今回は題名の通りの大混戦。楽しんでいただけたら幸いです。
フユが提案、ゑみが計画した“慈愛の怪盗”を追い詰める手段は、至極単純だった。まず、ペペを始めとした構成員が、「不自然な事故」が起きている場所を特定。その足取りを追う、そんな単純な策だ。同時に私が一人で歩き、隙を見せることで鞘を盗みに来させるという二段構えの策だ。さすがに一日でできる策ではなく、翌日まで跨いでしまうため昨日はトリニティに帰りそびれたが、まあ誰も気にしないだろう。
「ノゾム、レイラ、ショウコ、どうだ?」
《「ノゾムや。住宅街で崩壊した家屋の中にアジトにしてた痕跡があっただけやんな」》
《「こちらレイラ。なんか砂漠で間欠泉が噴き出たってところを見に来たんやけど特に痕跡ないなあ」》
《「ショウコです。アビドス市街地で派手な爆発があったラーメン屋に来てるんやけど、聞き込みに寄ればちょうど食べに来ていて巻き込まれた生徒が剥き身の刀を持ってたって情報が在りました。つい先刻です」》
「それ全部刀のせいなら懲りないなあの怪盗も……わかった。アビドス市街地が一番新しいんだな。ちょうど近くにいるから移動する」
無線で次々と連絡が入る。そう言えばここの近くは紫関ラーメンがあったか。慈愛の怪盗から刀を取り返したらワレワレヘルメット団に奢ってやっても………いや待て。
「おいショウコ。そのラーメン屋の名前は?」
《「え?紫関ラーメンですけど……」》
嫌な予感が当たった。よりにもよってか。なんであそこ爆発するんだ。恩こそ与えど恨みを買うような人じゃないぞあそこの大将は。
「……なんで爆発した?」
《「爆発物が偶然仕掛けられたみたいやけど……」》
私の刀を持った慈愛の怪盗が立ち寄ったせいなら大将に会わせる顔がないんだが。……まだ近くにいるかもしれない。急ぐか。近くのビルに駆け込み、階段を駆け上り、屋上に出て砂にまみれたそこを走り抜ける。いつぞやみたいに爆発を利用はできないが……!
「こっちの方が、早い!」
屋上の縁まで走ると跳躍。ビルとビルの間を飛び越え、受け身を取って転がり体勢を立て直して再び走り、跳躍して次のビル……は屋上が高かったので、ガラス窓を蹴破り中に入って屋上を目指してまた跳ぶのを繰り返す。
「なんで砲撃がー!?」
すると、爆発音とともに悲鳴が聞こえた。そろそろ紫関ラーメンの近くだ。不幸な目に遭っているとしたら一人しかいない。目の前の窓を蹴破り、眼下を見下ろす。車の影に隠れて様子を窺っているケモミミのスケバンの生徒が見えた。その手には逆手に私の刀が握られている。
「見つけたぞ、慈愛の怪盗!」
「なっ……こんな早くにとは…!?」
空中で落下しながら腰に下げた「ガラクタ」に巻き付けた包帯をほどき、柄に包帯を結び付けたまま、「ガラクタ」を放り投げてグルングルンと頭上で回転させ、勢いよく振り下ろす。それは鎖鎌の様な軌道を描いて車に突き刺さり、慈愛の怪盗は飛びのいて変装を解いた。
「嗚呼、中々どうして……やりますね!」
変装を解いて純白のスーツとマントを身に纏って目元にはドミノマスクを身に着けている姿となった慈愛の怪盗刀を構え、私が腕力で引き抜いてもう一度振り下ろした「ガラクタ」と刃をぶつけて弾き飛ばし、私は着地。包帯を引いて「ガラクタ」を手に取り、両手で持って顔の横に構える。
「散々不幸な目に遭ったらしいな。それを握るからだ」
「襲い来る不幸が何のその。これを鞘と揃えて保管するまでは諦めることなど、ありえません。その腰に下げた鞘もいただきます」
「できるもんならな!」
今回は罠を仕掛けている暇もなかったはずだ。即席のトラップにさえ気を付ければ、あとは真っ向勝負。私に分がある!距離を詰め、へし折れている「ガラクタ」の刀身を縦一文字に振り下ろす。慈愛の怪盗は両手で構えた刀で受け止め、一回転してローリングソバットを叩き込んできて、「ガラクタ」を盾にするも吹き飛ばされる。
「リーチの差は歴然、私が有利です」
「寝言は寝て言え。ろくに振ったこともないやつが扱えるものじゃない!」
「それはどうでしょう!私の得物は
