今のところ短編だけど反響が良ければ連載にする予定。楽しんでいただけたら幸いです。
学園都市キヴォトス、アビドス学区の砂に埋もれたとあるビルの屋上にて。今日も今日とて私は刀を素振りしていた。
生徒のすべてが銃火器を所持し、毎日あちこちで銃撃戦が日常茶飯事に行われているこのキヴォトスにおいて、ただの刀を振るう私は異端だ。銃弾ですら弾いてしまう神秘の肉体の持ち主であるキヴォトスの人間には、刀などただの鉄の棒でしかない。そもそもこの刀もブラックマーケットで格安で売られていたものだ。このキヴォトスでの刀の価値は、まだ可燃して燃料にできるゴミより下といっていい。
ではなぜそんな刀を使うのか。それは私が、銃の扱いがとんでもなく下手くそだからだ。
狙ったところに当たらない、ならまだいい。当たり前に外れた弾丸がなぜか跳弾して私に当たる。ショットガンを撃てば、砕けた壁やらの破片がやはり私に当たる。マシンガンやアサルトライフルなんか撃った日には目にも当てられないことになった。へっぽこ通り越して不思議とすら言われる始末だ。私がキヴォトスの人間じゃなかったら死んでたぞ。
そんな私は、この銃社会では底辺の存在だ。なにか揉め事があれば銃撃戦で解決するのが常識だというのに、その銃を扱えない論外なのだから当然だ。だから通っていた学校では当然とばかりに虐めの対象になった。反撃もできない弱者を甚振るのはどんな気持ちなんだろうか。知りたくもないな。
そんな奴らを見返すために、私は今日も放課後にここを訪れて、人知れず刀を振り続ける。銃が使えないなら使わなきゃいい。ただの鉄の棒でしかなかろうが、殴ったら痛いのだから使わない手はない。だが刀の扱いを教えてくれる奴なんてこのキヴォトスにいるわけがないわけで。ただただ振り続けることしかできない。それにここにいれば、おのずと……。
ズダダダダダダダダダダダダッ!!
「……うん?騒がしいな……」
聞き慣れた銃撃戦の音。下を見れば、なんとかヘルメット団とかいう十数名の半グレ集団が、たった四名の生徒を相手に暴れていた。あれは……アビドス高校の連中か。最近躍起になって廃校同然のアビドスを狙っているが、なにしてるんだあれは。
「まあ、私に害がなければどうでもいい。勝手にしてくれ」
ズダダダダダッ!ズダダダッ!ズダダダダダダッ!!
「………」
ターン!
ビシッ!
絶え間なく続く銃声に無視して刀を振り続けるが、跳弾してきたのか流れ弾が飛んできて側頭部に撃ち込まれる。………そうかそうか。今日は見逃してやろうと思った私がバカだったよ。
「……見つけた」
屋上から下を窺い、一人離れたところにいるなんとかヘルメット団を見つけたので、雨どいを伝って下まで降りると、はぐれのヘルメット団の襟元を掴んで引っ張り路地裏に引きずり込む。
「え、なになになに!?ひぎゃあ!?」
引きずり込むなり、素早く袈裟斬り。頸動脈に刀身を叩き込み、失神させると崩れ落ちるその身体からフルフェイス型のヘルメットを奪い取る。刀を鞘に納め、ヘルメットを被り深く息を吸い込む。…いくぞ!
「え、なに…!?」
「ぎゃあ!?」
「ぐふう!?」
跳躍し、宙返りして空を舞いながら、抜刀と納刀を繰り返してヘルメット団のヘルメットに覆われた頭部に刀身を叩き込んでいく。刃自体はキヴォトスの人間には通らないが、衝撃は別だ。抜刀術により加速した斬撃で無理矢理頭部を揺さぶって脳震盪にする。これが、銃が使えない私の辿り着いた勝ち方だ。
「あ?射線に入らないでよ、邪魔…!?」
ガトリング銃で掃射しようとしていたヘルメット団の前に着地。柄巻で銃口を下に下げ、その衝撃を反転させて勢いのまま唐竹割。ヘルメットを叩き割られたヘルメット団は何が起きたか理解することなく目を回して崩れ落ちた。
「な、なんだ!?あっちの一角が…!」
「剣を持ったうちのヘルメットが暴れてんぞ!誰だ!」
「いや待て、あれ刀だ!刀、トリニティの制服……間違いない、辻斬りの……」
「おっと、手が滑った」
私の事を知ってるっぽい紅いヘルメットの奴に、刀をぶん投げる。クルクル縦に回転した刀は勢いよくその刀身がヘルメットに叩きつけられ、そいつを転倒させて空中に弾かれたそれを、戦場を駆け抜けてキャッチ。鞘に納めて宙を舞い、次々と抜刀そして納刀。一撃で斬り伏せていく。
「なになに~?仲間割れ~?」
「っ!」
着地して残心していたところに叩き込まれるスラッグ弾を、近くの盾持ちヘルメット団の腕を蹴りつけ跳ね上がった盾で防ぎ、間髪入れず一閃。しかしそれは、そいつの持っていたカバンが変形した盾で受け止められる。今の速さに対応するとはどんな猛者だ、と思いながら見てみれば、非常に小柄な体型で、ピンク色の長い髪の頭頂に一本の巨大なアホ毛を持つ、右目は黄色、左目は青のオッドアイの子供だった。どこかで見た様な……誰だ?
