偽りの道をもう一度   作:Mrふんどし

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おそらく残り数話でパヴァーヌ編第一章終了です。
ここからは全てside無しになると思います。

また、今回きりが良い場所が中々見つからなかったので今までで一番長い話になってしまいました。



『鏡』奪還作戦

まだ日も出ている明るい時間帯、ミレニアムタワー内にて

 

「光よっ!!!」

 

ドカァァァァァァァンッ!!!

 

「報告です!何者かに扉を破壊されました!」

 

「監視カメラの映像は!?」

 

「今確認します...あ、彼女が犯人の様です!」

 

「どこの誰が...ってアリスちゃん!?」

 

今日、ゲーム開発部含めた彼女達が差押品保管所へ襲撃しにくる。

その報告を受けていたユウカはオペレーションルームにて監視を続けていたのだが、あまりに直球すぎる方法を取ってきたアリスに彼女は驚かずにはいられなかった。

 

「まさか、セキュリティを突破する為に直接扉を破壊するなんて....アカネ、どう?」

 

『はい、問題ありませんよ。たった今目標を捕縛しましたので』

 

『うぅ、え、MPが足りません...』

 

通信越しに今回の協力者であるC&Cのアカネに尋ねるが、彼女は余裕の声色で返事をしてきた。

微かにだが漏れ聞こえているアリスの声を聞く限り、彼女を上手く無力化できたらしい。

 

『可愛らしい子ですね、うちの新しいエージェントとして育てたいくらいです。それで、この子はどうすれば?』

 

「そうね...ひとまず生徒会の反省部屋に閉じ込めておくわ」

 

『わかりました、それでは』

 

通信が終了した後、ユウカは一人溜息をついた。

 

「...いきなりで動揺はしたけど、まさかこれで終わりだなんてそんな甘くは無いわよね」

 

あのモモイ達の事だ、これで失敗したから諦めるとは到底考えられない。

しかも今回はゲーム開発部の四人だけではない、ヴェリタスや他の人員も協力しているとなると、他にも何か手を打ってくる筈....

 

「....とにかく最大限に警戒を続けて、一つの隙も見逃さないようにするのよ!」

 

 

 

 

 

『....セキュリティの取り替えが終わったのを確認したよ、これで私達の作戦が一つ完了したね』

 

『まだカメラの映像加工は続いて君達は映っていないから、今のうちに移動していいよ』

 

時刻が変わり、月明かりが辺りを照らし出している時間帯、そこにはミレニアムタワー内の廊下を移動する複数の人影があった。

 

「おっけー、じゃあそろそろ私達も動こうか」

 

「ふぅ...緊張してきた」

 

「だ、大丈夫、大丈夫...!」

 

モモイ、ミドリ、ユズの三人は報告を聞き顔を見合わせると一目散にエレベーター前へと向かう。

 

「えっと、次はエレベーターでそのまま上がれば良いんだよね...?」

 

「うん、私達が入れば警報が作動して各階にシャッターが降りる筈。そうすれば私達は自由に行動できるからもう勝ったも同然!」

 

「シャッターを開ける新しい指紋認証システムも私達にしか反応しない様にハッキング済みだし、万が一操作しようとすれば更に頑丈な壁が降りて閉じ込められる....うん、完璧だね」

 

「後は最後に合図がくれば....あ、きた!」

 

 

 

 

 

「どう?あの子達は見つけた?」

 

「いえ、どのカメラにも見当たりません」

 

(まさか本当に何もしないつもり?)

