セツナ、ミレニアムへ。楽しんでいただけたら幸いです。
……ミカやミネ団長に迷惑をかけないために、そのままトリニティを飛び出してきたが……どうしたものかな。アビドス……はワレワレヘルメット団は今どこにいるかわからない、ホシノにも用心棒のクビを言い渡されたからもはや無関係、頼れない。はは、最悪、ゲヘナに殴りこんでわざと捕まるか…?いや、ミカにこれ以上迷惑かけれないからそれはダメだな。電車に揺られて、外の風景を見る。ミレニアムタワーと呼ばれる超高層ビルがそびえ立っているのが見えた。
「……そうか。ここは、ミレニアムか」
なんともなしに、停車した電車から降りると最新技術が使われた都市が広がっていた。…ミレニアムサイエンススクール。最近だとアイナのメカ刀がここのエンジニア部で開発されたって話があったな。科学技術に力を入れている新興の学園であり「千年難題」という今の技術では解けない7つの難題に立ち向かう研究機関の集まり。このキヴォトスにおいて「最先端」「最新鋭」と呼称されるものの多くがミレニアムで開発されたものであり、その多くがキヴォトスに普及しているため、歴史が浅いにもかかわらず、ゲヘナ学園やトリニティ総合学園などの巨大な古参校にひけを取らない影響力を持ち、キヴォトス三大学園の一角を担っている。ミレニアム内の移動は主にモノレールを使うなどかなり広く、管理されてない土地もある。私はその管理されてないミレニアム郊外にある“廃墟”を訪れていた。
「……もう懐かしいな。いろいろあった」
ここ“廃墟”と呼ばれし廃都市エリアは、多くの自動防衛機構が闊歩している危険地帯であり、かなり前から連邦生徒会により立ち入りが禁止されている区域だ。先生がキヴォトスに来たその日、私はここで鍛錬がてら自動防衛機構相手に大立ち回りを演じて、騒ぎを聞きつけて出撃を要請されたらしいCleaning&Clearingの襲撃を受けて、そのリーダーである美甘ネルに敗北。連邦生徒会まで引き渡されたのが記憶に新しい。立ち入り禁止というだけあって掃除もされてないのか、暴れた時の残骸がそのまま転がってる。
「………そう考えるとおかしい話なんだよな」
曰く、刀は人を斬るものなのだという。しかし弾丸すらあまり通じないキヴォトスの人間はもちろん、その銃ですら私は全力で斬っているというのに切断はできなかった。なのに、過去の超遺物であるらしいこいつら……防衛機構は容易く切断できている。なぜか。
「黒服が神秘どうこう言ってたのでも関係、してんのかね!」
防衛機構の頭部と思われる部位に刀を突き刺す。あっさり貫通したそれを持ち上げる。……さて。
「私がミレニアムについた時からつけていたな。何者だ!」
「っ!」
持ち上げた鉄くずを、刀を振って件の人物に叩きつける。物陰に隠れていた人物はスカートを翻し、着地。現れたのは……白いアサルトライフルを手にした、メイドであった。
「Cleaning&Clearing…?いや、知らない顔だな。何者だ!」
「コールサインゼロフォー……任務を遂行します」
無表情のメイドはアサルトライフルを一発ずつ撃って私を牽制しながら接近。狭い廃墟内で私は刀を横に振るうが、長い足による素早い身のこなしで回避され、グリップによる一撃が見舞われふら付く。だが一人なら…!
「縮地…!」
「!」
前傾姿勢に移行、奴の視界から消え、死角から一撃を見舞う。さすがに効いたようで、無表情が一瞬歪められた。その左手が耳にそっと当てられる、
「……マム。「武装」の使用の許可を。……承知しました。準備完了。「モード
「モード2…?」
するとショートスカートの下にロングスカートを着用したスタイルから一転、ショートスカートにノースリーブとなり、腕部と脚部に装着された装置がむき出しになった姿に衣替えするメイド。何かの機械…?フラッシュバックで思い出すのは、アイナの超人的な抜刀の速さ。……まさか!
「目標を、制圧します」
「はやっ…!?」
瞬間、私の縮地による抜刀と、単純なスピードによるメイドの銃撃が、交差する。狭い室内で共に相手の視界から姿を消し、攻撃をぶつけ合って火花だけが散る。人間離れしたスピード……あの機械か!なら、それをぶっ壊す…!?
