VS陸八魔アル。楽しんでいただけたら幸いです。
銃声と爆音、金属同士がぶつかる音が響き渡り続け、私と陸八魔アルは斬り結びながら街並みを駆け抜けていた。
「ははっ、ここまで楽しめるとは予想外だ!」
「うちの社員に手を出して、後悔しても遅いんだから…!」
私は駆け抜けながら刀を振るうだけだが、カヨコに手を出されてキレている様子のアルは、尋常じゃない戦闘力を見せてきた。銃撃しながらライフルを振り回し、刃の腹に銃身を叩きつけてきて私の斬撃を弾き、更に隙あらば必殺の特殊弾を叩き込んでくる。刃で受ければ爆発するそれを防ぐ術はなく、撃たれるたびに全力で回避する羽目となる。しかも厄介なことに、普通の銃撃に織り交ぜて撃ち込んでくることだ。普通の弾丸だと思って斬れば爆発したりするのだ。めんどくさいにもほどがある。ホシノやツルギみたいにただ強いやつらとは違う、工夫と経験から巧みな動きをしてくる。やりにくい。
「いや、刃で受けるしかないと考えるのがダメか…!」
「ぶちのめすわ…!」
跳躍した私の両手で握って放った渾身の斬撃を、横から刃の腹を銃身で殴って弾き飛ばしたところに、弾丸を叩き込んでくるアル。着地したところを狙って放たられたそれを、咄嗟に刃で地面を斬りつけて反動で跳ね上がることで回避。
「ならばこちらは……ぶった斬る!」
離れたところに着地して地面を蹴り加速、斬撃を叩き込むが、アルは咄嗟に銃身を握りグリップをハンマーの様にして殴りつけてきて。側頭部を思いっきり殴られた私は、錐揉み回転しながら飲食店だったと思われる廃墟に飛び込み、机の残骸を巻き込みながら転がる。今のは、効いたぁ。
「ふ、ふーん!どうかしら!?アウトローの戦い方、思い知った!?」
「……アウトローを語るならもっと非情になることだな便利屋。人の好さが出てるぞ」
慌てて銃を持ちなおして動揺しながら建物内に入ってきて、強い言葉を紡ぐアルに、その人間性を理解する。ああ、根っからのお人好しだ。アウトローを自称するのもあらかた「かっこいいから」なんだろうな。今のも、カッとなってやってしまった感じか。
「そんなことないわ!私は真のアウトローになる女!便利屋
「そう来なくちゃ、な!」
やり方を変える。壁を蹴り、天井を蹴り、四方八方からアルに斬撃を叩き込んでいく。しかしアルも反応し、ライフルを棍棒の様に両手で構えて直感的に防いでいく。ポテンシャルありすぎだろ、人を率いる人間ってのはこういう奴ばかりか!
「なぜアビドスを狙う!この腕だ、仕事は選べる立場だろう!」
「便利屋
「そいつはご立派だ!だが、戦う相手は選んだ方がいいぞ!アビドスは、喧嘩を売ってタダでは済むやつらなんかじゃあない!」
「貴方みたいな人までいるなんて、後悔しているところよ!いい加減にしなさい!」
するとクルクル振り回しながらグリップの方を握ったアルが銃身を回転させながら引き金を引き、爆発が天井を破壊する。降り注ぐ瓦礫の雨に咄嗟に反応、天井だった瓦礫を斬り飛ばすが、その隙を突いて右手でライフルを構えたアルの狙撃が腹部に炸裂。途轍もない衝撃に耐え切れず、体が跳ねて厨房だった部屋まで飛び込んだ。
「ここまで追い詰めれば、一撃で十分よ…!」
「そいつは、どうかな!」
頭を打った私は悶絶しながらも、追撃を避けるべく、刃を振るい粉塵が充満する。こいつは…重畳だ。
「例え姿を隠しても、片手でも命中させられるわ」
「お前の腕ならそうだろう。だが、撃つのはお勧めしない。こいつは可燃性の高い小麦粉だ。火花が散れば、引火してドカンだ」
「…くっ!」
私の言葉に銃を下ろすのが影で見える。お前ならそうするだろうな、陸八魔アル。だが、甘い…!私は粉塵の中を躊躇なく突撃、刃を振り下ろすとすれすれでアルは回避する。さっきみたいに銃身で受けたら火花が散るのは必至だからな。
「っ、正気…!?」
「正気も正気だ!」
真向斬り。袈裟斬り。逆袈裟斬り。唐竹割り。一文字斬り。右胴斬り。逆風。刺突。左薙ぎ。流れるように次々と振るわれる斬撃を、狭い室内で防戦一方で避けていくアル。視界も悪いのによくやる。ほぼ直感で避けてるな。だが…!
