今年最後の投稿となりました。
投稿頻度が遅く申し訳ありませんが、必ず完結させるつもりでいるので来年もよろしくお願いします。
アリスがミレニアムへと連れてこられて数日、私は今日も彼女達の部室へと向かっていた。
「あ、おはよう先生!」
扉を開けるとモモイの元気な声が聞こえてくる。
その後私が来た事に気がついた他の三人もそれぞれ挨拶を返してくれた。
「何かの作業中だったかな?」
彼女達の方を見てみると、モモイ、ミドリ、ユズの三人がソファに座るアリスに何かが書かれた紙を見せている所だった。
「ああこれ?今アリスの受け答えの練習をしてたの、今日ユウカの審査があるからその対策!」
「はい、選択肢を間違えれば即ゲームオーバーだとモモイは言ってました」
よく見れば紙には『何故ゲーム開発部に入ったのか』や『ここでの役割は』などの質問が書かれているようだ。
「成る程ね....それで、順調そう?」
「まあある程度は大丈夫だと思います...よほどイレギュラーな事を聞かれなければですが....」
「こ、これでもし駄目だったら、この部室が....」
「大丈夫だよユズ!絶対上手くいくって!これで認めてもらえば後はゲームを作るだけだから!」
「それが一番難しいと思うんだけど...」
緊張に震えるユズを安心させる様モモイは自信満々な態度でそう呟く。
私も何か手伝えればいいのだが、こればかりは彼女達自身がやらなければならない為、何も手を貸す事が出来ない
「ただユウカも甘く無いから今のうちにちゃんと対応出来る様にしておかないと....」
「そのユウカという人はそんなに厳しいんですか?」
「うん、うちの生徒会であるセミナーの会計を担当してるんだけど、その分予算とかにすっごく厳しいの!他の部活の皆から『冷酷な算術使い』って恐れられてるくらいなんだから」
「『冷酷な算術使い』...なんだか凄く強そうです!」
「それに怒ると物凄く怖いだから、この前怒った時なんてまるで妖怪みたいな....」
「誰が妖怪ですって?」
「え、それは....って、ゆ、ユウカ!?」
「「「!?」」」
「?」
いつの間にか扉の前には今の今まで話題に上がっていたユウカが腕を組んで立っていた。
彼女は先程のモモイの発言をバッチリ聞いていたのか、顔に青筋を立てて頬をピクピクと痙攣させている。
「仕事の合間を縫って来てみれば、まさかいきなりそんな呼ばれ方をするとは思わなかったわ」
「あ、ゆ、ユウカ...これはその...そ、そう!妖精!妖精みたいに綺麗な人だよってアリスに...」
「貴方がモモイの言ってた『冷酷な算術使い』の異名をもった人ですか?」
「あ、アリス!しーっ!」
「......」
アリスの無邪気な質問に更にユウカの機嫌が悪くなるが、彼女はここへ来た目的を思い出したのか深く溜息をつくとアリス達に向き直った。
「...まあその事は後で問い詰めるとして、貴方がこの部活に新しく入ったアリスちゃんね?」
「は、はい」
ジッとユウカに見つめられたアリスは喉を鳴らしつつ答える。
私達もそんな二人の姿を緊張しながら見守っていた。
「ふーん、まさか私がまだ把握してなかった子がいたなんて...」
「ほ、ほら!ユウカも忙しかったりで確認し忘れてたんだよ!」
「...確かにその可能性も否定できないわね、それにしても貴方達の部活に入る子がいるなんて....ねぇアリスちゃん、貴方は本当に自分の意思でここに来たの?脅されて仕方なくここにいるとかじゃないのかしら?」
「そんなのする訳ないでしょ!あ、アリス!学生証出して!」
「わかりました。アリスは『学生証』を持ち物から取り出した!」
アリスは言われるがままポケットから学生証を取り出すと、それを目の前に立つユウカに見せる。
「ね?ちゃんと学生証もあるんだから!アリスはちゃんとミレニアムの生徒だってこれでわかったでしょ!」
「.....まあ生徒名簿にもアリスちゃんの名前が載ってたのは確認済みだけれど....先生、先生はいつからアリスちゃんの事をお知りに?」
まさか私にも質問が飛んでくるとは思っておらず、いきなりの事に少し動揺してしまった。
だがここで私が怪しまれれば彼女達の苦労も水の泡....。
「...数日前、彼女達を訪ねた時だね。その時にはもうアリスが居たから彼女がここにやって来た瞬間はわからないけど」
「そうですか....あ、そういえば聞きたかったのですが、先生は数日前夜中にミレニアムタワーへ入られましたよね?」
「えっ」
「一応いつ入り口のドアが開いたかの履歴は見られるようになっているのでそれでこの前わかったんですが...一体その日は何を?」
ま、まさか廃墟から帰ってきた日の事だろうか...不味い、確かにわざわざそんな時間に私がタワー内へと訪れるのは不自然....ユウカは気づいていないが後ろに立つモモイ達も不安そうな顔でこちらを見守っている。
「そ、それは.....実はその日は三人と一緒に外にご飯を食べに行ってたんだ」
「ご飯?」
「うん、これから頑張って良いゲームを作ろうって事でその景気づけにと思ってね、つい楽しんじゃって帰ってくるのが遅くなっちゃったんだよ」
私は苦し紛れの言い訳をユウカに告げるが、それを聞いたユウカはクワッと顔を上げるとそこにはどこか怒った様な表情が浮かんでいた。
流石に駄目だったか...!
