今回はそんなヒナVSセツナ。楽しんでいただけたら幸いです。
「くっ……まさかあの御剣セツナがいるとは、想定外でした……」
ゲヘナの本拠地で情報を俯瞰していた天雨アコは思い出す。2ヶ月ほど前のこと。ゲヘナ学区でトリニティの学生が暴れているという情報を聞きつけ、委員長の手を煩わせないようにと自ら部隊を率いて駆けつけたのだが、そこにいたのは銃すら持たず、刀一本携えて雨の中佇んでいたトリニティの学生ただ一人。勝利を確信して制圧にかかったのだが、物の数秒で部下のほとんどを返り討ちにされ、実力者であるイオリの弾丸すら斬り弾いて接近を許しノックアウトされてしまった。ゲヘナ最強である風紀委員会がよりにもよってトリニティに敗北、という最悪の状況を覚悟したほどだった。ギリギリで駆け付けた委員長が制圧してなければ、考えるのも恐ろしい。アコにとってセツナはトラウマそのものだった。そのトラウマが、再び現れた。
「御剣セツナに勝てるならとヒナ委員長には無断で許可した、闇銀行の金を使ってミレニアムのエンジニア部に発注させた第百十壱式荷電粒子ソードまで通じないなんて……シャーレの先生の身柄を確保するはずが。いえ、元々トリニティ総合学園のティーパーティーが先生の情報を手に入れていたという話が、御剣セツナからだったとしたら辻褄が合う…?」
セツナは特に関係ないヒフミから報告がティーパーティーに渡っただけだが知る由はない。すべて、委員長には内緒で進めていたことがすべて裏目に出てしまった。セツナへのリベンジに燃えるアイナを焚きつけて手に入れた対近接仕様の武器はあっさり攻略されてしまい、委員長に内緒で便利屋の確保という名目で出撃した部隊は虫の息。セツナがアイナに押さえられていたからまだ壊滅には陥ってないが、セツナの勝利は目前、どうなるかは明白だった。こうなってしまっては隠し通すことも不可能。なんならアビドスという弱体化激しい学区に勝手に攻め込んだあげくに敗北したというレッテルまでついてしまう。風紀委員会の行政官として、どうにかしないといけなかった。
「こうなれば後方に控えさせた部隊も参戦させて物量で……」
《「アコ。この状況、あとできちんと説明してもらうから」》
「…え?ひ、ヒナ委員長!?」
そして、今一番聞きたかったのか聞きたくなかったのかわからない、誰よりも敬意を向ける声が通信越しに聞こえ、魔王が戦場に舞い降りる。
「……久しぶり。まだ懲りずに暴れてるみたいね?」
「あんたほどの相手は中々いなかったよ」
アイナにとどめを刺す直前、銃口を後頭部に突きつけられて止めざるを得なかった。一度痛感した圧倒的な強さ。ゲヘナ最強、風紀委員会の魔王、空崎ヒナ。さすがに、動けないな。
《「ひ、ヒナ委員長。これは……素行の悪い生徒たちを捕まえようとっ」》
「便利屋
《「え。そんな馬鹿な!?ここにいたはず……一体いつの間に!?」》
便利屋はしっかり逃げたらしい。まあ風紀委員長とかゲヘナからしたら畏怖の対象だし挑む理由がないわな。
《「委員長ぅ!すべて説明致します!」》
「いやもういい。大体把握した。私たちは風紀委員会であって生徒会ではないことを忘れないで、アコ。……それで、アビドスと玄龍門くずれはともかく、あなたはここになんでいるの?御剣セツナ」
「風紀委員会だとわかった上で喧嘩を売りに来た、と言ったら?」
慈愛の怪盗から刀を取り戻していたら巻き込まれただけだが、話を聞いていた感じ風紀委員会は先生を強制的に庇護下に置こうとしてたみたいだから、それに対策委員会が抵抗した形だろう。なら味方するのが道理だ。
「あんまり他学区で暴れたくないけど……貴方はアビドス学区とは関係ない。風紀委員会の長として、連行させてもらう」
「ああ、願ったりかなったりだ。あいつらは関係ない」
「“セツナ!”」
「セツナさん!わいらは……」
「黙ってろ先生。ワレワレヘルメット団は下がってろ。私が此奴と戦いたいんだ」
瞬間。ヒナの手に握られた機関銃が火を噴き、私はわざと体制を崩すことで倒れ込む様に回避。その場でブレイクダンスの様に抜刀しながら脚を振り回し、足払い。ヒナは跳躍して翼を広げ滑空し着地して機関銃を構え、私は咄嗟にゑみさんが地雷で破壊したビルの跡地に飛び込むと同時に、弾幕が壁を破壊していく。数百人単位が所属する風紀委員会で、彼女一人でその戦力の半分に匹敵するという実力は相変らずか。私たちが戦っているのを見ながら、それぞれの勢力が怪我人を回収して離れているのが見える。アイナもチナツに回収されたようだ。気にしなくてよさそうだな!
