「こちらです、どうぞ」
白い制服を身に纏った少女はそう告げながら私の目の前をゆっくりと歩いていき、そんな彼女の言葉に私は頷きながら素直に後ろを着いていく.....
少し前に連絡を受けてトリニティへとやって来ていた私は、現在ティーパーティーに所属する生徒に連れられてナギサ達の元へと向かっていた。
『お忙しい所、突然のご連絡となってしまい申し訳ありません。実は先生に折り入ってご相談したい事がありまして...もしよろしければこれからトリニティまでお越しいただけないでしょうか?』
先程シャーレへと送られてきた内容を思い返しながら廊下を歩く事数分、見覚えのある扉の前で立ち止まった少女はこちらに振り返り頭を下げる。
「中でナギサ様がお待ちです、それでは私はこれで失礼いたします」
「うん、案内ありがとうね」
私は彼女に感謝を伝えつつ、静かに息をつき数度ノックしてから扉に手をかける。
「ようこそお越しくださいました、先生」
「あっ、先生やっほー☆待ってたよ!」
そして中へと足を踏み入れた瞬間、こちらの存在に気がついたナギサとミカの歓迎の声が聞こえてきた。
「最近のシャーレの活躍は存じております、相変わらずお変わりない様で何よりです」
「二人も元気そうで良かったよ.....ところで今日セイアは?」
「セイアさんなら少し用事があるとの事で遅れるそうです、先に始めておいて構わないと仰っていたので」
「ほら先生、折角来たんだし座って座って!」
一瞬彼女の姿が無い事に不安を覚えた私は恐る恐る二人に尋ねるが、ナギサからの返答にこっそりと胸を撫で下ろす。
そうして言われるがまま空いていた席につくと、ナギサがティーカップを手に持ちながら口を開いた。
「まずは改めまして、本日はお忙しい中来ていただいて感謝します。本来であれば事前に連絡を差し上げるべきだったのですが...ここ最近は少々忙しいのもありその時間が中々取れなかったもので」
「もう、だからあの時私が代わりに連絡しておこうか?って言ったのに。ナギちゃんが頑なに自分で送るからいいって断るからじゃん」
「ミカさんに任せるとどんな文章を送るかわからないので駄目です」
「ナギちゃん酷い!」
「大丈夫、丁度手が空いていた所だったからね」
つい笑みを浮かべながら私がそう答えると、ナギサはひとつ溜息をついてカップに再度口をつける。
彼女は隣から聞こえてくるミカの文句を聞き流しながら再び言葉を続けた。
「では早速本題に入りたいのですが....」
「えー、もう真面目な話?先生来たばっかりだしもうちょっと雑談しない?」
「....ミカさん、先生はシャーレでのお仕事の合間を縫ってこちらに来ていただいているんです。無駄に待たせる訳には...」
「だってこの前先生が来た時も結局セイアちゃんだけお話しして全然お喋りできなかったじゃん、私だって色々話してみたいのに、ナギちゃんもそうでしょ?」
「私なら構わないよ、私も二人と話すのは楽しみだったから」
「ほら!先生もそう言ってくれてるし!」
「はぁ...わかりました、でも少しだけですからね」
「でね、その時ナギちゃんがー」
「ちょっと待ってください、あれはミカさんが...!」
あれから暫くして、目の前では二人の軽い言い合いが繰り広げられていた。
最近トリニティであった事から始まり、次第にミカによるナギサやセイアのやらかした話、それに反論するナギサなど次第に個人間の内容へとシフトしていく。
「──って言ってて」
「それは私が──」
「何か騒がしい声が聞こえると思ったら、君達は一体何を話しているんだい?」
そんな二人のやり取りをどこか微笑ましく思いながら、私が淹れてもらった紅茶を味わいながら飲んでいた所、不意に扉が開きどこか呆れる様な声が響いた。
「あっ、セイアちゃん」
「セイアさん、これはミカさんが...」
「え、それに関しては先にナギちゃんが言ってきたでしょ!」
「.....まあ君達二人が悪いのは何となくわかったよ。すまないね先生、久しぶりに会ったというのに見苦しい所を見せてしまって」
「あはは...でもセイアも元気そうで良かったよ」
「まあ以前に比べれば今は落ち着いている方かな」
そう言いながら私の対面の席に座り自分の紅茶を淹れ始めるセイア。
「この様子だと、ナギサの話もまだ先生へ伝えていないみたいだね」
「すみません、何だかんだ私も話に夢中になってしまって...」
「でもしょうがないじゃん、この間セイアちゃんが先生を独り占めしたからその分話してただけだもん」
「だからあれは必要な話だったと前に言っただろう...」
「ひとまず、これでセイアさんも揃いましたし今度こそ本題に入りましょう。ミカさんも良いですね?」
「はーい、そろそろちゃんとしないとナギちゃん怖いもんね」
溜息をついたナギサの言葉に目を瞑りながら姿勢を正すミカ、それに合わせてセイアもティーカップをテーブルに置く。
「では先生、本日先生をこちらに呼んだ理由ですが....」
彼女達の姿を確認した後ナギサは改めてこちらに向き直り、手元に寄せていたある書類を私に見せながら話を再開したのだった。