主人公の名前と過去が判明。楽しんでいただけたら幸いです。
遅くなってしまった、と私こと羽川ハスミは嘆息する。出どころのわからない無数の不法流通についての責任を問うために連邦生徒会に訪れたわけですが、まさかここまでたった一人の生徒に手古摺るとは。ツルギを始めとして、私、マシロ、イチカまで総動員してようやく抑え込めるとは、末恐ろしい限りです。
下手人はトリニティ総合学園二年、
通報を受けて駆けつけた先で出くわしたのが最初でした。無数の弾痕が目立つ壁と、転がった複数の生徒たち。その中心で、荒い息を上げてこちらを睨みつけてくる、日本刀を手にした少女。その件の少女である御剣セツナは私達を見るなり、日本刀の先端をカラカラ音を立てて引きずりながら襲い掛かってきたので、愛用のスナイパーライフル「インペイルメント」の弾丸を腹部に叩き込んで即座に鎮圧。一時的に拘留しました。
なんでも、責苦に耐え切れず怒り爆発してしまった故の凶行だったらしいのですが、この時点で色々おかしい。銃弾すら「痛い」ですむ肉体を、銃も使わず気絶まで追い込んでいるのはどういうことなのでしょう。しかし恐ろしいのはここからでした。
御剣セツナは、再び同じことを繰り返した。正確には、性懲りもなくまたちょっかいを出した生徒に反撃しただけだったのですが、鎮圧に向かった私達を相手に、大立ち回りを演じてみせたのだ。驚異的な動体視力で弾丸の軌道を読んで刃で弾道を逸らし、美甘ネルを彷彿させる身体能力で弾丸を回避しながら、素早い一撃で正義実現委員会を倒していく姿は、鬼神を彷彿とさせて。たった一人に半壊状態に追いやられました。さすがにツルギには勝てませんでしたが、私もあと一歩まで追い込まれた。スナイパーライフルの弾丸を見てから回避しながら近づいてくるのは肝が冷えました……。
そんな御剣セツナだが、最近は学外でも暴れているらしい。毎度顔を隠しているが、刀を持っているトリニティ生ってだけで特定できるので特に意味はない。あのゲヘナ相手に大打撃を与えたのは正直胸がスッとしましたが、エデン条約の調印式を間近に控えたこの時期にやらかすのはやめてほしい。今回はミレニアム学区で暴れたらしい御剣セツナを、Cleaning&Clearingから引き渡してもらうのに時間を割かれてしまった。
「というわけで、セツナ。ここで大人しくしていてくださいね」
「なにがというわけでだ」
そのまま捕縛したセツナを連れて連邦生徒会まで来てしまったが、大人しくていてもらわないと困る。念押しして、私は連邦生徒会の首席行政官である七神リンの元に向かった。
しくじった。立ち入り禁止になっているミレニアムサイエンススクール学区の“廃墟”で鍛錬がてらロボ相手に適当に大立ち回りしていたらメイドの集団に鎮圧されてしまった。アレが噂に聞くCleaning&Clearingか。少数精鋭だけあって連携えぐかったな。羽川ハスミに引き渡されて連邦生徒会まで連れてこられたわけだが、刀はハスミに没収されているからどうしようもない。大人しく縛られたまま待っていよう。頭の中であのメイドたち相手にどう立ち回るか考えていると、ハスミが何人かの生徒と、これまた珍しい大人を連れてやってきた。
「……うん?どうしたんだ?」
「御剣セツナ。拘束を解くので手伝ってください。緊急事態です」
「はい?」
なんでも、現在キヴォトスでは連邦生徒会会長の失踪により、連邦生徒会がサンクトゥムタワーの行政制御権を失った状態でキヴォトス全体での混乱が大きくなりつつあるらしい。そこで件の人物、“先生”は連邦生徒会長が立ち上げた超法規的機関【連邦捜査部シャーレ】の顧問として任命され、これからシャーレオフィスに向かうところだったらしいが、シャーレオフィス周辺では戦闘がおきているとの情報が入ったとのこと。なるほど。
「“力を貸してくれるかな?”」
「たしかに私はお誂え向きだな…!」
「羽川ハスミ。彼女は?」
「御剣セツナ。トリニティの生徒です。実力は保証します」
「私達風紀員会も以前痛い目に遭わされましたね……」
「セツナさんが味方なら心強いです!」
先生とハスミ他、ミレニアムサイエンススクール セミナーの早瀬ユウカ、ゲヘナの風紀委員会の火宮チナツ、トリニティ自警団の守月スズミと共闘することになったが、足並み揃えていられない。ハスミから刀を受け取った私は、そのままシャーレオフィスのある方角に向けて、一人突撃する。複数のスケバンが暴れているな。あれか。戦車まで出してくるとはなかなか本気の様だ。
「ああん?何か見えた様な……!?」
中央でバルカン砲を撃ちまくっていたスケバンの目の前に移動し、抜刀。銃身を打ち上げて他のスケバンに当てさせ、そのままミドルキックで蹴り飛ばす。吹き飛ぶスケバンが撃ちっぱなしにしていたバルカン砲の流れ弾で何人かダウンした。
「なんだお前!」
「やんのかおらぁ!」
「かかってこい」
後ろからやってきたハスミたちが、先生の指示で私の背後の連中を倒しているのを横目に、ショットガンを手に特攻してきたスケバンの脚に一閃。軸足を強打して転倒したスケバンの首に刃を叩き込み、返しの刃で背後から襲い掛かってきた別のスケバンに一撃見舞い、宙返り。空中から唐竹割を見舞いながら背後に着地する。すると私を脅威と見たのか、戦車が突撃してきた。なるほど、銃でもないとそれにダメージを与えるのは難しいな。
「潰してやる!」
「甘い!」
砲弾を縦に斬り裂いて背後で爆発させ、そのまま突進。滑り込む様に戦車の砲身の下に潜り込み、そのままくるりと回転。砲身に刃を叩きつけ、砲身を折り曲げる。そうなったらどうなるかは自明の理で。
「しまっ……ぎゃああああああああ!?」
戦車は自爆し、大爆発。私は衝撃のまま転がり、刃をアスファルトに突き刺してブレーキをかける。一番のデカブツは倒したな。……さて。目の前には、狐の面を被った生徒が一人。その手には銃剣が握られていた。
「騒がしいと思ってきてみれば……とんだ蛮族がいたものですね」
「お前が主犯か?強いんだろうな」
「うふふふふ……では、始めましょうか?」
私の振るった刃と、狐面の生徒の銃剣がぶつかった。
銃の才能を犠牲にそれ以外にパラメータ振った系生徒、御剣セツナ。キヴォトストップ戦力には勝てないけど結構な暴れん坊でバーサーカー。ヘイローは葵の御紋から。
【挿絵表示】
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