イチカに連れられる事十数分、私達は正義実現委員会の本部となる建物へとやって来ていた。
「こ、ここが正義実現委員会の本部....」
「あはは、まあ気を楽にしてくださいっす」
イチカは緊張気味のヒフミに声をかけながら扉をノックすると、中から聞き覚えのある声が聞こえてくる。
「イチカ、お疲れ様です。...先生もお久しぶりですね、私達の仕事を手伝ってもらったようで、ありがとうございます」
部屋の中でソファに座っていたのはこの正義実現委員会の副委員長であるハスミ、彼女はこちらの姿を見て立ち上がると頭を下げてくる。
(”今の”私はまだハスミには会ったことは無かったけど....この世界の私は面識があったみたいだ)
おそらくかつて私がキヴォトスへと来たばかりの頃、シッテムの箱を手に入れるために彼女達と行動した時の事だろう。
その出来事はどうやらこの世界でも起こっていたようだ。
「ハスミ先輩、とりあえず連絡を受けてた占拠事件については無事解決したっすよ。この後事情聴取として少し彼女と話をする予定ですけど」
「他の子達から既に連絡を貰っていたので理解してます、中々苦労したそうで...ですが彼女に関してはもう解放していただいて構いません」
「え、いいんすか?」
「ヒフミさん達はこれからティーパーティーの発足した補習授業部として活動されるんですよね?」
「は、はい」
「その顧問として先生が配属された...それでしたら補習授業部は先生の管理下という事になりますので、そちらを優先するのは当然でしょう」
ハスミはそう言うと、アズサと念の為手首を繋がれていたハナコの拘束を解かせるよう周りの子達に指示を出す
「あら、牢屋での特別尋問を楽しみにしていたんですが....仕方ありませんね♪」
「シュー、シュー....」
「あ、ありがとうございますハスミさん」
「ありがとうハスミ、助かったよ」
「本来なら我々も先生に協力出来れば良かったのですが、組織の仕組みからあまり軽率に動く事は難しくて...」
ハスミは申し訳なさそうに謝るが、現にヒフミ達の為にアズサ達をすぐに解放してくれた時点で助けになっている。
私は気にしないでという意味を込めてハスミに声をかけていると、隣に立っていたヒフミが思い出したかの様に顔を上げ口を開いた。
「そ、そうでした!教えていただきたい事があるんですが...実は補習授業部の事で...」
そう呟くと彼女は書類をハスミに見せながら、補習授業部の四人目がここにいると言う事を伝えていく。
「成る程、あの子が.....」
「それで、彼女が今どちらにいるのか教えて貰えませんか?」
「この時間なら押収品保管室にいる筈ですよ、丁度先程うちの生徒から押収品を回収して運んでもらっていた所ですので。連絡してここに呼びましょうか?」
「いえ、自分達で向かうので大丈夫です、ありがとうございました!」
「あの子をよろしくお願いします、とても良い子ですから色々と教えてあげてください」
「それじゃ、頑張ってくださいっす。先生もまた今度」
そうして私達はハスミとイチカに見送られながら、押収品保管室を目指し部屋を後にした。
それから数分後、
「ここ、ですね」
『押収品保管室』と書かれたプレートが設置された扉の前にやって来た私達。
「でも静かですねぇ、作業をしているとの事でしたが....」
「大丈夫、人の気配はする」
「アズサちゃんわかるんですか?」
「小さいけど物音が聞こえた、隠密している敵をいち早く発見するのは戦闘に置いて必須だから」
「か、彼女は敵ではなく同じ仲間なのですが....し、失礼します」
アズサの物騒な物言いに苦笑いを浮かべるヒフミだったが、一つ咳払いをするとノックをして扉に手をかける。
「.....は、ダメ.......れも...」
棚に隠れて姿は見えないが、確かに奥の方から声が途切れ途切れに聞こえてきた。
どうやらここにいるのは本当らしい。
「あ、あのー...」
「うぅ...なんでこんなものを....わ、私がしっかり確認しないと....!」
そろそろと近づいていくと、やがて棚を背に地面に広げられた本を見ている少女...コハルの姿が視界に入った。
何度かヒフミが声をかけるが、彼女は相当集中しているのか全く気付かない。
「えっと、下江コハルさん?」
「ひゃあ!?」
とうとう直接肩に触れた所でようやくこちらに気づいた彼女は、突然の事態に身体を大きく跳ねさせながら振り返った。
「な、ななな何しにきたの!?ここは関係者以外立ち入り禁止なのに!」
「驚かせてしまってごめんなさい、私達は貴方に用が...」
「って!何で制服じゃなくて水着を着てる変態がいるの!?そっちもガスマスク付けてる意味がわからないし!ハスミ先輩に言いつけてやるんだから!」
「え、えっと、そのハスミさんからこちらにコハルさんがいると教えて貰ったんですが...」
「嘘!そんな不審者達をハスミ先輩が見逃す筈ないでしょ!」
「あぅ...で、ですから話を....」
全く話を聞き入れてくれないコハルにヒフミが困った様にこちらを見てくる。
「あら、その本は...」
「っ!?」
だがその時ハナコが彼女の足元に開かれていた本を手に取り首を傾げると、コハルは顔を赤らめながら慌ててその本を奪い返した。
そんな彼女の態度にハナコは笑みを浮かべて口を開く。
「うふふ、コハルちゃんも隅に置けませんね?まさかそんな本を熱心に読んでいたなんて」
「ち、違っ!」
「それは確か流通数も少ないうえに、かなりマニアックな内容が書かれている知る人ぞ知る貴重な品なのですが....」
「こ、これは私のじゃないから!たまたま押収した中に入ってただけで....!」
「わかりますよ、普通に慣れすぎて満足出来なくなるその気持ち。コハルちゃんも苦労しているんですね♪」
「〜〜〜〜〜〜〜〜!?!?!?!?」
「そ、その辺りで!コハルちゃんの顔が大変なくらい真っ赤になってますから!?」
「........」
「あ、あの、すみませんでした...」
あれからようやく落ち着きを取り戻したコハルは、棚の隅に移動しこちらを警戒する様に覗いていた。
「ごめんなさい、ついあの本が気になってしまって♪」
「...別に、もう気にしてないから...それで?結局何の様なの?」
「その、補習授業部の事なんですけど」
「補習授業部?」
ヒフミは本日何度目かになる説明をコハルに行うと、それを聞いた彼女は特に興味なさげに返事を返す。
「ふーん、ようは落ちこぼれの人達が集まって勉強するって事でしょ?それを何で私にわざわざ言いにきたの?」
「えっと、非常に申し上げにくいんですが....」
「何?まだ作業残ってるし、早くしてよね」
「それが、その補習授業部の四人目がですね....コハルちゃん、貴方なんです...」
「..........えっ」
《補習授業部、全員集合》