今回はアニメでも活躍してる彼の登場。楽しんでいただけたら幸いです。
マーケットガードによる封鎖を、私が先導してビルの上を飛び越えることで回避。先生は私が担いだ。大人と言っても私たちにとっては軽いもんだ。
《「封鎖地点を突破。皆さん、お疲れさまでした」》
「“ありがとうセツナ。もう大丈夫。先生としてこれでよかったのが疑問だけど”」
「うう……生徒会の皆さんに会わせる顔がありません……」
「シロコちゃん。記録は手に入ったんだよね?」
「記録?」
「ん。カイザーローンが、私たちのお金を闇銀行に運んでいたという証拠になる、集金の際の受領証明書の記録。ちゃんと手に入れた、はず」
そう言って持っていたバッグを開けるシロコ。その中には、カバンいっぱいのクレジットが詰め込まれていた。ああ、そうなるか……。
「なんじゃこりゃ~!」
「シロコ先輩、お金盗んだの!?」
「証拠の書類はちゃんとある。これは銀行員が勝手に入れたもの。重かった」
「10万クレジットがこんなに……軽く一億はあるな」
「やった!早く持って帰ろう!」
「“セリカ、ちょっと待って”」
セリカがお金を持って帰ろうと言い出すが、先生と通信越しのアヤネが制止する。確かにセリカの言う通り、元はこいつらが稼いだお金で、もしかしたら犯罪者の武器や兵器に変えられていたんだろうが……。
「犯罪で手に入れた金でアビドスを取り戻すのか?」
「っ…悪人のお金を盗んで何が悪いの!?」
「“本当に、それでいいのかい?”」
「セツナちゃんは、どう思うの?」
「私は、傷つけられたから傷つけるという手段を選んだ人間だ。同じ手段を使うってことは同じに堕ちることと同義だ。それでいいなら私は砂を利用する方法以外も提示できた。ノノミの親の金であるゴールドカードも使えばいい。お前たちが自分たちで稼いだ金で借金を返したい、というから私があの方法を提示したんだぞ。だがその方法は……ホシノが反対する、そうだろう」
「ん。その通り」
ホシノに問われたから、私の経験談も交えて話すとシロコも賛同する。ノノミはセリカの意見に賛同だったようだが、ホシノに視線を向けると頷いた。
「さすがはシロコちゃんと、私とやりあったセツナちゃんだ。私の事をわかってるねぇ。私たちに必要なのは書類だけ。お金なら、セツナちゃんの提示した方法で、この件さえ解決できれば何とかなる。それに、悪人の資金だからいいってことにしたら、次はどうする?その次は?」
「……経験談から言わせてもらうと、止まらなくなるな」
力で解決する、ということに私は全く忌避感を抱いていなかったからな。
「そう。これに慣れちゃうと、この先またピンチになった時、しょうがないよね~とか言いながらやっちゃいけないことまでやっちゃうよ。セツナちゃんを悪くは言わないけど、おじさんとしては可愛い後輩がそうなっちゃうのは嫌だな」
「そうでした!きちんとした方法で返済しない限り、健全なアビドス高校ではなくなってしまう!そういうことなんですね!」
「しょゆこと」
「“もらうのは必要な書類だけで。これでいいね?”」
「……わかったわよ」
その後、ヒフミの提案で金の入ったバッグはその場に置いていこうということになったのだが、そこに気配を感じて刀の切っ先を向けると、アルがいた。封鎖を回避したのに追ってきただと…!?