「なにっ…!?」
奴の腕の機械目掛けた抜刀は、奴が振るった腕の生身部分で受け止められ、そのまま刀身を掴まれ投げ飛ばされてしまった。
「情報通り……生徒を斬ることはできない刀、確認」
「があっ!?」
背中から叩きつけられ、呻いたところに腕を掴まれ反転され、俯せで手を後ろに組まされてしまう体勢となる。やられた……こっちの刀の特性を、熟知しているだと…!?
「くそっ……」
「暴れたら、曲がってはいけない方向に腕が曲がります。そうなったら大好きな刀も振るえなくなりますよ、御剣セツナさん。無駄な抵抗はお勧めしません」
そうして私は捕縛され、駆け付けた「AMAS」とメイドに呼称されたロボット軍団に連れられて、車に乗せられどこかに連れていかれるのだった。
連れてこられたのは人気のない倉庫街。その一つに、メイドが私を連れてやってきた。腕は後ろ手に機械の手錠で拘束されて、刀も「ガラクタ」も水鉄砲もメイドに没収されてしまっていてどこにあるかもわからない。詰みか。するとパイプ椅子に座らされ、メイドが入口横に控える。すると、コツコツと靴音を立てて、黒を基調とした衣服と長い黒髪、それらと対照的な白のタートルネックを着用した色白の肌を持つ長身の生徒が目の前の暗闇から溶け込んでいたかのように現れた。
「私を簡単に抑え込むメイドに、案内するのは密室……随分と用心深いらしいな黒幕さん」
「万全を期しているだけよ。この会談を外部に知られたくないもの。私、
「調月リオ……?ミレニアムサイエンススクールを取り仕切るセミナーの生徒会長様がこんな銃も使えないただの生徒に何の用だ」
いきなり名乗ったかなりの大物に、眉を顰める。ミレニアムのトップが本当になんのようだ。
「勘違いしないで。私は貴女をスカウトしに来たの」
「スカウト…?」
「私は、あの廃墟に貴女が侵入した日から…ずっと、その戦いぶりを見てきた。貴女ほど近接戦闘に秀でた人間を私は他に知らないわ。まずは、このデータを見てもらえるかしら」
そう言って端末を操作したリオと私の間に表示されたのは、立体映像。それはかなりの数の演算によって導き出された災厄に見舞われるキヴォトスのデータが映し出されていた。……理解できてしまう、いじめっ子ども曰く優秀なだけの頭を呪うよ。これは、起こり得る未来だ。
「貴女が容易く残骸にせしめた自動防衛機構……それはいずれ、ミレニアムからキヴォトス全土に広がり破滅を齎す廃墟に潜む災厄『名も無き神々の女王』その尖兵なの。キヴォトスの人間でもそう簡単に対処できない代物よ」
「え?いや、だがあんなの簡単に……」
「それができるのは貴女だけなのよ、御剣セツナ。現状、あれを無傷で対処できるのは貴女一人しかいない。笑いたいと思えば笑えばいい。これは荒唐無稽な話で……」
「……笑う理由がない。黒服なんかの戯言とは違う。これは確かな演算の元に導き出された「結果」だろう」
「……貴女は、信じてくれるのね」
「信じるも何もこんなものを見せられたらな」
正直説得力が違う。見る者がちゃんと見れば、起こり得る可能性が高いと理解できてしまうデータだ。
「私は、貴女を非公式に雇いたい。私の護衛と、いずれ目覚める『名も無き神々の女王』とその尖兵を廃除するのが依頼内容よ。受けてくれるかしら?」
「私でよければ、協力させてくれ。だがそうだな……私を雇うなら高くつくぞ」
「理解しているわ。トリニティの人間をミレニアムのトップが秘密裏に雇うのだもの、それ相応の対価は払うつもり。なにがほしいのかしら?」
ふっ。そんなの決まっている。
「寝床。あと飲食の保証」
「え?」
「あとトリニティのトップに喧嘩売ってきたから、私を匿っていることがばれたら不味いかもな」
「え?」
「それと、個人的な問題で別の地区行く必要が出たらなにがあっても行くからそのつもりで」
「え?」
完全に呆けているリオは無視して思考する。…拠点を確保できたなら情報収集だ。ホシノになにがあったのかまずは知らないといけない。ミレニアムなのは逆にありがたいかもしれないな。
「……トキ。私は選択を間違えたかしら」
「合理的ではあったと思いますが、感情的に言うと間違えたかと」
「……そうなのね」
リオと手を組むセツナ。拠点を得るのは切実だったからしょうがないね。基本的に正しいと思ったことをやる女、それがセツナ。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。