 

昼間はアリスによって破壊されたセキュリティの交換をしていたのだが、結局その間も特に何かが起こる事はなかった。

万が一の事を考え普段依頼しているエンジニア部とは別の組織からセキュリティを発注してはいるが、ここまで何も行動を起こさないとなると困惑の方が大きくなってくる。

 

「アカネ、他のメンバーからの報告は?」

 

「残念ながらカリン達からも特に報告はありませんね、もしかしたら諦めたのかも...」

 

そうアカネが呟こうとした時

 

「あっ!カメラに反応がありました!」

 

「誰!急いで確認して!」

 

突然カメラに何者かが映ったと報告があり、すぐさま画面を覗き込むユウカ。

 

「これは....しゃ、シャーレの先生の様です!」

 

「嘘でしょ!?」

 

だがそこに映っていた思いもよらない人物に、思わず声をうわずらせてしまう。

 

ユウカ達がその監視映像を見つめる中、画面に映っていた先生は不意にカメラの方に視線を向け始める。

そのままゆっくりとカメラへ腕を伸ばし手を握る様な動作をしたかと思えば、突然画面に砂嵐が流れ出した。

 

「どうなってるの!」

 

「わ、わかりません」

 

急いで別の角度に設置されたカメラを確認するが、先生はまたもや先程と同じ動作を行うと、再び画面が乱れそのカメラも見えなくなってしまった。

 

「...アカネ!今すぐ先生を確保しに行くわよ、先生が何かしているのは明白だし、もしこれから戦闘が起こるのなら先生の安全も確保する必要があるわ」

 

「わかりました、では向かいましょうか」

 

「貴方達、何かあったらすぐに連絡して、いいわね?」

 

どんな方法を使っているかはわからないが、あの人が何らかの手段を用いてカメラをハッキングしているのは間違いない。

彼女達の姿が見えない事は気になるが、今は先生の身柄を確保する方が最優先だ。

 

そうしてユウカとアカネは急いでオペレーションルームを飛び出した。

 

 

 

 

 

『次、五秒後です』

 

私は耳元から聞こえてくるアロナの指示に従って、カメラに向けて手を動かす。

 

『次はあちらのカメラに、十五秒後です』

 

これで今私が映っているカメラは確認できなくなった筈だ。

私は一台一台カメラをハッキング....している訳ではない、ただタイミングに合わせて”それらしい動き”をしているだけ。

 

カメラが映らなくなるのは、予めその時間にハッキングされる様マキ達によってプログラムされていたからにすぎない。

その時間に合わせて私が動く事で、あたかも私が何かをしてカメラをハッキングしていると思わせる事ができる、そうして私の元に誰かを向かわせ人員を分断するというのが今回私に与えられた役割だった。

 

『次は....』

 

「先生!」 

 

そのまま次のカメラの元へと移動しようとした瞬間、背後から聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

「先生?申し訳ありませんが事情が事情ですので、私達と共に来ていただきます」

 

「先生!今すぐハッキングを止めてください、それとモモイ達はどこにいるんですか?」

 

そこにいたのはC&Cのアカネとセミナーのユウカ...まさかユウカまで来るとは予想外だったが、何はともあれ作戦が上手くいったのは間違いない。

 

私は降参し両手を上げる瞬間、耳元のインカムに付けられたボタンを押し込んだ。

 

(これでモモイ達に合図がいった筈...)

 

「さあ先生、大人しく着いてきてください。話は後でたっぷり聞きますので」

 

【侵入者を発見、緊急時の対応に従いセミナー専用フロアの各セクションを閉鎖します】

 

ガシャンッ

 

「え?あれっ!?」

 

「シャッター!?」

 

「ちょ、ちょっと!どういうことよ!」

 

二人が私を捕まえようと近づいた瞬間、この場にいる三人を取り囲む様にシャッターが降り始めた。

 

これはつまり先程私の合図が届き、彼女達がエレベーターに上手く侵入できたという事...。

私に出来るのはここまで、後は彼女達を信じるしかない。

私は狼狽える二人の背後で作戦の成功を祈って目を閉じた。

 

 

 

 

 

「......」

 

