偽りの道をもう一度   作:Mrふんどし

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始まりの知らせ ケイside

本当に不思議な大人です。

 

 

 

私が”この世界”で目を覚ましてから暫くが経過しました。

 

廃墟で意識を戻した後この不可思議な端末内に移ってからは、元からここに居たアロナという少女と共に先生の仕事を補佐し、たまにアリス達の元へと向かう先生についていき彼女を見守る日々.....

 

端末内にいる以上移動に制限があったり、もう少しアリスの元に出向いて欲しいといった細かい不満はありますが、それ以外に関しては特に問題無く過ごせていました。

 

そうした現状からかつて対峙した大人...先生とは必然的に多く関わる様になるのは当然なのですが、そんな中でひとつ思った事があります。

 

「ふぅ.....」

 

〈何度目の溜息ですか。疲れているのならいい加減休むべきだと言っているでしょう〉

 

「ああごめんね...でももう少しでキリの良い所まで終わるから」

 

苦笑いを浮かべながらまた手元の書類を手繰り寄せる先生。

 

...そう、それはこのシャーレの労働環境について。

 

確かに私が以前の世界でアリスを通して見ていた時から忙しいのだろうというのは感じていましたが、改めて目の当たりにするとその量は想像を遥かに超えていました。

 

各学園による装備や補給物資追加の許可、そのやり取りに関する見積もりの確認書類、各機関から届く要望書へのサイン、等々...それらが毎日山の様に届き、日々更新されていきます。

 

まあ届くもの全てにおいて重要度が高いというわけではなく、中には個人的な願いレベルのものまで含まれているのでそれらを除けばまだマシにはなるのですが...先生はそれをしません。

 

というのもどんな内容であろうと必ず時間をかけて読み込み返事を返すというのを徹底しているので、その分時間がかかってしまっているのです。

尚且つ仕事は書類作業で終わる訳もなくシャーレに他から要請があれば外へ出向く事も多々あります、ただしこれに関しては生徒による呼び出しが大半。

しかも肝心のその内容は....

 

 

『ちょっと!今日は会議なんじゃなかったの?』

 

『まあまあ、久しぶりに先生が来たくださったんですし、少し楽しむのも悪く無いと思いますよ♪』

 

『ノノミちゃんの言う通りかもね〜。ほら先生、座って座って〜』

 

『ん、先生こっち空いてる』

 

『あはは....すみません先生、折角来ていただいたのに...』

 

会議という話がいつの間にかお菓子パーティーへ変わっていたり

 

『先生、サイクリングしよう』

 

『今日は本当に軽めだからすぐ終わる』

 

『距離?大丈夫、ほんの150キロくらいだから』

 

ペダルを漕ぎ続け帰ってくる頃にはソファにうつ伏せで倒れていたり

 

『ふふっ、来てくれて感謝するわ先生。実はこれから重大な話し合いをする所で、先生からも是非意見が欲しいと思ったのよ』

 

『アルちゃん、格好つけてるけど要は依頼が入らないからそろそろ家賃がやばいって事でしょ?』

 

『しーっ!そ、それは言っちゃダメよ!?』

 

何故か家賃の問題を一日中考えることになったり....改めて考えても全く仕事と関係ないものばかりですね。

先生も先生でそれら全てに対し素直に応じるので時間が足りなくなるのも当然でしょうね。

 

 

〈とにかく!私が言いたいのは引き受ける仕事の選別をした方がいいという事です。今の私はこの端末の中にいる以上貴方が足代わりです。もし貴方が倒れでもしたらアリスの元へ向かうことも出来ないんですから〉

 

「もしかして、心配してくれてる?」

 

〈どこをどう読み取ればそんな発想になるのですか!〉

 

呑気な態度の先生に釘を刺すつもりでそう伝えますが、当の本人は苦笑いを浮かべるのみ。

先生が自ら動きすぎるというのは現在私の隣で眠っているアロナからも聞いてはいましたが、ここ暫くの間でそれがよく理解できました。

 

 

『貴方と私が何故この世界に存在するのかはわかりません....ですが貴方はもう同じ過ちを繰り返さない為、そして私は彼女を...アリスを今度こそ守る為、お互い最終的な目的を果たすのに協力し合える筈です』

 

『力を貸してください.....”先生”』

 

『...勿論。よろしく、ケイ』

 

 

(全く...あの時そう約束したんですから...貴方に何かあったら困るのは私もなんですよ)

 

一体何の因果なのか、こうしてまたあの時の大人と再開し、共に時間を過ごしているというのはまさに奇跡と呼べる現象でしょう。

 

”自分かなりたい存在は、自分自身が決めて良い”

 

(私がそれを受け入れて良い立場なのかはわかりませんが....今は私の出来ることをするまでです)

 

あの純粋な”彼女”には、何の縛りもなくただ笑っていて欲しい。

それを叶える為ならば、私はどんな事でも受け入れましょう。

 

それが、元”鍵”である私の....

 

(...いえ、その考えはきっとアリスに叱られてしまいますね)

 

 

それが私の...”ケイ”としての願いなのですから。

 

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