もう日も沈み辺りも暗くなった頃、ゲーム開発部の部室に足を踏み入れる5人の姿があった。
「疲れた〜!」
「か、帰ってこれた...」
「皆、本当にお疲れ様....」
私は部屋に入った途端息を切らし床に座り込んだ彼女達を見ながら廃墟での出来事を思い返す。
あれから気を失ったアリスを抱えて建物から出た私達だったが、おそらくあのサイレンに引き寄せられたのかこちらに目がけて尋常ではない数の警備ロボットが押し寄せて来た。
流石にこの状況で全てを倒し切るのは不可能だと判断した私達は逃げる事を決め、その後はアロナの割り出した逃走ルートに従い、かつ彼女達の頑張りもありロボット達の追跡を逃れる事に成功、晴れてミレニアムへと帰還する事が出来たのだった。
「.....意識の回復を確認」
「あ、目を覚ましたみたい!」
部屋に帰ってきてからしばらくすると、先程までソファで寝かされていたアリスが起き上がりキョロキョロと周りを見渡し始める。
彼女はモモイ、ミドリ、ユズと彼女達の顔を一人一人確かめる様に見つめると、最後に私の方へと視線を向けた。
「っ!」
だが私が彼女に見つめられた瞬間、あの建物内で感じたものと同じ”嫌な感覚”が私の全身を駆け巡った。
「先生、大丈夫ですか?」
「か、顔色が悪いみたいですけど...」
「....あはは、ごめんね。ちょっと疲れすぎたのかも」
私は彼女達に変な心配をかけないようあくまで平然と答えるよう努める。
彼女達の様子に変化が無い所を見るに、この不思議な感覚はやはり私だけが味わっているものらしい。
「うーん、とりあえずこの子の事はアリスって呼ぼうかな。これからの事を考えれば名前は絶対必要だしね」
「...その発言は本機に向けられたものと推定。『アリス』というのは本機の名称なのですか?」
「え、それって読み間違えだから本当ならAL-1Sちゃんって言うんじゃ無いの?...」
「それだと呼び辛いでしょ?だからAL-1Sじゃなくてアリス、どう気に入った?」
「『アリス』.....確認完了、本機はアリス」
「了承しちゃった...」
「い、いいのかな...?」
ミドリとユズの2人は不安そうに彼女を見ていたが、当のアリス本人はどこか嬉しそうな表情を浮かべている。
「よーし!これで部員も増えた事だし、第一段階クリア!明日から早速ミレニアムプライスに出すゲームを考えなきゃね!」
「ん?....え、ちょ、ちょっと待ってお姉ちゃん!今当たり前みたいにサラッと流したけど、部員も増えたって....もしかしてこの子の事!?」
「うん、そうだよ」
「そうだよって...じゃ、じゃあお姉ちゃんがあの場所で思いついた良い事って...」
「勿論!この子を私達の仲間にする事に決まってるじゃん!」
モモイは自信満々な笑みを浮かべてミドリに答える。
「仲間...ある物事に対して同じ志を持ち一緒に取り組む集団と推定」
「いや、この口調じゃ絶対疑われると思うんだけど...それに仲間にするって言ってもこの子はミレニアムの生徒じゃないし....」
「そこもちゃんと考えてるから大丈夫だって!ね、ユズもいいと思うでしょ?」
「わ、私はその....えっと...」
「お姉ちゃんが勝手にどんどん決めるからユズちゃんも困ってるじゃん...そういえば、先生の方はそろそろシャーレに戻らなくて大丈夫ですか?」
「えっ」
不意にミドリにそう言われ壁にかけられた時計を確認してみると、その針は既にかなり遅い時刻を指し示していた。
(ま、まずい!思ったより長居しすぎた...!)
シャーレに残してきた業務の事も焦る理由のひとつだが、これ以上戻るのが遅くなればリンちゃんから何を言われるかわからないというのが正直な所だ。
....かつて見たあの鬼の形相を浮かべる彼女の姿をつい思い出してしまった私は、自身の背中に冷や汗が流れ落ちるのを感じる。
「ご、ごめん今日は帰るね!....それじゃあ4人とも、また明日!」
「うん!またね、先生!」
「はい、また明日よろしくお願いします」
「ま、また明日...!」
「.....?」
その場で彼女達に別れを告げてから部屋を出た私はそれから大急ぎでシャーレを目指して走り出した。