場所を移しミレニアム第三校舎屋上、そこにはC&Cのカリンが照準を覗きながら静かに待機していた。

ゲーム開発部の襲撃、彼女達が目的とする場所は差押品保管所...そこにたどり着くには必ず生徒会専用フロアの廊下を通る必要がある。

 

カリンは万が一彼女達がセキュリティを突破してきた時に備え屋上に張り込んでいたのだが、監視カメラを確認している筈のアカネから一向に通信が来ない。

彼女達はまだ現れていないのか?それとも予想外の事が起こって対応しきれていないのか?...どちらにせよ情報が確定するまでここを動くわけにはいかない。

 

そう考えていると、ようやく耳元の通信機が作動した。

 

「こちらコールサイン02、状況は....っ!」

 

だが通信を返そうとしたカリンは咄嗟に持っていたスナイパーライフルを構えると、廊下ではない別の方向へ銃弾を発射した。

 

ドォォォォォォォォン!!!

 

カリンが撃った銃弾は見事こちらに飛んできていた砲弾に命中し、その弾のぶつかり合いにより空中で爆発が起こる。

 

「くっ!視界が...!」

 

だが飛んできた砲弾の中身には大量の煙が詰められていたらしく、先程まで確認できていたミレニアムタワーの廊下までの視界が煙で塞がれてしまった。

 

「これは...迫撃砲....!」

 

「正解だよ」

 

「誰っ!」

 

煙が辺りに充満する中、彼女の背後から突然声がかけられる。

カリンが警戒しながら振り返るとそこには一人の少女、そして何故か足の様なものが生えた椅子が居た。

 

「...成る程、どうやって彼女達がここまでの計画を実行出来たのか疑問だったが、やはりエンジニア部が関与してたのか」

 

「ご名答、悪いが君にはここで大人しくしていてもらう」

 

そう話すウタハに銃を構えようとするカリンだったが、その瞬間を狙ってウタハの隣に居た椅子が発泡を開始した。

 

「何なんだその椅子は!」

 

「知らないのかい?エンジニア部が作り出した最新の二足歩行型戦闘用の椅子、『雷ちゃん』さ」

 

「また変なものを....」

 

「おや、電ちゃんの魅力が伝わらないのは残念だが...それなら後でたっぷりと教えてあげるとしよう。ほら、そんなに私にばかり集中していいのかな?」

 

「なっ!」

 

ドォォォォォォォォン!!!

 

突然現れたウタハの攻撃に気を取られ、すっかり迫撃砲の存在が頭から離れていたカリンは急いで銃口を向けようとするが一歩遅く、そのまま近くに落ちた砲弾の衝撃が彼女に襲いかかった。

 

「くっ!」

 

「さあ、まだまだ時間はある。楽しもうじゃないか」

 

(まさか本当に彼女がこの屋上に居たとは驚いた....)

 

ウタハは目の前のカリンと戦闘を続けながら、先生から伝えられた作戦の内容を思い出していた。

 

彼女はこの辺りから狙撃する可能性が高い、だから予め待機してモモイ達が狙われる前に足止めをしてほしい...確かに考えれば可能性としては高いものだったが、それでも確証が取れる程のものではない。

 

それに不思議とカリン以外のC&Cの動きもどこか把握している素振りを見せていた様な気もする。

 

(...まあ、今はこちらに集中した方がいいだろうね)

 

ウタハは思考を中断し、目の前の彼女との戦闘を再開した。

 

 

 

 

 

「ここを抜ければもう少しで着く筈!」

 

「はぁ...はぁ...!」

 

シャッターを自在に開けていくモモイ達三人は順調に差押品保管所への道を進んでいた。

後はこのまま部屋に入って『鏡』を取り返すだけ....

