トリニティでの話。楽しんでいただけたら幸いです。
あのあと、ミカのぐりぐりから解放されて、救護騎士団だと目立つということでミカの自宅でミカとミネ団長二人がかりで治療を受けていた。
「いたっ!?もう少し弱めに……」
「痛いのは自業自得じゃんね。ちゃんと消毒しないと、ばい菌が入るんだよ?」
「その通りです。大人しくしなさい、セツナさん」
「はい……」
ミネ団長壊すだけじゃなくて治療もちゃんとできたんだな……とは口が裂けても言えない。しかし手酷くやられていたようだ。高熱の銃身を受け止めた左腕の火傷に、回避を諦めた弾幕による裂傷。極めつけは頭部に受けた機関銃の打撲傷。結構な重症だ。
「もう、他校に喧嘩売るのは今更だから何も言わないけど……今回は何をやらかしたの?」
「………悪い、言えない」
「ミネちゃん」
「実力行使にかかります」
「待った!待った!言う、言う!風紀委員会と一戦交えたんだ!」
だんまりを決め込むつもりだったが、笑顔で告げたミカに頷いて盾を構えたミネ団長に降参、大人しく白状する。
「……風紀委員会って、ゲヘナの?」
「もしかして、風紀委員長と戦われたのですか?」
「あ、ああ……」
「そっかあ。私のセツナちゃんを傷物にしてくれたのはゲヘナかあ、そっかあ……」
「ミカ。待て、早まるな。エデン条約があるんだ、それはまずい」
拳を掲げて笑顔でわなわな震えだすミカに、ここで止めないとまずいことになると直感した私は引き留める。ミカのゲヘナ嫌いは知ってたから言いたくなかったのに……。
「セツナさん。貴方の戦闘行為も少し間違えたらエデン条約に影響があったと思うのですが……」
「……悪かった。そこまで頭、回らなかった。私馬鹿だからさ」
「セツナちゃんが馬鹿ならみんな大馬鹿になるんだけど、そこのところわかってる?トリニティきっての秀才でしょ?」
「主席の成績の持ち主の台詞ではないですね」
「……そんなことに意味はないから、さ」
それに意味があるなら、今の私はないからな…ミカに他の武器を使えばと提案され、刀を使うことに行きつかなければ、今でもただの的だっただろうな。そんな意を込めて笑顔を浮かべると、ミカとミネ団長は目が全然笑ってない笑顔を浮かべていて。
「やはり虐めていた生徒たち全員割り出して救済しましょうか」
「賛成じゃんね。私も混ぜて?」
「やめろよ正当防衛でもない暴力はただの暴力だぞ?」
全力で止めた結果、明日は安静にしておくと約束して私はあらためて帰路につくのだった。
翌日。暇なんで普通に教室に顔を出して授業に出た。ヒフミは本当に私と同じクラスだったらしく、ペロロ様について話したかったようだが軽くあしらった。悪いとは思うが巻き込むわけにはいかないからな。放課後、私は校舎裏に呼び出された。無視してもいいが後から面倒なので大人しく従う。
「最近顔も見せないと思ったらいきなりなに?」
「阿慈谷さんといつの間に仲良くなったわけ?」
「授業もまともに受けてないのについていけてるってどういうこと?カンニングでもしたの?」
「銃もまともに使えないくせに生意気」
「こんなもの持ってたって立場は変わらないのよ」
「なにこれガラクタ?こんなものにまで縋らないといけないわけ?」
七人ほどに囲まれてそんないちゃもんをつけられ、刀を奪われ銃を向けられる。さすがはトリニティのお嬢様方だ。バレなければなにをしてもいい。銃も使えないくせに勉強ができる生意気な奴は撃ってもいい。刀さえ取り上げてしまえば反則もできない、と。驚いた。ヘルメット団よりも三下な台詞だ。実に感動的だな、前回負けた理由である刀を取り上げる学習能力もある。だが無意味だ。
「さすがに、慣れた」
ミネ団長。ホシノ。ヒナ。ワカモ。ツルギ。ネル。ここ最近でキヴォトス中の強い奴らと戦った。そいつらに比べたら、格段に遅い。ステップ移動で弾丸を避け、「ガラクタ」を引き抜いて足元に向かって包帯に繋いで放り投げ、引っ張って三人を転倒させる。そのまま手にした「ガラクタ」で一閃。銃口をあらぬ方に向けて弾丸を壁に当てさせ、胸ぐらを掴んで別の奴の元に放り投げてダブルノックアウトする。そのまま「ガラクタ」を逆手に持ち直して宙返りして弾幕を回避。弾倉全部フルオートで撃ち尽くしたアサルトライフルの弾倉を取り換えている間に接近して折れた刀身を頸動脈に押し付けて窒息させる。あと一人。私の刀を奪ったリーダー格だ。
「刀を返してくれたら見逃してやるぞ?」
「こ、この、化け物が!」
倒れた味方に当たるのも構わず、コンパクトショットガンが乱射される。フェイントも何も織り交ぜていないそれはステップ移動で簡単に避けられ、「ガラクタ」を投擲。奴の手に握られた刀の柄に巻き付いて引き抜き、それを手にして一閃。首に一撃叩き込まれた同級生は倒れ伏し、七人全員が倒れ伏したのを確認。鞘を奪い取り、刀の刀身を納めて一息つく。
「……悪いミカ。安静にするのは無理だった」
……ミカさえいなければトリニティなんて即退学してワレワレヘルメット団にでも入れてもらうんだがなあ。私は誰も見ていないことを確認すると、その場を後にしたのだった。これだから授業にまともに出たくないんだ。ヒフミには悪いがな。……いや、ペロロ様についてはいろいろ聞いておいた方がよかったかも…?
「今日は行けなくて悪かったな。何か進展はあったか?」
その日の夕方、家に帰って休養していた私は、対策委員会のアヤネに連絡を入れていた。一応用心棒なのに一日開けてしまった謝罪の電話だ。するとアビドス自治区が既にアビドスのものではなく、数年前から別のところに権利が移ったという話を紫関ラーメンの大将から聞いて調査しているという報告と、息抜きにみんなで水族館に行くことにしたので私もどうかという話を振ってきた。
「いや、私は良いよ。対策委員会だけで楽しむといい。……いや、先生もいるから今更?ならなおさら、よそ者の私はいない方がいいだろ」
そう告げて電話を切る。……水族館なんて、友達と行く場所だろうからな。私は、そうじゃない。ベランダからの夕焼けを眺めて黄昏ながら手入れする私の手元で、刀の刀身が夕焼けを反射したのか怪しく光った気がした。
それは、セツナが慈愛の怪盗を追っていた、同時刻。
「これはこれは。お待ちしていましたよ。暁のホルス……いや、小鳥遊ホシノさんでしたね。恐れ入りました、まさかあの私でも手を焼く“トリニティの狂剣”を丸め込んで用心棒にしてしまうとは」
「……今度はなんの用なのさ。セツナちゃんのことは、そんなんじゃないよ」
「フフフッ、状況が変わりましてね。このたびは再度、アビドス最高の神秘をお持ちのホシノさんにご提案と、警告をしておこうかと思いまして」
「…提案と警告?ふざけるな!今更何を……」
「まあまあ、落ち着いてください。貴女に、決して拒めないであろう提案を一つ。そしてこれは本当に、親切心での警告なのですが……」
「御剣セツナさん。彼女、死にますよ」
トリニティにいるのはほとんどが敵である。
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