心したのか胸を撫で下ろした。

 

「そっか、良かった...あ、じゃあ先生!今度私達の部室に遊びに来てよ!なんなら今日でも良いよ!」

 

「ありがとう、でも今日はちょっと用事があって...今度遊びに行かせて貰うね」

 

「うん!それじゃあまたね、先生!」

 

そう言ってモモイは手を振りながら走り去った。

 

「....はぁ、こんな事だろうと思ってましたよ」

 

「ゆ、ユウカ!?いつの間に...」

 

不意に背後から声をかけられ振り返ると、そこには先程何処かへ行った筈のユウカが呆れた様子で立っていた。

 

「どうにも2人の様子が不自然だったので、この場から離れるふりをして盗み聞きをしてただけです」

 

「そ、そうだったんだ...ごめんユウカ、でもモモイも反省はしてるから...」

 

「さっきから話は聞いていたのでそれくらいはわかってますよ。そんな事より先生、わざわざミレニアムに来たのなら何か用事があったんじゃないですか?」

 

「そうだった、実はこの前整理してくれた資料のここ何だけど...」

 

「...あぁ、確かに言ってませんでしたね、そこは....」

 

彼女は私が指摘した箇所の補足を丁寧にしてくれ、その後私のサインを入れた書類をポケットに仕舞い込んだ。

 

「おかげで助かったよ、ありがとう」

 

「いえ、こちらも説明不足な部分もあったので.....ところで先生、これから何か用事は?」

 

「今日はユウカにこの事を聞きたかったのがメインで、後はミレニアムを見て回るくらいかな」

 

「そうですか.....」

 

私の返事を聞くなりユウカは腕を組み考え始める。

しばらくして何かを思いついたのか、自身のポケットから私が手渡したものとは別の紙を取り出した。

 

「本当ならあの子を反省部屋に連れて行った後に渡そうと思ってたんですが....先程先生があの子を帰してしまったので」

 

「うっ...それはごめん....」

 

「ふふっ、ならそのお詫びとして先生には代わりにこれをあの子達の部室に届けて貰いましょうかね」

 

ユウカは不適な笑みを浮かべると、先程取り出した紙を私に手渡してくる。

 

「...これって....」

 

そこに書かれていたものは、ゲーム開発部に対する通知書。

 

”廃部予告”

 

”昨今のミレニアムの予算減少に伴い、部活動の規定を遵守していない部に関しては厳しく処分を下す事となった”

 

”規定の部員数を満たしていない、特筆した部活動の成果が無い、以上の理由により部費提供は困難と判断し、今後改善が見られない場合ゲーム開発部は廃部とする”

 

それを読んだ瞬間、私の脳内にはかつての記憶とともに、彼女達との思い出が溢れ出した。

 

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