偽りの道をもう一度   作:Mrふんどし

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動き出した歯車

トリニティの本校舎から離れた区画にて

 

「よ、ようやく着きましたぁ....」

 

ある建物を前に、大きな荷物を肩から下げたヒフミが疲れた様子で溜息をついていた。

 

「しばらく使われてないと聞いていので、冷たい床で裸になって寝ないといけないと思っていましたが...建物自体は結構しっかりしてますね♪」

 

「は、裸になる必要はないと思いますが...でもそうですね、これなら今日からの”合宿”も無事過ごせそうです」

 

彼女が溢した”合宿”という言葉、その名の通り今私達の目の前にあるのはトリニティの別館である合宿所だった。

何故私達がここへやって来たのか、それは以前行った第一次特別学力試験の結果が起因している。

 

三度にわたって行われる学力試験....その一度目に失敗してしまった場合、次の試験まで本校舎を離れ勉強に集中してもらう事を目的とした特別措置...それが今回彼女達が参加する合宿だった。

 

皆それぞれがこれから始まる合宿に思いを馳せながら、荷物を持ち直し建物の中へと入っていく。

 

「わぁ、ベッドもきちんとしてますね。掃除は...少し必要かもしれませんが、不便はなさそうです」

 

「うふふ、これなら全員で寝られそうですね、裸で♡」

 

「さっきからなんでいちいち裸にを強調するの!エッチなのは駄目!!」

 

「あらあら、確かにコハルちゃんの言うとおりまだ明るいですし....今は我慢しておきましょうか、夜は長いですからね♪」

 

「ちょっ、にじり寄って来ないで!?」

 

「偵察完了だ、入り口は二つだけだし中は少し入り組んでて侵入は防ぎやすそうだった。後はトラップを仕掛けておけばより守りは強固になる筈」

 

「あ、アズサちゃん、目的はお勉強ですしそこまで心配しなくても...」

 

部屋を見渡しながら各々会話する彼女達を見ながら、私もこれからの事を一人考えていた。

 

(ひとまず次の試験まで一週間....今日の所は一次試験で彼女達が解けなかった範囲をもう一度調べて、それぞれに合った勉強スケジュールを立てようかな)

 

私の部屋は彼女達の向かい側。

夜はシャーレへと戻ることにはなるが、これから日中の間は殆どをここで過ごすことになる。

....シャーレに届く書類をこっちに送れる様リンちゃんにお願いしようか、でもあまりやり過ぎるとお説教を貰っちゃう気がするし...

 

「....せい、先生?」

 

「...あ、ごめんね。少し考え事してて」

 

ついぼーっとしてしまった私は、いつのまにか荷物を置き終わっていたヒフミに声をかけられ慌てて現実へと意識を戻す。

するとヒフミはコホンッと咳払いをして三人へ声をかけた。

 

「私達の目標は一つです...最初の試験は失敗しちゃいましたが、これから各々苦手な所をしっかり補って、次の試験では必ず合格しましょう!」

 

「うん、今度は任せて欲しい。大体勉強の要領は掴めてきたから、次は成功させてみせる」

 

「共通する目標を持つ仲間と一緒に食欲を満たし、睡眠欲を満たし...うふふ♪良いものですね、合宿♪」

 

「なんか凄く不穏に聞こえるんだけど...絶対変なことして邪魔しないでよね!今度こそ合格して正義実現委員会に戻らなきゃいけないんだから!」

 

「あら、ではお互いに”触れられたく無い場所”を共有しておきましょうか。今後の為にもなりますし♡」

 

「な、何今後の為って!?...ちょ、ちょっと!こっち来ないで!」

 

「あ、あはは....と、とりあえず先生もこれからよろしくお願いしますね」

 

「うん、任せて。とりあえずまずは....」

 

少々不安そうな表情を浮かべたヒフミの言葉を受けた私は改めてこれからの生活への決意を固める。

そうして早速初日に予定していた内容を提案しようと口を開いた瞬間....

 

〜♪

 

突然手元から電話の着信音が聞こえてきた。

 

「ごめん、ちょっとだけ出てくるね」

 

私は四人に断りを入れ部屋を出ると、画面をタップしかかってきた電話に応答する。

 

「もしもし」

 

『ん、良かった、出てくれた』

 

「シロコ?」

 

するとその相手はまさかのシロコだった。

彼女の声を聞きついこの間話をした時の事を思い返すが、電話越しから聞こえてくる彼女の声はその時とは違いどこか困っている様な雰囲気が伝わってくる。

 

「どうかしたの?もしかしてアビドスに何かあったとか...」

  

『大丈夫、そういう訳じゃない...けど。うーん、でもそう考えると”あった”って言えるかも...』

 

「...安心してシロコ、何か困った事があるなら遠慮なく言って欲しい。私はいつでも力になるからね」

 

どこか濁すようないい回しをするシロコに、私は落ち着いて言葉を投げかける。

 

『ん、わかった。じゃあ話すね』

 

そう言うシロコの次の言葉を待っていた私だったが

 

 

 

『さっき、砂漠の中で倒れてる子を拾った。今はまだ気絶してるけど.....どうすれば良い?』

 

「え?」

 

あまりに予想外な一言に、一瞬思考が固まった私は思わず手に持っていたシッテムの箱を落としかけたのだった。

 

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