偽りの道をもう一度   作:Mrふんどし

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始まりの知らせ

空に広がる雲ひとつない綺麗な青空、そこに浮かぶ太陽から放たれる明るい日差しがある室内を燦々と照らしていた。

 

大きな窓から光が漏れ床やテーブルを眩しく照らす中

 

「んん.....!」

 

部屋の中にそんな小さな呻き声が微かに響いた。

目の前に山....とまではいかないが、それなりの量の書類の束が鎮座しているのを見ながら私は椅子に背を預け両腕を上に上げ凝り固まった背筋を伸ばす。

〈全く...いつになればこの紙束は無くなるのですか、もう少し計画的に終わらせた方がいいのでは?〉

 

そんな私を見て溜息をこぼしながらそう指摘する少女の声が、書類と同じくデスクの上に置かれた端末から聞こえてきた。

 

「あはは、返す言葉がないね...」

 

〈笑い事ではありませんよ。あと、一応頼まれていた箇所の確認作業は終わりました〉

 

「そっか、ありがとうケイ」

 

少女の言葉に苦笑いを浮かべていた私は端末の中から覗き込んでいる″ケイ″に感謝を告げる。

ゲーム開発部の少女達と共に忍び込んだとある廃墟、そこでのやり取りの末に最終的にシッテムの箱で目を覚ました彼女と関わる様になってから暫くが経過していた。

 

すっかり警戒心もなしに遠慮なく言葉を交わす二人....既に一度″かつての世界″で面識がある者同士打ち解けるのに時間がかからなかったのは当然と言えるだろう。

 

〈これまで貴方を見てきて常々思っていましたが、シャーレの労働環境は一体どうなっているんですか。この仕事量を一人でこなすのは理解に苦しみます〉

 

「うーん、でもアロナや他の子達も手伝ってくれてるから....」

 

〈それでも一部でしょう?はぁ、もう何度この書類を見たのかさえも曖昧になってきましたよ。....まあ、仕事が終わらないのは貴方のお人好しがすぎるというのもあるでしょうけどね〉

 

そう言ってケイは徐に手を動かしモモトークを開くと、その中に送られてきた一部の連絡を淡々と読み上げていく。

 

『先生、お忙しい所すみません。今度の会議に参加して欲しくて』

 

〈この時も仕事を途中で抜け出しアビドスに向かいましたよね?〉

 

「いや、これはアビドスの借金返済の為の会議だから...」

 

『先生、今度お買い物に付き合って貰えませんか?沢山買いたいものがありまして♪』

 

〈確か作戦会議には糖分が必要と言って大量のお菓子を買ってましたね、それも貴方の奢りで〉

 

「そ、その時は物資の補給もあったから.....」

 

『ん、先生今度またサイクリングに行こう。綺麗な場所見つけたから』

 

〈これに関してはどんな言い訳を?〉

 

「......」

 

気まずい空気に私は目を逸らすことしかできない。

 

〈他にも風紀委員の要請や便利屋組織からの呼び出し、しまいにはゲームの誘いまで。確かに仕事と言えなくも無いものはありますが、それとは関係のない事まで引き受けてしまうせいで今の惨状になっているのでは?〉

 

「でも生徒のお願いだし...それに最後の連絡はケイもアリスがいるからって乗り気だった様な....」

 

〈......それとこれとは別です、とにかく!私が言いたいのは引き受ける仕事の選別をした方がいいという事です。今の私はこの端末の中にいる以上貴方が足代わりです。もし貴方が倒れでもしたらアリスの元へ向かうことも出来ないんですから〉

 

「もしかして、心配してくれてる?」

 

〈どこをどう読み取ればそんな発想になるのですか!〉

 

ケイの鋭いツッコミを受け、私は小さく笑いながらやがて息をつくと

 

「でも良かった」

 

〈何がですか?〉

 

「ケイがここでの生活にすっかり慣れたみたいだから」

 

〈.....まあ初めは慣れない事もありましたが、彼女が色々と教えてくれたので〉

 

ケイはそう答えながら自身の横にいる少女を見つめる。

そこには白い滑らかな髪が机の上から垂れ下がり静かに寝息を立てているアロナ、彼女はケイがシッテムの箱で過ごす様になってから彼女の情報を端末に馴染ませる作業を定期的にほぼ毎日行っているらしく、そのせいか最近はよく眠る姿を見かける事が多くなっていた。

 

〈本当に不思議です、まさか私がここで貴方の仕事を補佐する役割を持つことになるとは。正直今でも夢なのではと思う時もあります....それに関しては″貴方″も同じでしょうけれど〉

 

「うん....そうだね」

 

二人は少しの間何も言わずに窓越しに″この世界″の空を見つめていた。

その眼差しの奥で二人が何を思っているのか、それは誰にもわからない。

 

「.....っそうだ、何か困ってる事とかはない?今更聞くのも変かもしれないけど」

 

〈本当に今更ですね、まあ自由に動けない事以外に特には......ああ、強いて言えば彼女が時々私にお姉ちゃんと呼ばせようとしてくるにはどうにかしてほしいですね〉

 

「え、アロナがそんな事を?」

 

〈あの無表情な顔のまま詰め寄ってきた時は流石の私でも少しばかり恐怖を覚えましたよ〉

 

きっと″後輩″が出来たのが嬉しかったのだろう。

最初の頃は少し互いを警戒する素振りをよく見かけており少し心配していたが、彼女の話を聞く限り今では仲良くやれているみたいだ。

 

それから暫くの間彼女の話を聞いていた時だった。

 

ピロンっと不意にメールが届いた事を知らせる通知音が聞こえてきた。

 

〈連絡のようですよ、差出人は....〉

 

ケイがそう告げると同時に届いたメールを確認する。

そしてそこに書かれていた内容と差出人を見た瞬間、私は椅子から立ち上がりシッテムの箱を持って出かける準備を始めた。

 

〈向かうんですか?〉

 

「うん、暫く開けないからもしアロナが起きたら伝えておいて欲しい」

 

〈はぁ、仕方ありません。どうぞご自由に〉

 

そうして画面が暗くなった事を確認した私はシッテムの箱を服の内側に仕舞うと、コートを羽織り目的の場所....トリニティを目指して部屋を飛び出していった。

 

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