「心配しないで!私は敵じゃないわ!」
「さっきゲヘナに襲われたばかりでな。信用はできない」
「でも、これだけは伝えさせてほしいの!さっきの襲撃、見せてもらったわ!奇抜ながらも圧倒的な強さの剣士で引っ掻き回して、そこに真打登場!物の数分で攻略して、見事に撤収……稀にみる鮮やかなアウトローっぷりだったわ。正直、すごく衝撃的だったというか……」
「なにが言いたいんだ、纏めろ」
「感動したわ!私も頑張る!あなたたちの名前を教えて!」
「名前?あびどsむぐっ」
「はーい、2号は黙っててねー!」
馬鹿正直に名乗ろうとしたシロコの口をセリカが塞ぐ。害はなさそうだな。しかし組織名とかあるわよね?なんて言われても、なあ。私はホシノに視線を向ける。覆面を被っていてもわかるぐらい困っていた。すると口を開いたのは、ノノミだった。
「はい、おっしゃることはよーくわかりました!私たちはそう、覆面水着団です!」
「どこが水着だ。私に至ってはヘルメットだぞおい」
「ふふふのふ!目には目を、歯に歯を!無慈悲に、孤高に、我が道の如く魔境を行く!それが私らのモットーだよ!」
「覆面水着団…!?なんてクール、かっこよすぎるわ…!」
ホシノがノノミに続いて感激した顔を浮かべるアル。お前の感性がわからんぞ陸八魔アル。なんかトリップしている間に私たちは撤収するのだった。
「私は自分の制服と荷物を回収してから合流する」
「“わかった、気を付けて”」
途中で対策委員会と別れて、荷物を回収しに向かう。よし、盗まれてない様だな。このスケバンの服は持ち主も見当たらないし、このままもらうか。正体を隠すのに便利だ。……さて。
「お前、なんだ?」
「クックック……さすがのお手並みですね……御剣セツナさん」
引き抜いた刀の切っ先を路地裏に向ける。すると、暗闇にボウ…ッと右目と笑っている口の様な白い光が浮かび上がり、コツコツと靴音を立てながら姿を現したのは、異様な“大人”だった。
「おやおや。そんなに殺気立たないでいただきたい。私の事はそうですね……彼女の言葉を借りるなら“黒服”とでも名乗りましょうか」
黒いスーツと黒い手袋に身を包んだその体は影の様に黒く無機質で、右目にあたる箇所に穴が開いたように白く発光しており、そこから顔全体に亀裂が走っておりそこからモヤのようなものが出ている。およそ人間とは思えない姿をした“黒服”と名乗ったそれは軽く一礼した。
「会えて光栄ですよ。興味深い神秘を有する生徒……だがしかし、此度こうして参ったのは他でもありません。その“刀”を手放してもらいたいのです」
「なんだって?」
“黒服”はまるで授業でもするように指を立てながら腰に手をやり首を傾けて続ける。
「その刀は不幸を呼び寄せる。大なり小なり、主にとっての不幸という名の災厄を引き起こす妖刀なのです。そしてそれは、貴女一人を排除するためだけに、キヴォトス全体に及ぶ可能性もある……我々としても好ましくない」
「ああ、その話は聞いた。お前の言うことを信じるなら本当の事なんだろうな」
「クックック……もちろん、貴女にとって刀が大事なものであることは存じております。代わりの刀を用意いたしましょう。その妖刀に勝るも劣らぬ名刀を差し上げます。どうか、手放していただけないでしょうか?」
そう提案してくる“黒服”に、私が返したのは抜刀だった。すんでのところで身を引いて回避した“黒服”は不思議そうに首を傾げる。
「おや。何か気に障りましたでしょうか。あなたにとっても悪い話ではないはずですが……?」
「話は簡単だ。まず、お前が信用できない。それにその話が本当なら、この刀を利用して不幸を引き起こすこともできるだろう。そして第二に」
私が不敵に笑み、刃先で自らの顔を映し、反対側で“黒服”を反射しながら告げる。
「その不幸はすべてぶった斬ってしまえば関係ない。これは私の刀だ。誰が手放すものか」
「それは残念……しかし、あの“ベアトリーチェ”とすら敵対した貴女ならこうなるかもしれないと心のどこかで思ってました」
「ベアトリーチェ?」
「貴女はきっとこの選択を後悔することになります。我々ゲマトリアとしても強硬手段を取らざるを得ません」
そう言いながら、また路地裏の暗闇に溶けていく“黒服”に斬撃を叩き込むが、まるで実体がないように避けられる。逃げられる…!?
「ゲマトリア…?おい、私の知らない名前ばかり出すな!」
「また会えることを楽しみにしていますよ……御剣セツナさん」
そう言い残して、“黒服”は完全に姿を消したのだった。……上等だ。お前の言う通りになってたまるか。私は、私に降り注ぐ不幸はすべて叩き斬ってみせる。
黒服というかゲマトリア大好きです。そういうこったあ!
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