誤字報告ありがとうございます。
セイアとの会話を終えた私は、早速ナギサに渡された書類を見ながらトリニティの広場へ向かっていた。
対象者は四名....どれも私がよく知る子の名前が書かれている。
(....また彼女達と一緒に...)
私は少しの間目を瞑り、四人の顔を思い浮かべた。
ひとまずナギサに言われた通りまずは一人目...ヒフミに会いに行こう、そう決めた時だった。
「あ、先生!待って待って〜」
「え?」
不意に背後から聞こえてきた声に振り返ると、そこには手を振りながらこちらに駆け寄ってくるミカの姿が。
「セイアちゃんとのお話終わったんでしょ?本当はナギちゃんには止められたんだけど、来ちゃった☆」
ミカは元気に笑いながら私の隣で立ち止まり、再度口を開く。
「これからヒフミちゃんに会いに行くんだよね?」
「うん、そのつもりだよ」
「なら今なら他の子も帰る頃だろうし、この辺りで待ってればその内出てくると思うよ」
「そうなの?」
「うーん、多分?ねぇねぇ、その子が来るまで一緒にここで待ってていい?私も先生とまだお話したいし」
ミカはそう言いながらこちらを覗き込むように首を傾け尋ねてくる。
彼女の言う通りもうすぐ来るのであれば変に移動するよりもここで待っていた方が確実だろう。
それにミカが話をしたいという事であれば、断る理由もない。
「わかった、いいよ。私もミカと話したかったからね」
「やった!じゃあ早速だけど、先生っていつも....」
それから暫く、私はヒフミを待つ間ミカとの会話に華を咲かせていた。
「それでね!この前なんか...」
内容としてはごく普通の....昼にナギサと共に話していた時の延長のようなもの。
だが話している時の彼女は本当に楽しそうな笑顔を浮かべており、ティーパーティーというトップの立場を背負った一人ではなく、ごく普通の少女の姿がそこにはあった。
(......やっぱり彼女は...)
私は会話を続けながら、そんな純粋な彼女の様子に小さく笑みが溢れる。
だがそれからどれほど経っただろうか。
日も沈み始め、空が赤く染まってきた時間帯になったにも関わらず、肝心のヒフミの姿がいつまでも見られない。
「あれー?何でだろ、もしかして帰っちゃったのかな」
「うーん、ナギサはヒフミには連絡してあるとは言ってたけど」
「そうだよね...あ、そこの貴方ちょっといい?」
「え、み、ミカ様!?は、はい...!」
「阿慈谷ヒフミちゃんって子知ってる?その子がまだいるか知りたいんだけど」
不思議そうに考え込むミカだったが、彼女はたまたま出てきた生徒の一人に駆け寄るとそう声をかけた。
尋ねられた少女はミカの姿に驚き慌てながらも必死に答えている。
そうして話を終えたミカは早足で私の元に戻ってくると、どのか困った様な顔つきで話し始めた。
「ごめん先生!もしかしたらナギちゃんの手違いだったかも...ヒフミちゃん私達が来る前に急いでどこかに行っちゃったんだって。もう、ナギちゃん本当にしっかり伝えたのかな?」
ミカはナギサに小さく文句を言っているが、私はそれを聞いて少し考えを巡らせる。
おそらくナギサはちゃんとヒフミに伝えていた筈だ、そしてヒフミもあまり約束を破る事はしない、そんな彼女がそれを放ってまで向かうという事は....
「先生、ごめんね?こんな時間まで拘束しちゃって。私は戻らないとナギちゃんに怒られちゃうから、そろそろ帰るけど...」
私がそう考えていると、隣のミカが申し訳なさそうに話してくる。
「大丈夫だよ、私はミカと話せて楽しかったからね。それに....実はヒフミの行きそうな所の目星はついてるんだ」
私がどこか自信ありげにそう答える中、ミカは不思議そうな顔でこちらを見つめていた。
そして、ナギサとセイアの元に戻ったミカと別れた私はそれからトリニティ学園を飛び出し、郊外のある場所を目指して歩いていた。
そこは飲食店やその他の店が立ち並ぶ賑やかな通り、周りには買い物を楽しむ生徒達が和気藹々としているのがわかる。
そんな中を一人歩き続ける事十数分、目的の店が目の前に見えてきたと同時に、その少女の姿も視界に入った。
「むむむむむむ......」
そこにいたのは店のガラスに顔や手を限界まで近づけ中の商品をじっと見つめている一人の少女。
彼女の視線の先には一つの巨大なぬいぐるみが鎮座している。
まさに予想通りの光景に思わず苦笑いを浮かべながらも、私は彼女に近づき声をかけた。
「ヒフミ?」
「うぅ、流石にあの値段は...」
「えっと、大丈夫?」
「....へ?」
あまりに集中し過ぎていたのか始めは私の声が全く届かなかったが、何度か繰り返し呼ぶとそこでようやくこちらにらに気づいたヒフミが振り返った。
「え、せ、先生!?な、何でここに....あっ」
私がここにいる事を驚いていた彼女だったが、やがて何かを思い出したのかサーッと顔が青くなる。
そして
「ご、ごめんなさい!!!!!」
ヒフミが勢いよく頭を下げると同時に、そんな謝罪の言葉が辺りに大きく響き渡ったのだった。