誰もいなくなった廊下に1人の足音が響く。
その少女...ユウカは浮かない顔をしていた。
”ゲーム開発部の子達がまた何かやらかしてる”
そう知らせを受け仕事中だった私は、作業を中断させるとすぐさま部屋を飛び出して行った。
これまでも何度かやらかしている彼女達、今度こそは反省部屋でこってりと絞ってやろうと意気込みながら確保に向かったのだが、まさかそこに先生が居るとは思わなかった。
「うぅ...あんなはしたない姿を...シャーレの当番時に培った私へのイメージが...」
以前当番としてシャーレへ出向いた際はセミナーの会計として頼り甲斐のある姿を見せようと動いていたのだが、先程大きく怒鳴りながら脇目も振らず走る姿を目撃されてしまった為その努力は無駄になってしまったかもしれない。
だが真の悩みはその後に先生に頼んだ事。
ゲーム開発部は長い間部活動としての規定を満たしておらず、最近ミレニアムの予算が厳しい事もあり流石にこれ以上部費を工面できないと結論づけた。
...勿論私個人としてもあの子達を苦しめようと意地悪をしたい訳ではない。
ただ規則は規則、ここで例外をつくってしまうと後々に支障がでてしまう。
捕まえたついでにその件を伝えようとしていたのだが、先生が間に入った事でその場では話す事ができなかった。
だからほんの軽い仕返し程度のつもりで、自分の代わりにあの子達へ伝えて欲しい頼んだのだが....
「あれじゃあ嫌な性格してるって思われても仕方ないわよね....」
元々セミナーの会計という立場から他の部活動の子からは恨まれる事も少なくない。
特段それを気にする様な性格でも無いが、流石に先生の目にそういう子だと映っているとすれば少し堪える。
...当の本人は特に何も気にしていないのだが、それをユウカは知る由もない。
そんな鬱々とした気分になりながらセミナーの部室に戻ってきた。
「あ、ユウカちゃんお帰りなさい」
「ノア...ただいま」
部屋に入るやいなや、私の帰りを待っていたノアが声をかけてきた。
「あら、ゲーム開発部の子達とは会えなかったんですか?」
「いいえ、でも色々あったのよ」
私はノアに答えながら自分の席に戻り椅子に身体を預ける。
「何か悩んでる顔ですね、先生の事で何かありました?」
「えっ!な、何でそれを?」
「あら、何となくで言ってみただけなんですが...どうやら当たった様ですね♪」
「....流石ノアね」
ユウカはノアに先程までの経緯を話すと、ノアは指を頬に当てながらうーんと少し考え口を開く。
「多分、先生はユウカちゃんを嫌いにはなってないと思いますよ。私はまだ直接会った事はありませんが、噂を聞く限りそんな事で生徒を見捨てる様な方では無いと何となくわかりますから」
「ノア....」
「それにあの子達...モモイちゃん達の事、先生なら何とか出来るかもしれない、そんな思いもあって先生に頼んだ部分もあるんじゃないですか?ユウカちゃん、あの子達の事とても可愛がってましたから」
「わ、私は別に...!」
戸惑いからか声が弾んでしまったが、そんな私を見てノアはただニコニコと笑顔を浮かべている。
....相変わらず手強いノアに私は顔を背け、誤魔化すかの様に放りっぱなしだった仕事に手をつけるのだった。