「君の制服、トリニティ~?お嬢様がこんな寂れたところで辻斬りなんて、おじさん感心しないなぁ」
「ホシノ先輩!」
「セリカちゃん、危ないから下がってて~」
そこに、猫耳の生えた黒髪ツインテールの少女がやってきて、手にしたアサルトライフルを撃ってきたので、納刀して跳躍し回避。子供の方は上着を着てないからわからなかったが、見覚えのあるその制服に合点がいった。アビドス高校の生徒か。あの弱小校にこんな猛者がいるなんて聞いてないぞ。ここは、ただヘルメット団にお仕置きしていたと誤解を解いて……とするところなんだろうが、めったに出会えない猛者に体が奮い立つ。ああ、この銃を使えぬ身がどこまで通用するのか、挑戦したい。
「……もごもごヘルメット団、参る」
「カタカタヘルメット団じゃなくて~?」
手にしたショットガンを撃ちながら突進してくるホシノと呼ばれた少女の攻撃を、打ち棄てられた車などの遮蔽物を利用して回避しつつ、死角に回り込んで一閃。しかしその小柄な身に似合わぬ盾を持ったままホシノは宙返りし、空中からシールドバッシュ。咄嗟に刀で防御するも、衝撃で弾かれよろよろと後退。そこにショットガンが叩き込まれ、スラッグ弾が全身を打ち付ける。
「がはっ!?」
吹き飛び力なく転がる私の体。強い、強すぎる。うちの正義実現委員会のツルギ並……いや、それ以上か?
「なんで銃を使わないのか知らないけど、使わないとおじさんには勝てないよ~?」
「……生憎と、銃を使えない身でね」
油断なく盾を構えその上からショットガンを突きつけるホシノに対し、なんとか立ち上がった私は限りなく頭を地面スレスレまで近づけて前傾姿勢となり、腰を上げた体勢で居合の体勢を取る。
「何のつもりか知らないけど、気絶させて話を聞かせてもらうから!」
私が動かないと見たのか、突進して近づき、ショットガンを片手で構えるホシノに合わせて、私は明らかに刃先すら届いてない距離で抜刀する。それに失敗したと見たのか、私の頭に突きつけようと突き出すホシノのショットガンの銃口が押し上げられる。
「なっ……」
「抜刀!」
それを行ったのはショットガンの下面に挿し込まれた鞘であり、続けて振り抜かれていた刀の柄巻が上面から炸裂し、上下からショットガンを挟み込み、相手の運動エネルギーごと己が刀に乗せて吸収し力に換えることでショットガンをホシノの手から弾き飛ばし天高く打ち上げる。そして、そのまま運動エネルギーを乗せた全身全霊の唐竹割を叩き込もうとして。
「残念だけど、おじさん二刀流なんだぁ」
「っ!?」
それよりも早く盾の先端が腹部に叩き込まれ、私は殴り飛ばされて自動車に勢いよく突っ込み砂煙を上げたのだった。
「ホシノ先輩!無事!?」
「はあ、びっくりしたぁ。まさか刀なんかでここまで追い込まれるなんてねえ。じゃ、話を聞かせてもらおうか……ありゃ?」
そのままホシノが砂煙の立ち込める自動車の傍までやってくるが、そこには私が脱ぎ捨てたヘルメットしか残してなくて。呆けた顔を浮かべるのを、近くのビルの窓から確認し、私はその場に倒れ込む。してやられた、勝利を確信して油断したのはこっちだった。
「……はあ、頑張らないとなあ」
ため息をつき、窓から見える青空を眺める。ああ、世界はこんなにも透き通っている。
・主人公
所属:トリニティ
部活:帰宅部
初期レアリティ:☆☆☆
攻撃:貫通
防御:軽装備
役割:STRIKER
ポジション:FRONT
クラス:タンク
武器種:日本刀
銃音痴で刀使い。トリニティ総合学園の制服を着ている。身体能力に物言わせて刀で殴るスタイル。
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