「光よっ!!!!!」
少女の声と共に轟音が辺りに鳴り響く。
「や、やっぱりあの武器凄いね!」
「うん、流石エンジニア部の特製レールガン....」
「こ、こんなに周りをボロボロにしちゃっても大丈夫なのかな...?」
アリスが放つビームにより、こちらに向かって集まっていた多くのロボット兵は一瞬にして戦闘不能に陥っていく。
その衝撃の余波で周りの建物が崩れ瓦礫が増えていくが...そこは仕方ない。
『周囲の敵対勢力は確認できません』
「わかった....皆、今のうちに進むよ」
「おっけー!アリスも大丈夫?」
「問題ありません、沢山経験値も入ったのでアリスは余裕です!」
その返事に頷きつつ、安全が確保された道を急いで突き進んでいく。
...私達が何故この廃墟にいるのか、それは少し前に遡る。
「む〜!全然浮かばない〜!」
「おはよ...う、モモイ、大丈夫?」
私が溜まっていたシャーレの仕事を終わらせ2日ぶりに彼女達の部室を訪ねてみると、そこには頭を抱えソファの上で悶えているモモイ、そんな彼女を見守る二人の姿があった。
「あっ、先生...」
「先生おはようございます、今ミレニアムプライスに出すゲームのシナリオを考えてたんです」
「そうなんだ....ちなみに進捗は?」
「ぜ、全然進んでません...」
よく見ると彼女達の目元には薄らと隈が見えている、きっとここ最近は徹夜続きなのだろう。
「先生〜何か良い話無い〜?」
「うーん、私もここ数日はずっと仕事漬けだったから....」
朝起きて仕事をし、昼食にスティックパンを頬張りながら仕事をし、夜はコーヒーを飲みながら仕事をする....かつての世界でも同じ様な感じだったが、やはり何度経験しても辛いものは辛い。
「あれ、そういえばアリスは?」
よく見るとここにいる筈の少女の姿が無い。
「アリスなら今出かけてる。アリスはまだ来たばかりだから、私達と違って新鮮な視点でミレニアムを歩いてたら何か良い案が浮かぶかなーって」
「モモイ!ミドリ!ユズ!アリスはお出かけクエストから戻りました!」
そんな事をモモイから聞いていると、背後の扉が開き丁度彼女が帰ってきた。
「お、お帰りアリスちゃん...!」
「あ、先生!来ていたんですね!」
「おはようアリス、三人から聞いたけど冒険してたんだって?」
「はい!モモイから外を見てきて欲しいとクエストを頼まれたので、途中でウタハ先輩達に会って色々試供品と資料を貰いました!」
そう言って抱えていた袋からいくつもの道具やその説明書を取り出すアリス。
「あ、あはは、流石エンジニア部だね」
「でもアリスちゃんもすっかり受け入れられてるみたいで良かった...最初に廃墟で出会った時はどうなるかと思ったけど」
「........」
「お姉ちゃん?」
「それだ、それだよ!」
「ど、どうしたの....?」
突然立ち上がり声を上げたモモイに困惑するミドリとユズ。
「廃墟だよ!ほら、前に私達は何のためにそこに行ったのか思い出して?」
「前って確かG.Bibleを探しに...ってまさかお姉ちゃん、またあそこに行くつもりなんじゃ!?」
「そのまさかだよ、G.Bibleを今度こそ見つけに行こう!」
「で、でもあの時の警備のままだったら危ないよ?」
「そこは大丈夫!だって今度はアリスがいるんだからあのロボット達も楽勝だって」
「?新しいクエストですか?」
「そうだよ、今から行こう!先生も大丈夫?」
「私は.....」
私は彼女に尋ねられながら考え込む。
かつて私が元いた世界ではG.Bibleは確かに存在した、だが結局の所それは素晴らしいゲームを作る為の万能書では無かった。
勿論この世界では実際どうなっているのかはわからないが、その事を私が話せば何故それを知っているのかを当然聞かれるだろう...だからといってかつて私の身に起こった事を彼女達に話す事はまだ出来ない。
それとは別に、私には会いたい人物がいた。
”彼女”は一度私達と...この世界と対峙した事のある少女。
当時彼女によって操られていたアリスが自身の強い信念により心の中で彼女に打ち勝った事で、それ以降彼女が現れる事は無くなったのだが....
私にはその事で少し後悔している部分があった。
あの時はアリスを救う為とはいえ、最終的には彼女...ケイと敵対したまま別れる形となってしまった。
それに加えあの事件の時に立ち会ったリオ...彼女との出会い方もあまり良いとは言えないものだった。
確かにあの時彼女はアリスを排除しようとしたが、だからといってリオが完全な敵だというのはあり得ない。
あくまでこのキヴォトスを救う為、そう結論づけた彼女はその合理的な性格から殆ど人に相談する事が出来なかったのだろう。
もし、彼女とちゃんと話し合う事が出来ていたら...彼女の気持ちを少しでも理解する時間があったのなら、彼女達との結末も違ったものになっていたのかもしれない。
私にとって、彼女達もまた大切な”生徒”なのだから。
(....これももしかしたら”奴ら”からすれば驕っていると見られるのかもしれないけど)
「先生?」
「ああごめんね、少しぼうっとしちゃって。うん、それじゃあもう一度行ってみようか」
そんな経緯もありこの場にやって来た私達は、警備のロボットも全て撤退させ再び廃墟の中へと訪れていた。
「うぅ、何度来ても不思議な場所...」
まるで迷路の様な構造をしている内部を慎重に進んでいく彼女達。
(っ!まただ.....)