 

「待って!」

 

その時、突然のミドリの静止に驚き動きを止める二人。

 

「わっ!ど、どうしたのさ?」

 

「誰かいる...」

 

「あ、やっと三人とも来てくれた!」

 

ミドリがそう呟いた瞬間、彼女達の前から一人の少女が姿を現した。

 

「あ、アスナ先輩!?」

 

「何でここに...!」

 

「ん〜何となく?ここにいればあなた達に会えるかな〜って」

 

アスナはそう言いながら三人を見ると、ニッコリと笑顔を浮かべながら銃を構え出した。

 

「じゃ、早速始めちゃおっか!私、戦うの大好きなんだ!」

 

「お姉ちゃん!ユズちゃん!」

 

「うん!」

 

「....っ!」

 

アスナがこちらに銃口を向けたと同時に、彼女達は銃を取り出して三方向に別れ走り出す。

 

「おっ、別々の方向から狙って撃つ感じ?良いじゃん良いじゃん!」

 

それを見たアスナはより一層楽しそうに笑う。

三人はアスナの予想通り、モモイは前から、ミドリは右から、ユズは左から彼女目がけて銃弾を撃ち込んでいった。

 

「あはっ!」

 

「嘘っ!?」

 

だがアスナはその場で寝転がる様に勢いよく姿勢を崩す事で、三人がそれぞれ撃ち込んだ銃弾を全て避けてしまった。

 

「うんうん!中々良い動きだね!」

 

「そ、そんな事ってある!?」

 

「これがC&C....」

 

「じゃあ今度はこっちからいくよー!」

 

「うわっ!」

 

避けた反動で床を滑る様に移動したアスナがすぐさま体勢を戻すと、彼女達に振り返り今度は三人に向けて発泡を始める。

 

「ぐっ...つ、強い!」

 

「うぅ....」

 

その後も三人と一人の戦闘は続いていくが、決定的なダメージを与えられないまま、徐々にモモイ達が追い込まれていく。

 

「っと、どうするの?降参しちゃう?」

 

「.....!二人とも!」

 

このまま戦闘を続ければ彼女達は負けるだろうとアスナも思い、これ以上の被害を出さない為にも三人に降参を促す。

 

だがそんな状態にも関わらず、モモイは二人に視線を送ると先程と同じように三方向から攻撃を仕掛けようと動き出した。

 

「うーん、さっきと同じ?それなら避けられ...きゃあ!」

 

アスナも再び彼女達の攻撃を避けようと身体を動か...そうとして、いきなり自身の背中に衝撃が走り声を上げた。

 

「お待たせ、モモ!」

 

「すみません!少々遅れてしまいました!」

 

アスナの背後...先程モモイ達がやってきた廊下から現れたのは、ヴェリタスのマキとエンジニア部のコトリだった。

 

「慎重に移動し過ぎていたら思いの外時間がかかってしまいまして!」

 

「正直このよくわからない武器を運んでたせいだと思うけど...」

 

「何を言うんですか!これはエンジニア部が総力を上げて作った特製の武器です!機能としては対象をレーダーで自動的に補足し....」

 

そう言う二人の手や腰にはよくわからない形を模した銃がいくつもぶら下げられていた。

 

「あっはは〜流石に五人相手は厳しいかもねー....でも、うん!楽しそう!」

 

「アカネ先輩とユウカ先輩は先生が、カリン先輩はウタハ先輩とヒビキが何とか止めてくれてます!後はここを突破すれば差押品保管所です!」

 

「わかった!よーし、みんなもう少し頑張ろう!」

 

 

 

 

 

「指紋認証は!?」

 

「...駄目です、おそらく彼女達のものに変更されています」

 

「まさかここまで本気だなんて....捕まえたら絶対お説教してやるんだから!」

 

アカネとユウカは焦っていた。

先程からカリンへの通信を試みているが、彼女は何者かの攻撃をくらった様であれから応答が無い。

アスナ先輩は...いつもどこにいるのかわからないが、もし彼女達と対峙しているならおそらく問題ない、三人程度なら彼女一人でも負ける事はないだろう。

 

「とにかくこのシャッターを何とかしなければいけませんね....」

 

いや、正確には自身が持っている爆弾を使えばこの程度の障壁であれば破壊は可能だ。

 

(ですが、この狭い中で使えば先生の身が....)

