時刻は既に夕方頃。
先生が部屋から出ていった後、ふぅと息をつくセイアはベッドの上に背中を預けていた。
彼女は目を瞑りながら、自身が見た夢の内容を改めて思い返していく。
周りにはモヤがかかり、視界が朧気ながらもそこに立っている自分。
そんな自身に向けられる”悪意”....それが差し迫った瞬間に意識が覚醒する、その繰り返しだ。
自分が昔からそういった類の物が見えてしまう体質であった為、常に他の者とは何処か距離があるのを自覚していた。
未来が見えている以上、いくら努力をしても結末は変わらない。
どんなに抗おうとしても時間を無駄にしてしまうだけだ。
しかし今回は違う。
いつ、誰が、何を...結末に至るまでの道筋が曖昧であり、それすら変わる可能性も存在している。
(全く、先が読めないというのも困ったものだね)
セイアはそう思いながらも、”わからない”という事実にどこか口元を緩めていた。
だからだろうか、それがたとえ自身に危険が迫っている内容だとしても彼女の心の中には恐怖心は無かった。
(......だがひとつだけ、”アレ”に関しては先生に言う事が出来なかった...)
そう、セイアが見た夢は一つでは無かった、彼女はその時の記憶を呼び起こす。
映った時間はほんの一瞬であったにも関わらず、彼女の脳裏に深く焼きついた場面。
頭の上に展開されている巨大な光輪いくつもの不気味な目を持ち、建物全体を覆う程に腕や足から伸びた根の様なものを崩れた瓦礫に巻き付けている”怪物”。
それは声の様な音を震わせながら、周囲の少女達に向けて赤黒い閃光を放っている。
更に見えたのは”怪物”の背に薄らと見える白装束を身につけた不可解な存在、明らかに異彩を放つその集団はまるで感情を持っていないロボットの様な無機質さがあった。
そして、その”怪物”達と向かい合う様に対峙している一人の影.....
(...いや、これは言わない方がいいのかも知れないね)
セイアは目を開けゆっくりとベッドから身体を起こす。
もしかすると、先生に聞けばその者達の正体もわかるかも知れない...だがその事を知ってしまえば先生の動きを逆に狭めてしまう可能性もある。
何よりセイアは考えていた、きっとあの先生ならば自分が伝えずともナギサの件を含め必ず解決できると。
当然根拠など何もないただの憶測に過ぎないが....セイアは不思議とそう確信していた。
(.....さて、これからどうなるのかな...)
これから先の未来を楽しみにしている自分に気づいたセイアは小さく笑いながらも、ベッドから立ち上がりナギサ達の元へと戻る為に歩き出したのだった。