何度も斬り結ぶも、初めて刀を振ったとは思えない身のこなしで対応してくる慈愛の怪盗。私はたまらず、距離を取りながら「ガラクタ」をぶん投げ、右手で包帯を引いて振り回して慈愛の怪盗を狙うも、華麗な身のこなしで次々と回避。当たりそうな軌道は手にした刀で斬り弾き、右手で包帯を振り回しながら鞘を左手で引き抜いて私が繰り出した突きも、手を沿えた刃で逸らして回転、取り出したマスケット銃を撃ってくる。
「私の刀だ、返せ!」
包帯を引いて手に取った「ガラクタ」で弾丸を弾き、距離を詰めて慈愛の怪盗と鍔せり合いながら、道路に転がる私達。するとそこは既に戦場になっていた。
「……何が起きてるんだ?」
「私の方が説明が欲しいものですね。腹ごなしに昼食をいただいていただけだったというのに…」
ホシノが不在のアビドス廃校対策委員会と便利屋
「ん。セツナ、なんでここに?」
「これは僥倖。また会ったわね、御剣セツナ…!」
「シロコにアイナ…なにしてるんだ」
「ん。風紀委員会が襲ってきたから対処してる」
「アコ先輩の命令でね……闇銀行での失態を取り返さないといけないの。貴方に勝てば、取り返せるかしら…!」
「おや。私は関係なさそうなので、お暇させて……」
「逃がすか私の刀」
荷電粒子ソードを引き抜こうとしたアイナをシロコが銃弾で牽制し、逃げようとした慈愛の怪盗は私の踏み込みを受け止める。よつどもえだ。
「セツナの刀を盗んだ奴…?ふっ…!」
「おっと、これは手厳しい、ですね!」
「御剣セツナ、いつもの刀はどうしたの!」
「邪魔をするな風紀委員会!」
シロコが慈愛の怪盗を撃って反撃のマスケット銃を撃ち、高速の抜刀を叩き込んだアイナの攻撃を宙返りで回避した私がそのまま慈愛の怪盗に斬りかかれば、煙幕を張って逃げようとしたところにシロコの弾幕が放たれ、そこから飛び出してきたところにアイナの高速抜刀が炸裂。吹き飛ばされた慈愛の怪盗は刀を手放し、私がそれを受け止めようとするも、爆風が刀を煽って宙を舞う。ムツキの爆弾か…!
「とらせませんよ!」
慈愛の怪盗がワイヤーを伸ばして刀に巻き付け、回収。そこにシロコのドローンの爆撃が放たれ、アイナが引き抜いたグロックで弾丸を撃ち込まれたミサイルが爆発。私はその爆発に乗って、「ガラクタ」を両手で握って勢いのままに袈裟斬りを慈愛の怪盗に叩き込んだ。
「ううっ…!?」
「返してもらうぞ、私の刀を!」
そのまま左手で握った刀を着地と共に鞘に納刀、包帯で巻き付けた「ガラクタ」を腰に下げて鞘と柄を持って軽く引き抜き、鈍く光る刀身を確認する。おかえり、相棒。シロコとアイナはそれぞれに銃口を向けて睨み合っていて動けないようだ。
「…ふむ。先程までの言葉を撤回するとしましょう。貴女はー――例えその刀を持っておらずとも相当な実力をお持ちなのですね。それに
「逃がすと思っているのか?」
「それはおすすめしません。横にご注意を」
「っ!」
瞬間、飛んできた銃弾を抜刀した刀で斬り飛ばす。そちらを向けば、風紀委員会の切り込み隊長である銀鏡イオリがライフルを構えてこちらを狙っていた。振り返る。既に慈愛の怪盗は消えていた。逃がしたか。
「アイナ!なにをしているんだ!って…お前!御剣セツナ!」
「また会ったな風紀委員会。委員長はいないようだが大丈夫か?」
「委員長がいなくてもお前には二度と負けない!」
前回風紀委員会と戦った時は空崎ヒナにひっくり返されるまでは私の優勢で事が運んでいたが、今回はどうなるかな。だが、ようやく追いついた様だ。
「悪いな。今回は、私一人じゃない」
「間に合ったようやな!」
「怪盗の相手のはずが、風紀委員会の様ですけど……」
「楽しい時間やな!」
ナイ、ゑみ、ペペが率いたワレワレヘルメット団が駆け付け、対策委員会、便利屋、風紀委員会の三者が注目する中で私は刀を引き抜いて突きつける。フユ風に言うならば、戦争を始めよう。
包帯を利用した「ガラクタ」による遠距離攻撃を獲得。折れてない刀じゃこの使い方は難しい。
今作では紫関ラーメン爆発は便利屋のせいだけど原因に刀の呪いも入ってます。この要素結構大事。
当たり前だけど風紀委員会にアイナも参戦。闇銀行でのいざこざは上司に怒られた模様。風紀委員会にとってセツナは怨敵です。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。