「ふっ!」
「なんの!…!?」
「そいつは囮だ」
投げつけた刀を、顔を逸らして回避し勝ち誇るアルの額に、鞘の先端が炸裂。そのまま跳躍して背後の壁に突き刺さった刀を引き抜き、袈裟斬りにアルを斬り裂いた。
「くっ……まさか、この中で躊躇なく武器を振れるなんて……」
「こっちは何時だって捨て身だ。銃を使えないんだから当たり前だ。そもそも、あれは小麦粉じゃなくてただの砂煙だからな。人がいいお前なら、信じてしまうと思ったよ」
「……完敗だわ」
同時に、日暮れを告げるチャイムが鳴る。もうそんな時間か。すると、アルは銃を下ろして両手を上げた。降参の姿勢だ。
「……バイトの傭兵たちを雇っていた定時が過ぎたわ。残る戦力は私たち便利屋四人だけ。……降参よ」
「そうか。少し残念だな。もう少し戦っていたかった」
「私はごめんよ!?」
「セツナ。こっちは制圧した。そっちも、問題なさそう?」
すると、シロコがやってきてあちらも決着がついたことを告げた。扉が壊れた入口から、対策委員会に囲まれている便利屋68の残りの三人も見える。傭兵は本当に帰ったみたいだな。ブラフじゃなかったのか。
「こっちを油断させるブラフかと思ったら真実か。お前、社長なら腹芸ぐらい覚えた方がいいぞ?」
「余計なお世話よ!?……今回は引かせてもらうけど、諦めないわ。依頼は必ず完遂してみせる」
「ああ。だけど気を付けろ。私はあいつらの用心棒を続けるぞ。約束したからな」
「望むところよ!……ところで、値段次第ではこっちにつかない?」
「ラーメンもろくに食えない奴が無茶するな……闇金とかに手を出すなよ、アビドスの二の舞になるぞ」
「ん、セツナ。それは失礼」
シロコに銃口で小突かれる。いや事実だろう。
「くっ……とにかく、覚えてなさいよ!逃げ…じゃない、退却するわよ!ムツキ、ハルカ、カヨコ!」
「あはは!完全に三流悪役の台詞…ってアルちゃんもボロボロじゃん!」
「アル様を傷つけた…?」
「ハルカ、これ以上ややこしくしないで帰るよ」
そう言って、アルは上着を翻してかっこつけながら三人を連れて去っていった。……部下のためなら命を張れる、かっこいいじゃないか。敵ながら天晴だ。奢って本当によかったよ。
「“おつかれ、セツナ”」
「うへー、だいぶやられたねえ」
「いったいなんだったんでしょうか…?」
「さあ……?」
「ん。おもしろい子達だった」
「……思ったよりも、アビドスを狙っている輩は本気だってことらしいぞ」
ヘルメット団みたいなチンピラだけじゃなく、便利屋68みたいな結構強い奴らまで雇ってきたってことはそういうこと、なんだろうな。
スナイパーライフルを片手で撃てる女が弱いわけがない。かっこいいのもかわいいのも面白いのもいけるアルは本当にいいキャラ。
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