「どこを見ている!」
「見えている」
天井と壁が一部吹き取んでいる二階から跳躍し、振り下ろした刀を、片手で持ち上げた機関銃で受け止めるヒナ。そのまま赤熱した銃身を叩きつけてきて、咄嗟に受け止めた左腕が焼けながらも殴り飛ばされ、アスファルトをゴロゴロと転がっていくところに、容赦なく追撃。全身を高威力の弾幕で打ちのめされる。このままじゃ前回の二の舞だ。
「喰らえや!」
刀を逆手に持ち替え、投げ槍の様に構えて投擲。高速で突き進んだ刀はヒナの額に炸裂するも、信じられないぐらいの頑強さで弾き飛ばし、ビクともしないどころか、落下してきた刀を手に取ってアスファルトに突き刺してしまった。
「自慢の得物はこっちの手の内だけど」
「愛刀はもう一本あるんでね!」
背中から「ガラクタ」を引き抜き包帯をほどいて右手に持ち突進。再装填された弾幕を、顔に当たりそうなものだけ片っ端から叩き斬りながら突き進むと、「ガラクタ」を投げナイフの様に投擲する。
「同じ手段を何度も…!」
「同じじゃないさ!」
受け止める気満々で機関銃を振り上げるヒナだったが、飛んでいく「ガラクタ」に結ばれた包帯を右手で掴み、ヒナの眼前で急静止。驚いている顔のヒナ持つ機関銃に「ガラクタ」をフックの様にして包帯を銃身に巻きつけ、両手で包帯を持って引っ張り取り上げる。
「自慢の得物はこっちにあるぞ」
「なら貴女の得物を使わせてもらう」
そう言って刀をアスファルトから引き抜いたヒナの姿がぶれ、直感のままに横に構えた「ガラクタ」とかち合い吹き飛ばされる。なんて膂力だ。単純なスペックでいうなら、キヴォトスでもトップか…!
「貴女の動きは何度も見ている。使うことは造作もない」
「自信を失くすよ…!」
上段。下段。鳩尾への突き。返しの籠手。袈裟斬り。鋭く速い斬撃を、「ガラクタ」で受け止めていくも、さっきのビル跡地まで追い込まれていく。さすがにリーチの差がえぐいか。だがしかし、その刀は甘くはないぞ。
「っ!?」
「隙あり!」
私が通り過ぎた後に追い詰めてきたヒナの上の瓦礫が崩れ落ち、咄嗟に斬り飛ばしたヒナに、「ガラクタ」による一撃を叩き込む。完全に予想だにしていなかった瓦礫に気をとられたところに入った一撃は、ヒナを斬り飛ばすことに成功して。カチッとヒナの足元で音が鳴る。ゑみの地雷の残りだった。運が悪いな。
「ぐうっ!?」
「その刀は呪われている、らしいぞ?」
爆発で吹き飛ばされ、アスファルトに飛び出したヒナに信じられないものでも見るかのような視線を向ける風紀委員会の面々。ヒナの手元から吹き飛ばされ、アスファルトに転がった刀を回収してヒナの眼前に突きつける。
「私の勝ちだ」
「委員長!」
瞬間、声が聞こえて振り向く。そこには、なにかを投げた体勢のアイナがいて。黒いものが横切った気がして振り返ると、アイナの銃……グロックを左手でキャッチしたヒナがすかさず持ち替えて構えていら。
「認める。私一人では勝てなかった」
2連射。放たれた弾丸を、身を捩って避ける。しかし外れた弾丸のひとつは様式美の如く跳弾して私目掛けて飛んできて、しかしそれに対しては刀を振るって弾き飛ばす。ハンドガン程度じゃ当たっても痛いぐらいだが…!?
「がはっ……」
頭部に襲った激痛に、顔をしかめる。振り向けば、硝煙を吐き出しているヒナの機関銃が見えて。二発目は、あれのトリガーを狙ったのか……。意識が遠のき、倒れ伏す。ヒナの冷静ながらも困惑した顔が最後に見えた。
「ちくしょう……」
「当たると思わなかったけど……本当に銃に嫌われているのね」
意識外は、無理だ。ぐふっ。
ちなみに一戦目はヒナの制圧力に普通に押し負けた形。あの弾幕をフットワークだけで避けるのは無理だった。
弾丸引き寄せるのは強みでもあるけど同時にちゃんと弱点でもあるんですよね。
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