そんな四人の後ろを歩いていた私は、あの時も感じた不思議な感覚に襲われていた。
だがここで変に彼女達を心配させる訳にはいかない、私は平静を装い彼女達の後を追っていく。
「....」
「アリス、どうしたの?」
「...わかりません、ですが...何故かこちらに行かなければ....」
「ま、前も来たことあるって事?」
「.....記憶にはありませんが、この身体が反応しています...まるで何度もプレイしたことのあるゲームを遊んでいるみたいな...」
そのままアリスに連れられ先を進んでいくと、そこにあったのは一台のコンピューター。
【...Divi:Sion Systemへ、ようこそお越しくださいました。お探しの項目を入力してください】
「うわっ!びっくりした....ここにG.Bibleの事を検索すればいいのかな?」
「では入れてみますね」
そう言ってアリスがキーボードに触れ文字を打ち込んでいく。
だがエンターを押す前に画面に少しノイズが走り
【あなたはAL-1Sですか?】
「え、な、何これ?」
「これって、アリスちゃんの事?」
「.....?アリスはアリスですが...」
【....音声の認識完了、資格が確認できました。おかえりなさいませ、AL-1S】
「...あなたはアリスの事について知っているんですか?」
【.........】
アリスの問いにコンピューターは何も答えず、暫くお互い無言の時間が続く。
だがそれからコンピューターが動き出し、先程同様文字が表示される。
【...そこにいるのはシャーレの先生ですか?】
「えっ!?」
「な、何で先生の事を?」
【そこにいるのはシャーレの先生ですか?】
「ま、また同じ文面を...」
「.....うん、そうだよ」
何故私の事を聞かれたのかはわからないが、このまま誤魔化すのも良く無いだろう。
私がそう答えると再び沈黙したコンピューターだったが、それからノイズ混じりに文を画面に映し出した。
【.....緊急事態発生、電力限界に達しました。全てのデータは電源が落ちると同時に消失します。残り時間51秒、50秒....】
「え、ちょ、ちょっと待ってよ!まだG.Bibleの事を聞いてないのに!」
【あなたが求めているのはG.Bibleですか?〈YES/NO〉】
「い、イエス!」
【....検索完了、コード:遊戯、人間、理解、リファレンス、ライブラリ登録ナンバー193、廃棄対象データ第1号です】
「は、廃棄!?ダメダメダメ!」
【では提案します、そのデータを転送する為の保存媒体を接続してください】
「転送...?もしかしてG.Bibleがある場所を知ってるの!?」
【正確には、私の中にG.Bibleが存在します。ですが私のデータは後30秒で消失するでしょう。その為新しい保存媒体への移行を推奨します】
「そ、そんな事急に言われても!お姉ちゃん、何か持ってない?」
「え、えーと....な、何も無いよ!」
「そ、それじゃ折角のG.Bibleが....」
どうやらあの時とは違い、彼女はゲームガールズアドバンスSPを持ち込んでいないらしい。
(となるとこのままではこのデータは...”彼女”は....)
『発言、一つ考えがあります』
そんな時、不意に耳元からアロナの声が聞こえてきた。
『私の端末にそのデータを移し、後にコピーをとるのを提案します』
「アロナ、それは.....」
『否定、問題ありません。でなければ彼女達も困ってしまうのならそれが最善かと思われます』
確かに残り時間はもう少ない、それ以外の方法を試す余裕もないだろう。
「....わかった、お願いアロナ」
『肯定、お任せください』
【残り時間10秒...】
私は急いでケーブルを掴むとシッテムの箱へと接続する。
その後すぐにコンピューターの画面が暗くなり、それから何の反応も示さなくなってしまった。
「う、上手くいったの?」
「せ、先生、どう...?」
私は彼女達に聞こえない様にアロナに確認してみると、先程まで目を瞑っていたアロナはゆっくりとその目を開いていく。
『....転送完了、新しいデータがインストールされました』
「うん、上手くいったみたい」
「良かった〜、早速そのファイルを見てみないと!」
「でもまずはデータを移さないと...一度シャーレに戻ってもいいかな?」
「そうですね、じゃあ早く廃墟を出ましょうか」
「ま、またあのロボットが動き出さないうちに戻らないと...」
「クエスト完了ですね!」
予想外の出来事もあったが、目的も達成した私達はようやくその日廃墟を後にしたのだった。