 

「ユウカ、ひとまず監視カメラの映像から状況を把握しましょう」

 

「そうね...ねぇ聞こえる?今そっちのカメラはどうなって....」

 

ピピッ—

 

「えっ?」

 

「こ、これは...!」

 

ユウカがオペレーションルームの人員と通信しようとした瞬間、突然辺りの電気が消え自分達を暗闇が包み込んだ。

 

「停電!?」

 

「電力遮断...まさかここまでするとは」

 

「駄目ね、今の遮断のせいで通信が繋がらない。これじゃ他の階の状況を確認できないわ」

 

(....わざわざ電力を遮断してまでしたい事...それはきっと....)

 

 

 

 

 

「装填完了です!発射っ!」

 

差押品保管所前の廊下、そこには先程よりも激しい銃声が鳴り響いていた。

 

「凄い凄い!何その不思議な銃!」

 

「わわっ!コトリちゃん!こっちにも当たっちゃうから!」

 

「うぅ、やっぱり制御が難しいです...!」

 

マキとコトリが加わり五対一となった戦況、流石のアスナも一筋縄には行かない様で彼女は徐々に追い込まれていた。

だがそれでも彼女はC&Cのエージェント、モモイ達も決定的なダメージを追わせる事が出来ないまま時間だけが過ぎていく。

 

「どうしよう、このままじゃ先に進めない!」

 

「他の先輩達もいつまで足止め出来るかわからないのに....」

 

これ以上続ければアスナが倒れる前に自分達の体力が尽きてしまう、現に前から戦っていたモモイ達三人の動きは先程と比べて確実に落ちていた。

 

「ふふっ、もう限界かな?」

 

「くっ!本当にデタラメな強さ....」

 

追い込まれている筈のアスナは笑顔を絶やさずに五人を見つめている。

 

「流石に私も疲れてきちゃったから、そろそろ...」

 

最早絶体絶命、五人が全員そう思っていた時

 

「急いで離れてください!」

 

突然ここにはいない筈の少女声が聞こえてきた。

 

「っ!」

 

その声を受け反射的に壁際まで飛び込んだ五人、だがアスナはその声の主を特定しようと思考していた分一人反応が遅れてしまった。

 

「光よっ!!!!」

 

その言葉が飛び出した瞬間、廊下の先から眩い光を放つビームが勢いよく飛んでくる。

 

ドカァァァァァァァァァァァン!!!

 

先程の攻撃とは比べ物にならない程の威力、そのビームが通過した後の床には、攻撃を避け切る事が出来なかったアスナの姿があった。

 

「あ、アリス!どうしてここに!?」

 

「差押品保管所に向かう筈じゃ....」

 

「....アリスはこれまで沢山のゲームをプレイしてきました」

 

「そして思ったんです。どのゲームの主人公も、決して仲間のことを諦めたりしませんでした。だからアリスもモモイ達を見捨てません!」

 

「アリスちゃん....」

 

「ありがとうアリス、よし!目的地まで後少し、みんな行こう!」

 

「あ、アスナ先輩は....!」

 

ユズの言葉にハッとしたモモイ達はつい先程まで戦っていた彼女の方を見つめる。

 

「あははっ!凄く痛い!全然動けない!」

 

「ほ、本当に痛がってるのあれ?」

 

「あの攻撃を受けてまだ元気そうだなんて....」

 

明らかに全く痛がっている素振りを見せないアスナだったが、動けないのは本当の様で銃も手放し大の字で床に転がってしまっている。

 

「ここの見張りは私達にお任せください!」

 

「アスナ先輩は私達が見ておくから、モモ達は先を急いで!」

 

「うん、わかった!ありがとう二人とも!」

 

