「補習授業部、ですか?」
私がその話をナギサ様から聞いたのは、ほんの数日前の事でした。
「ええ、成績が振るわなかった方達を集め、一時的に勉学に集中していただく....特例の措置によって今回作られたのが補習授業部です」
ナギサ様はティーカップをテーブルに置くと、じっと私を見つめてきます。
「それで今回ヒフミさんをこちらにお呼びした理由ですが....すでにお分かりですね?」
「は、はい...」
どうして私がナギサ様に呼ばれたのか、それは私自身がその補習授業部のメンバーになってしまったからでした...
「ヒフミさんの普段の成績は把握しています、それから考えれば試験自体は特に問題無いものだったでしょう....ですが試験当日に学園を抜け出すという行動は流石に看過できません」
「あぅ...す、すみません」
(ち、違うんです!テストの日程はちゃんと把握してたんです!でもその日丁度にペロロ様のゲリラ公演があると知ってどうしても身体が勝手に....!)
なんて言い訳をナギサ様に言えるはずもなく、私はひたすらに頭を下げ続けるのみ。
「とにかく、ヒフミさんには補習授業部でしっかりと勉学に励んでいただき、無事学園生活に復帰していただきます。...私としてももう少し協力したいのですが、今は忙しい時期でして...」
「だ、大丈夫です!元々は私がサボってしまったのが原因ですし、ナギサ様の期待に答えられる様頑張ります!」
「....そう言っていただけるのであればありがたい限りです、補習授業部にはヒフミさん以外にも三人程同じ様な方々がいらっしゃるので、彼女達と協力して頑張ってくださいね」
ナギサ様は小さく微笑むと、それから何かを思い出したかの様な表情を浮かべました。
「そういえば、ヒフミさんにはもう一つお願いしたい事が」
「は、はい!何でしょう」
「実は今回の件でシャーレの先生にも協力をお願いする予定なんです」
「え、先生をですか?」
「ミカさんが先生ならば補習授業部の顧問にぴったりだと話されて、セイアさんもそれに同意したのです。確かに補習授業部の認定自体シャーレの権限を一部利用して作られたものですから、先生を顧問とするのが一番スムーズであると私も判断しました」
「先生にはまだお伝えしていませんが、シャーレの評判を聞くに断られる事はないでしょう。それに...一応先生はこちらに”借り”がありますしね」
私はその話を聞いて、先生があのカイザーグループに誘拐された時の事を思い出しました。
「先生はあまりトリニティの事を知らないでしょうし、出来れば先生のサポートもヒフミさんにお願いしたく...」
「わかりました、任せてください!」
そうして私はナギサ様のお願いを引き受け、その日はナギサ様と別れました。
そして、先生がトリニティへとやって来る当日。
先生と会うのは大体放課後になりそうだとナギサ様から連絡を貰っていた私は、広場のベンチに座って先生とナギサ様達のお話が終わるのを待っていました。
「先生と会うのも久しぶりですね...」
アビドスの一件以来中々会う事もありませんでしたし、何だか新鮮な気持ちです。
そんな事を考えながら軽く携帯をいじっていると...”それ”を見つけてしまいました。
「えっ!」
私の視線の先、画面に写っていたのはとある商品の情報。
『新商品!超巨大ペロロぬいぐるみ限定販売!』
「こ、これは....!」
私はそれを見た瞬間急いでページを開きました。
「販売場所はそこまで遠くありません、ここからなら十分程度で着けますね...でも値段が...いや、見るだけでも....だ、駄目です!先生と待ち合わせが...うぅ....」
必死に理性とのせめぎ合いを行う私の脳内、その結果....
「す、すぐに見て戻ってくれば大丈夫ですよね?今から向かえば十分間に合いますし...」
目の前に現れた欲に負け、言い訳を独り言の様に呟きながら私の足は自然とお店の方へと向かっていきました。
その後、結局ガラス越しにぬいぐるみを見るのに夢中なっていた私は約束の時間をすっかり忘れてしまい、背後からやって来た先生に全力で謝る事となったのでした....