「わわっ!?」
「凄い音ですね〜♪」
ヒフミ、ハナコ、正義実現委員会の子達と共に連絡のあった場所までやって来ると、そこはまさに銃撃戦の真っ最中だった。
連続して響き渡る銃声に爆発音、それらに混じり僅かに交戦中と思われる少女達の悲鳴が聞こえてくる。
「わぁぁぁぁぁぁっ!?」
「あちゃー、これは中々厳しいっすねー」
「い、イチカ先輩!ただ今到着しました!」
「ん?ああ、不審人物を捕まえに行った子達っすね?....あれ、一緒にいるのはもしかしてシャーレの先生っすか?」
「やあイチカ、おはよう」
私が何やら指揮をしていたらしきイチカに声をかけると、彼女は少し困った顔を浮かべ口を開いた。
「はいっ、おはようっす....と言いたいところなんですけど、ちょっと今は厄介なタイミングなんすよねー。うちの生徒の白洲アズサって子がそこの弾薬倉庫を占拠してまして」
その言葉が発された瞬間再び大きな爆発音が鳴り響き、倉庫前から新たに正義実現委員会のメンバーが目を押さえながら逃げ出してくる。
「い、イチカ先輩!これ以上進めません...!」
「うーん困ったっすね....倉庫の中は無限って訳じゃないんでいずれは突撃出来るはずっすけど...これ以上無駄に時間をかけるのも...」
「あ、あの....」
「ん?」
手を眉間に当て考え込むそんなイチカに対し、ヒフミはおずおずと声をかける。
「お力になれるかわかりませんが、私達にも手伝わせてくれませんか?」
「それは...関係ない一般生徒を巻き込むのはあんまり良くないっすから、気持ちだけで大丈夫っすよ」
「...それが、えっと...私達に大きく関係していまして」
「え、どういう事っすか?」
ヒフミはイチカに事の次第を説明し始める。
補習授業部が設立された事、倉庫を占拠しているアズサがそのメンバーの一人である事、丁度今自分達が彼女を探していた事。
それらを聞いたイチカは納得したように頷くが、やはり
ヒフミ達を巻き込むのは気が引けるのか渋い顔をしている。
「大丈夫です!ここには先生がいますし、先生なら上手く私達を指揮をしてくれる筈です」
「...確かに先生の指揮能力はハスミ先輩からも聞いてるっすけど、先生はいいんすか?」
「うん、私に出来る事があれば喜んで手伝わせて」
「....わかりました、じゃあありがたく力をお借りするっす。よし皆ー、集合っすよー」
正義実現委員会の子達を集めて作戦を伝え始めるイチカ達を遠目に私はシッテムの箱を起動した。
「アロナ、ケイ、お願い」
『了承、戦闘補佐プログラム起動します』
〈はあ...仕方ありませんね〉
二人の声が聞こえると同時に私の目の前にイチカ達の情報が出現し始める。
(まさかここでアズサと戦うことになるとは思わなかったけど....)
私はそんな事を考えながら顔を上げて彼女達の方に視線を向ける。
そうしている間に話し合いが終了したのか、イチカはパンッと手を叩き告げた。
「よし、作戦開始っす!」
「第一部隊はそのまま角から掩護射撃、第三部隊は二人一組で行動して、どちらかがやられたらすぐに撤退」
「ヒフミ、30メートル先にあるスモークグレネードのケースを撃って視界を塞いだら一時撤退、待機してる第二部隊に合流して」
『警告、左壁にワイヤーが仕掛けられています』
〈扉越しに危険物を検知、おそらく爆弾がセットされていますよ〉
「ハナコ、イチカ達と一緒に左奥の壁のワイヤーを解除しながら前進。扉は開けないよう気をつけて」
『対象の移動を確認』
「右端の梯子を登ってアズサが移動してる、全員その場から離れて再度配置について」
倉庫での戦闘が始まってから二十分程が経過していた。
まず入り口付近に仕掛けられていたトラップを解除した私達はそのまま倉庫内に侵入、すぐさまそれに気づいたアズサから銃弾が飛んできたがヒフミの持っていた巨大なペロロ人形によって阻止。
先程イチカから教えてもらった倉庫の内部構造から射線の通らない場所、トラップが仕掛けられているであろう箇所を推察し部隊をいくつかに分けて突撃。
後はその場の状況次第で指示を出す....作戦自体はシンプルなものだ。
アズサが得意とするのは正面からのぶつかり合いではない、相手を罠で誘導し動揺した所を狙う迎撃型。
だからこそこちらがしっかり警戒していればその分対処も可能となる。
「ハナコ、イチカ」
「はぁい♪」
「了解っす」
「!」
少し上に組まれた鉄骨部分を走るアズサの背後を二人が狙い撃つも、アズサはそのまま姿勢を低くさせながら走り抜けていく。
「ヒフミ」
「はい!すみませんが止まってもらいます!」
しかしアズサの正面側にこっそり移動していたヒフミが現れた事で、不意を突かれた彼女はそのまま銃弾を浴びた。
一瞬怯んだアズサは顔を動かすと、鉄骨から跳躍し空中で閃光弾を起爆させる。
突然の眩い光に私も一瞬目を伏せるが、その瞬間
「っ!」
「.....」
私の視界にはいつの間にか目の前まで移動していたアズサが接近してくる姿が映し出されていた。
彼女の顔はガスマスクで覆われているため表情は読めないが、その見た目から伝わるオーラからは本気で突破しようという気迫が伝わってくる。
「先生!」
「.....!」
「確保ー!」
だが、誰かが私のことを呼んだその時、アズサは何故か驚いた様子を見せその場に一瞬立ち止まった。
彼女が見せた隙を周りにいた正義実現委員会のメンバーが見逃すはずもなく....先程までの勢いはどこへやら、あっという間にアズサの身柄が拘束されたのだった。
「いやー本当にありがとうございました、一時はどうなる事かと」
倉庫から出たイチカは私達に感謝の言葉を告げながら、正義実現委員会の教室を目指し歩いていた。
「お二人もご協力感謝っす、結局手伝わせてしまったみたいで...本当ならお二人の要望通りアズサさんを解放したいんすけど、流石に何も無しに帰す訳にはいかないんすよ。一応事情聴取って名目もあるんでそこは理解して欲しいっす」
「ふふ、私は構いませんよ?放置プレイというのも中々新鮮ですから♪」
「あはは....私もアズサちゃんからきちんと理由を聞きたかったですし」
「くっ、無念...あそこで油断しなければまだ粘れた筈。でも尋問なら慣れてるからそう簡単に口を割ることはない、好きにして」
ニコニコと笑っているハナコ、苦笑いを浮かべているヒフミ、シューシューとガスマスクの音を立てながら淡々と告げるアズサの三人にイチカもどうしたらいいのかと微妙な反応をしているようだ。
「えっと、とりあえず着いて来て貰っても大丈夫っすか?すぐ終わると思うんで」
「はい、どちらにせよ私たちも正義実現委員会の教室に向かう予定だったので大丈夫です」
「そうなんすか?正実に何か用事でも?」
「実は....」
そんなヒフミ達の会話を少し離れたところから聞いていた私は不意に視線を感じ振り返る。
するとそこにはガスマスク越しにこちらをじっと見つめているアズサの姿があったのだが、彼女はこちらの視線に気づくとそのまま顔を逸らしてしまう。
「....?」
彼女のそんな視線を不思議に思いつつも、私は四人目が待つであろう場所へとヒフミ達と共に歩を進めていった。