二人が言うように倒れたアスナの監視は彼女達に任せ、三人はいよいよ目の前まで迫った差押品保管所へ向かって最後の気力を振り絞り走り出した。

 

 

 

 

 

「....アスナ先輩が負けた様です」

 

「えっまさかそんな!」

 

未だにシャッターで閉じ込められいるアカネとユウカの二人。

そんな中、突然アスナから送られてきたメッセージを聞いたアカネは溜息を溢しながらそう告げた。

 

「どうやら捕らえていたアリスさんの攻撃でやられてしまったようです。おそらく先程の電力遮断の時に脱出したのでしょう」

 

そんな彼女達の二人と傍に居た大人は、一人思考を続けていた。

 

(これで彼女達は差押品保管所についた筈....上手くいくかは正直わからなかったけど、ここが私の知る世界と殆ど変わらない事が幸いしたみたいだ)

 

今回の作戦は私がかつて体験した過去の記憶を参考に組み立てたものだった。

正直あまり過去の彼女達の事を軸に考えるやり方は気が進まないのだが、作戦を限りなく成功に近づける為には参考にせざるを得なかった。

 

当然それだけに頼るなんて事はせず、短い時間で可能な限り彼女達と作戦を練ってはいたがひとまず上手く事が運びそうで何よりだ。

 

(後は、G.Bibleの中身次第だけど.....)

 

「どうするの!このままじゃ...」

 

まさか自分達がここまで翻弄され、C&Cも負けるとは思ってもみなかったユウカは焦った様子でアカネに尋ねる。

 

「.....問題ありません」

 

だがそんな彼女とは反対に、アカネはどこか妙に落ち着きのある態度を見せていた。

 

「ここまでの事は....まあ限りなく最悪に近い形にはなってしまいましたが、それでもまだギリギリ″予想の範囲内”です」

 

「どう言う事?」

 

アカネは疑問を浮かべるユウカや、自身の様子を不思議そうに見ていた先生の方に振り向くと、微笑みながら口を開いた。

 

「彼女達の言葉で表すのなら.....最奥に隠されたお宝は″門番”が守ると決まっていますから」

 

 

 

 

 

「よし、ここを曲がればもう目の前!」

 

「ついにお宝ゲットですね!」

 

「よ、ようやくここまで来れた....」

 

「早く行こう!」

 

最後の曲がり角を走り抜け、残すは差押品保管所までの直線を進むのみ。

 

「っ!お姉ちゃん危ない!」

 

「へっ?」

 

その事にすっかり油断しきっていたモモイ達だったが、駆け出そうとした直前でミドリによって一番前を走っていたモモイが腕を掴まれ引き戻される。

瞬間、先程までモモイが立っていた場所目がけて何発もの銃弾が浴びせられた。

 

「うわっ!」

 

「ま、まだ誰か居たの!?」

 

いきなりの攻撃に驚き声を上げる彼女達、それから四人は一斉にこちらを撃ってきたであろう人物がいる目の前の廊下の先に視線を向けた。

 

そこは暗く影になっている差押品保管所の扉の前....その影の中に立っていたのは一人の少女。

 

「よお、遅かったじゃねえか。待ちくたびれちまったよ」

 

窓から差し込む光によって、その全身が徐々に鮮明になってくる。

 

メイド服にスカジャンを羽織るという格好、彼女がこちらに近づいてくる度に銃に繋がれた鎖が床に引き摺られる事でジャラジャラという音が大きくなってくる。

 

「あ、あぁそんな....」

 

「まさかこの人...!」

 

「......っ!」

 

その少女の正体に気がついたアリス以外の三人は、まさかの事態に小さく震え出した。

 

「あー、一応自己紹介でもしておくか?」

 

そんな四人を前にして、彼女は軽く頭を押さえてから告げた。

 

 

「C&C所属コールサインダブルオー、美甘ネルだ....よろしくな」

 

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