【G.Bible】
それはかつてこのキヴォトスにいた伝説的なゲームクリエイターが作り出したゲームにおける聖書。
詳細は不明だが、その中には”最高のゲームを作る方法”が記されているというのがモモイの談である。
そんなG.Bibleがあるとされるのが、現在まで出入り禁止区域に指定されている『廃墟』、ヴェリタスの協力によりG.Bibleの最終稼働地点であると判明したこの場所で....
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「お姉ちゃんもっと早く走って!ユズちゃんも頑張って!」
「〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」
『先生、頑張って足を動かしてください』
「はぁっ!はぁっ!」
現在私達はここを徘徊していたロボットの集団から必至に逃げていた。
「⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎、⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎」
「⬜︎⬜︎⬜︎、⬜︎⬜︎⬜︎」
背後からはロボット達の謎の会話が聞こえてくるが、その意味は全くわからない。
「ど、どうするの!?あのロボット達全然諦めないしこのままじゃ!?」
「わかってる!わかってるけど〜!!!」
「も、もう限界...!」
モモイとミドリの2人はともかくどこかであのロボット達を撒かなければユズの体力がそろそろ厳しいだろう。
とはいえ私自身も体力に自信がある訳ではないのでかなり危ないのだが...。
『注意、この先は一本道になっています』
聞こえてくるアロナの言葉通り、いつの間にか私達の走る先は迂回できる場所等無い真っ直ぐな一本道となっており、その通路の上には巨大なパイプが何本も重なって紐で括り付けられている。
「皆!あの紐を狙って!」
「え、わ、わかった!」
私は彼女達にパイプを纏めている紐を撃つよう指示すると、3人は一斉にその紐目がけて携帯していた銃を発砲し始めた。
流石に頑丈に固められた紐も3人の銃撃の前には敵わず、吊るされていた紐が千切れた事で大量のパイプが落下し始める。
「走り抜けるよ!」
「ううううああああああああ!!!」
力を振り絞りギリギリの所で落下するパイプの下を通り抜ける事が出来た私達。
だが追ってきていたロボット達はタイミングが合わなかった様で、前の方に居たロボットは降り注ぐ巨大パイプに潰され、後ろの方に居たロボットは通る道を失った為かその足音は徐々に遠ざかっていった。
「.....ぷはぁ!!!に、逃げられたんだよね?」
「多分....ユズちゃん大丈夫?」
「うぅ...ケホッ!だ、大丈夫....!」
「み、皆お疲れ様....」
全員地面に腰を下ろし、危機を脱した事を確かめるかの如く深呼吸を繰り返している。
「...あ、皆見て!」
暫くそうして休んでいると、突然声を上げたモモイの指指す方向に全員が視線を向ける。
そこにはどこか怪しげな雰囲気を醸し出している巨大な建物が聳え立っていた。
「...あのロボットを作ってる工場とか?」
「で、でもここはもう禁止区域になってて本来誰も出入りしてないんじゃ...」
「ふっふっふ、2人ともわかってないなー。ゲームではこういう怪しい場所にこそお宝が眠ってる物なんだよ!だからG.Bibleもここに隠されてる筈!」
「そりゃあゲームならそうだけど....あ、ちょっとお姉ちゃん!1人で行かないでよ!」
ミドリの制止も聞かずその建物の入り口へと近づいていくモモイの後を追い、全員がその建物の内部へと入って行った。
《...........》
中は複数の通路が連なり天井にはいくつもの配管が張り巡らされている、まさしく迷路の様な構造となっていた。
『先生、大丈夫ですか?』
「...え、ああうん、大丈夫だよ」
『...気分が悪い様でしたら休んだ方がいいかと、先程の全力疾走からまだ回復出来ていないのでは?』
「あはは...やっぱり忙しくても運動はしなくちゃね」
耳元のインカムからアロナの心配する声が聞こえてくるが、私は彼女を安心させるように”笑って誤魔化した”。
確かに今私の気分は優れていないが、それは決して先程の疲れを引きずっている訳ではない。
(...何だろう、この感覚....?)
この建物に入ってからというものの、私はどこか不安に近い感覚に襲われていた。
かつての世界でもG.Bibleを探す目的でモモイ達と共に私はこの場所へ訪れており、あの時は特に何も思わなかったのだが今は何故だか謎の感覚が私の胸の中を渦巻いている。
しかし私の前を歩く3人は特に気にしている様子は無く、アロナもいつも通りだ。
(ただの私の気のせい....?)
そんな事を考えつつ彼女達と共に建物の奥へと歩き続けると、やがて目の前に一枚の扉が見えてきた。
《複数の接近を確認》
私達が扉の前に立った瞬間、どこからか聞こえてきた謎の声が辺りに響き渡る。
「だ、誰!?」
《対象の身元を確認します。才羽モモイ、資格がありません》
「ど、どういう事?それより何で私の事知って...」
《対象の身元を確認します。才羽ミドリ、資格がありません》
「資格...?一体何の....」
《対象の身元を確認します。花岡ユズ、資格がありません》
「.....?」
謎の声は次々と彼女達の名前を呼んでいく。
《対象の身元を確認します...........》
《.........》
《.......》
「あ、あれ?黙っちゃった」
《.....シャーレの......先生...?》
しばらく無言の時間が続いていたが、やがて彼女達同様私を呼ぶ声が聞こえてきた。
しかし先程とは様子が違い、どこか迷いのある言い方にこの場にいる全員が疑問に思っていると
《.....エラーが発生しました》
《対象の身元を確認します....エラーが発生しました》
《対象の身元を確認します....エラーが発生しました》
《対象の身元を確認します....エラーが...》
「え、ちょ、ちょっと急にどうしちゃったの!?」
壊れた機械の様に同じ文面を繰り返し話し始めた謎の声を前に、流石のモモイ達の顔にも困惑や警戒の色が浮かんでくる。
「ここにいたらまずいんじゃ...一回外に出て....」
ミドリがそう呟いた時だった。
《.......対象の身元を確認、シャーレの先生。入室権限を与えます》
「入室権限って...この扉の事?」
突然正常に戻った声にまだ困惑している彼女達、謎の声はそんな彼女達を気にする事なく言葉を続ける
《才羽モモイ、才羽ミドリ、花岡ユズ、この3名をシャーレの先生の『生徒』として認定、同時に資格を付与します》
「良くわからないけど、とりあえず先に進めるって事だよね?なら早く行こう!」
「ほ、本当に進んでもいいの?危険なんじゃ...」
「許可が出たんだから大丈夫だって!...あれ、でもこの扉全然開かないんだけど」
モモイは目の前の扉に手をかけるが、押しても引いても扉はびくともしない。
(確かあの時の入室方法は.....!)
「3人とも、掴まって!」
「え?」
私はかつての記憶を思い返し、急いで彼女達を引き寄せる。
謎の声が発した入室という言葉、それがあの時と同じ意味ならその方法は....。
《下部の扉を開放します、落下にご注意ください》
「へ?下部の....って床が!?」
「お、落ちる!?」
「ひぅ!」
予備動作も無く足元の床が開かれた事で悲鳴をあげる3人。
落ちる直前彼女達を傍に抱き寄せると、私達はそのまま重力に従い穴の下へと落ちていった。