現段階でパヴァーヌ編第1章のある程度の構成は思いついたのですが、途中で色々と変更する点が出てくる可能性があるので、引き続き不定期投稿となりますがご了承ください。
「おはよう先生!」
「おはようございます」
「お、おはようございます...!」
ミレニアムを訪れモモイ達と出会った翌日、私はゲーム開発部の部室にやって来ていた。
「おはよう3人とも」
私は挨拶を返しながら彼女の方を見てみると、床にはテーブルが設置されその上に何枚ものメモ用紙が置かれている。
「今丁度話し合いをしようと思ってたんだ!先生も座って座って!」
やる気満々なモモイに手を引かれながら私は彼女達の傍に座ると、バンッとテーブルを叩いたモモイが早速口を開いた。
「まず、私達の抱える問題は2つ。部員が最低後1人足りない事と、周りから認められる成果が無い事」
「周りから認められる...手っ取り早く証明できるのはやっぱりアレしかないよね」
「み、ミレニアムプライス...だよね?」
ミレニアムプライス。
それはミレニアムサイエンススクールにて、定期的に開催される催しの事。
各部活動がそれぞれ作り上げた成果物を審査し、その順位を競い合うミレニアム最大級のコンテストである。
「それに受賞できれば、あのユウカも私達の事を認めざるを得ない!」
「でも、それに受賞するならそれなりの完成度を求められるし、私達のこれまでの結果から見ればかなり厳しいと思うけど...」
モモイの言葉にミドリは難しい顔をして答える。
「そう、どんなゲームにするかはしっかり考えないといけない....だからまずは部員を後1人でも集める方を優先しよう!人が増えればそれだけ良い案も浮かぶでしょ?」
「そうだね、でも部員集めか....」
「わ、私達以外に...入ってくれそうな子なんているのかな?」
「....あ!先生が顧問として入部するとかどう?」
「うーん、私も出来れば手を貸してあげたいけれど、流石にそれは許されないだろうから...」
「そうだよねー、むむむむむ...」
それから私達は頭を悩ませるが、中々良い考えは浮かばない。
意見を出して没になりを繰り返し時間が過ぎていく。
用意していたメモ用紙も今ではすっかりお絵描き用と化してしまっていた。
「あ、あの....」
「どうしたのユズ?」
だがそんな時、ユズが小声で告げた。
「その...発表会....昨日2人がやろうとした感じで、ぶ、部活動の発表会みたいなものをやってみるの...どうかなって」
「発表会...新入生を勧誘する時のアレ?」
「う、うん。私は...他の人の前で話すのが怖かったから...そういうのやったこと無くて...」
「確かに、私とミドリもユズが作ったテイルズ・サガ・クロニクルのプロトタイプを遊んで直接ここを訪ねたんだもんね」
「そういえば私達が入部してからもそういうの1度もやって無かったっけ」
「そう、だ、だからしっかり発表をして、沢山の人に聞いてもらって...そうすれば後1人くらいは来てくれるかもって....ど、どう...かな?」
ユズは自信なさげに俯きながら、私達に尋ねてくる。
「うん!良いじゃん!やってみようよ!」
「ちゃんとした勧誘なんて初めてだから、ちょっと楽しみかも」
「ならそうと決まれば早速準備しないと!台本に、資料に....あと広告でポスターも作らないとね!発表用の台本は私に任せてよ!」
「私は広告用のイラストを描くよ、バッチリ惹きつけれそうなものを描かなきゃ」
「じゃあ私は資料を用意しようかな」
「あ、ちょ、ちょっと待って...!」
トントン拍子に話が進む中、ユズが3人を静止する。
「ほ、本当に良いの?ただ思いついた事を言っただけなのに....」
「うん!私は凄く良いと思ったもん!」
「私も、ユズちゃんの案はアリだと思う」
ユズは賛同されると思ってなかったのか、驚きながら隣に座る私に視線を向けてくる。
「私はユズ達の力になりたくてここにいるからね。ユズが一生懸命考えてくれた事なら勿論賛成だし、私も手を貸したいと思ってるよ」
「...!う、うん!みんな...ありがとう....!」
「よし!じゃあ今からどんな事を話すか考えよう!」
それから何日か経過した。
ある時はモモイがインパクト重視が良いと言って、あまりの支離滅裂な内容にミドリに怒られていたり。
ある時は中々良いイラストが思いつかないミドリにモモイがちょっかいをかけて怒られていたり。
ある時は発表の練習で恥ずかしくなってしまい、ロッカーに引き篭もってしまったユズを全員で説得したりと....中々に濃い時間を過ごしていた。
私の方もシャーレにてプレゼン資料を作成したり、配布資料を印刷したりと少しでも彼女達の助けになれるよう作業をしていた。
『この壁に貼った方が、1番目に入りやすいでしょう。残りはあちらの方に....』
アロナにもポスターの掲示場所等で協力して貰いつつ、着々と彼女達の発表の準備が進んでいく。
そうして全ての準備が整い迎えた当日。
発表場所として選んだ視聴覚室には席が7割埋まる程度の人数が集まっていた。
「わ、思ったより来てる...!」
「ふぅ...ふぅ....!」
「ゆ、ユズちゃん大丈夫!?落ち着いて!」
3人は予想よりも多い人数を前に少し緊張気味になりながら最後の確認をし合う。
「じゃあ私は後ろで聴いてるから。緊張し過ぎず、3人が伝えたいって思ってる事を素直に話せば大丈夫だよ」
「うん、ありがとう先生」
私はそう彼女達に伝えると、後ろの壁に立ちながら思いに耽る。
...かつて私がいた世界ではこんな事は起こらなかった。
あの頃と廃部問題の時期が違っていたり彼女達との出会い方さえ違う等、やはりアビドスの一件同様どこか以前の世界とはズレているのは明らかだろう。
それでもモモイやミドリの様に彼女達の性格は変わっていなかったり、一緒に過ごすうちに他人を怖がっていたユズが自ら発表したいと宣言する等、成長ともとれる良い変化も見られた。
...そろそろ時間だ。
私は考えるのをやめ、壇上に現れた3人をその目で見守る。
3人はそれぞれ顔を見合わせ口を開くと、いよいよ彼女達による発表がスタートした。