「....どうぞ」
仄かに薄暗い一室にて、少女の声が小さく響いた。
全体的に白を基調としている服装を身に纏い、車椅子に座っているその少女は瞑っていた目を開けると同時に扉へと視線を飛ばす。
彼女の声に反応するかの様に部屋の扉が開かれると、そこからもう一人の少女が姿を現した。
先程の少女とは反対にこちらは髪や服装が殆ど黒で統一されており、彼女達が並ぶとその白と黒のコントラストがより一層目立つ。
「もう一度確認だけれど、今回の訪問は....」
「そう耳にタコができる程言っていただかなくともわかっていますよ、リオ....今回私達がこうして会っている記録はデータベース上には残らない、その対策もしてあります。あれ程口うるさく話されれば誰であろうと忘れる訳ないでしょう?」
「そこまで何度も言ってはいないわ、精々五回程度だった筈よ」
「あくまで物の例えですよ、やはり真面目すぎるというのもアレですね」
ヒマリは面白みの無いリオの対応に溜息を溢しながらも、気持ちを切り替え彼女を見据える。
そんな彼女に軽口を言われても特に気にしている様子の無いリオは、今回ここへ来た目的を果たす為に口を開いた。
「作戦の実行....問題無いわね?」
「ええ、『鏡』は作戦通り生徒会に押収させましたし、あの子達も想定通り襲撃を決行するそうです....貴方の方は?」
「こちらも問題ないわ、差押品保管所をC&Cが守る様に既に手配済みよ」
「そうですか.....はあ、まさか貴方と同じ目的の為に協力する日が来るとは思ってもみませんでした」
「その方が効率が良いと判断したまでよ、それ程今回の件は重大な事だもの」
「相変わらず可愛げの無い人ですね」
「今この場において愛想を振り撒くなんて必要のない事でしょう?」
「あら、つまりやろうと思えば愛想を振り撒けると言うのですか?普段から仏頂面の貴方が?」
「......」
「........」
何とも気まずい空気が部屋の中を満たしていくが、この様なやり取りをもう既に何度も行ってきた二人にとっては些細な事だった。
「準備が整っているのならこれ以上ここに用は無いわ」
「あら、もう帰るのですか?」
「用事は済んだもの、それとも何か疑問点や質問でもあるの?」
「いいえ、何も」
「そう、くれぐれも今回の事を外部に漏らさない事を徹底して頂戴、それと万が一問題が発生した時に備えて実行日までは常に警戒しておきなさい」
「ええわかっています、貴方の方こそ」
そんなやり取りを最後に、リオは部屋を後にした。
先程まで自身と話していた彼女が出て行った扉の方向を見つめながら、ヒマリは今回の目的である″少女″について考える。
「......アリス、あの少女は一体何者なのか....まあこの超天才清楚系病弱美少女ハッカーにかかれば既に結論は出ているのも同然ですが」
どこかそんな余裕のある態度を見せながら、少女はこれからの計画に思いを馳せるのだった。