そう思い冷や汗を流していると、彼女は口を開き
「先生!そのお店の領収書はちゃんと保管してあるんですよね!」
「.....え?」
「まさかしてないんですか!?以前あれだけちゃんと保管しておくように言ったじゃないですか!経費で落とせなくなるんですから!」
「あ、あー...ご、ごめんユウカ...」
「全く先生はいつも....」
何故かこの場で私へのお説教が始まってしまったが、彼女を見る限りどうやら私の言い訳を信じてくれたらしい。
「ユウカ!それより審査するんじゃないの!」
「はっ!そ、そうだったわね。先生、この話はまた今度しますから逃げないでくださいね...コホンッ、ごめんなさいねアリスちゃん、それじゃあ質問の続きだけど....」
それからユウカによるアリスへの質問が再開された。
この部活で何を担当しているのか、何故この部活に入ろうと思ったのか等先程の練習通りのものもあればいくつか想定外の質問がされる事もあったが、少々怪しまれつつも何とか乗り切っていくアリス。
「....成る程、大体わかったわ」
「く、クエスト完了ですか?」
「クエスト?まあ少し気になる部分もあるけれど...そうね、最後に一つだけ聞かせてちょうだい」
「...!」
「....貴方、ゲームは好き?」
どんな言葉が飛び出るのか気を張り詰めていたアリスや私達、だが最後に彼女が口にした内容はとても単純なものだった。
一瞬ポカンとした顔を浮かべたアリスはそれを聞いて....
「はいっ、とっても大好きです!」
「........そう」
ユウカはアリスの返事を聞き目を瞑る。
「いいわ、アリスちゃんがゲーム開発部の部員だって信じてあげる。ただ、忘れてないわよね?貴方達がこのままこの部活を続けたいなら...」
「わ、わかってるよ!ミレニアムプライスで良い結果を残す、でしょ!」
「それがわかってるなら問題ないわ、それじゃあ私は仕事が残ってるからもう行くわね。まあ期待しないで待ってるわ」
そう言い残し彼女が部室を去っていった後、彼女達は緊張が解けたかの様にその場にへたり込んだ。
「よ、良かった〜!」
「これでようやく第一段階はクリアって事だよね...」
「た、倒れるかと思った...」
「先生に話が振られた時はもう終わったかと思ったけど....切り抜けられて良かった」
「はははっ...私もあんなに緊張したのは久しぶりだったよ」
お互い締め付けられた気分を解放するかのように息をつく中、アリスがおずおずと口を開いた。
「あ、アリスは上手く出来たのですか?」
「うん!完璧だったよ!アリスもお疲れ様!」
「ありがとうアリスちゃん」
「う、うん、アリスちゃんが上手く答えてくれたから....本当にありがとう」
「...!やりました!無事クエスト達成です!」
三人から感謝や労いの言葉をかけられたアリスは一段と良い笑顔を浮かべている。
「よーし、これで後はミレニアムプライスで受賞できるゲームを作るだけ!私達の冒険はこれからだよ!」
「お姉ちゃん、それ凄くフラグに聞こえるんだけど....」
「あ、あはは...」
「新しいクエストの受注ですね、アリスも頑張ります!」
次なる目標に向けて改めてやる気になった彼女達の声が、それから暫く部室に響き渡っていた。