今回はミレニアムでのセツナその2。楽しんでいただけたら幸いです。
ペンタブを手にしたモモイに言われて、さっきまでやっていた演武を再開する。今回は仮想の相手を(モモイに言われてしぶしぶ)ミドリがやることになった。仮想と言っても実弾だが。蛍光色の緑色の弾丸が乱射される。
「ふっ!」
「あ、当たらないよお姉ちゃん~!?」
納刀しての宙返りで弾幕を回避、距離をとり、そこに放たれた弾幕も、横に回転しながらかっとび抜刀。回転する傘のイメージで弾丸を斬り払いながら着地。そのまま縮地で背後を取り、刀を振るう。慌ててしゃがんで回避するミドリ。やるな。
「この距離なら!」
「外さないか?刀はこの距離が当たり前だ!」
銃相手だとどうしたって当たらないための機動力の勝負になる。至近距離で乱射してきたミドリの弾幕を宙返りで後退しながら回避。弾切れになった瞬間に前傾姿勢で構え、その体勢のまま縮地を行う。目の前、右、後ろ、左、右、と次々と移動して翻弄する。
「え、はやっ、うそっ…!?」
「終わりだ」
ミドリの背後に立って一閃。眼前すれすれで寸止めした。へなへなと崩れ落ちるミドリ。
「ま、参りました…」
「いい演習相手になった。ありがとうミドリ」
納刀し、ミドリに手を差し出して立ち上がらせる。さて、ゲームのモデルとやらになれたのか。いささか疑問だな。ペンタブを手に喜んでいるモモイの元にミドリと共に戻る。
「うおおー!すごいすごーい!本当にゲームの動きだあ!なにあれ、回転しながら斬り弾くのすりーぜっとのサメイドみたい!すごいよセツナちゃん!だけど……だけど……」
「お姉ちゃん?」
「どうかしたか?」
「ぜんっぜん動きが見えなくて参考にならない……」
「あちゃー」
頭を抱えるモモイと手で顔を覆い空を見上げるミドリ。首を傾げる私。どうやら参考にはならなかったらしい。
「いやでも、早々に諦めてカメラ機能で録画しておいたからスーパースローで見れば!」
「戦ってる私も見えなかったからそれがいいと思う……」
「そもそも見させない様にする技術だからな、縮地」
相手の死角に移動するのだから見られたら溜まったもんじゃない。しかしモモイから見ても見えなかったのか。それは、同じ状況を再現したいな。この間のツルギとの戦いみたいな対多数でも対抗できるかもしれない。
「銃を使わないでこんなに強い人初めて見た!すごいよセツナちゃん!」
「まあ、小手先しかないんだけどな。本当に強い奴には通用しない」
「そんなに強くなって、なにがしたいのか気になる…!」
「ん。私は……なめられたくないだけだよ」
多分な。すると、呼び出し音が鳴り響く。これは…私の端末か。
「悪い、ちょっと出てくる」
「じゃあ私たちはスーパースローで確認しておくよ!」
「ごゆっくり…」
端末で映像を確認するモモイとそれを見守るミドリに手を振り、私は物陰に移動した。
「誰かと思えばアヤネか。ホシノから私がクビにされたこと聞いてないのか?」
相手はアビドスの対策委員会の書記だった。一体何の用だというのか。ホシノに事情を聞きだすためにアビドスに行くつもりではあったが。
《「それは聞きました!でも、もう頼れるのはセツナさんしかいなくて……」》
「なにがあった?」
背後から銃声が聞こえ、あまりに必死な様子に問いかけると、ホシノが退部届を残して去ったこと、カイザー・コーポレーションが黒幕だったこと、そして今現在アビドス学区がカイザー・コーポレーションの私設軍隊であるカイザーPMCに襲撃されていることを伝えられた。
《「シロコ先輩も、ノノミ先輩も、セリカちゃんも、先生も、みんな戦っています!でも、敵はあまりに強大で……」》
「………わかった。今行くから何とか持ちこたえろ。どんな手段を使ってでもすぐ行く」
《「っ……はい!」》
とはいってもここはミレニアム、アビドスまでは物理的に距離がある。押されているってことはそう長くはもたないだろう。ワレワレヘルメット団もホシノの手で壊滅状態だから頼れない。今頼るべきは。すぐに方針を決めて、その番号に連絡を入れる。
《「もしもし。昨日の今日で秘匿回線に連絡してくるなんて、なにがあったのかしら?御剣セツナ」》
「悪い、リオ。お前にしか頼れないんだ。今、アビドスが襲われているのは知っているか?」
秘匿回線を通じて連絡した相手は、今のクライアントである調月リオ。ここはキヴォトス最先端の技術力を持つミレニアムだ。アビドスへ一瞬で駆け付けるなにかぐらいあるだろ。
《「……アビドスは今やカイザー・コーポレーションの自治区よ。連邦生徒会でもない限り関与すれば彼の大企業からしっぺ返しを食らうことになるわ」》
「お前の戦力をぶつけてくれって話じゃない。ただ、たまたまアビドス上空を飛ぶヘリかなんかがないか?って聞いてるだけさ」
《「……たまたま落ちた貴女がたまたまカイザーPMCとアビドスの戦闘に巻き込まれるつもりかしら」》
「ご明察。なんならそのヘリ、ハイジャックしてやるから罪は全部私が被るさ」
《「そこまでするなんて、アビドスにどんな借りがあるの?大事なお客様であり貴重な戦力であるあなたを死地に送り込む理由があるのかしら」》
そう言われるとぐうの音もでない。私はもうリオに雇われている身だからな。勝手に死にに行こうとしているようなものか。
「私は悪運が強くてな?そう簡単に死ぬつもりはない。それに…………一度助けると約束してしまったからな。約束を破るわけにはいかないだろう。カイザーPMCをぶっ潰して問題も解決してここに戻ってくればいいだけの話だろう?」
《「それだけじゃないわ。万が一貴女がミレニアムと繋がりがあると知られれば、トリニティが黙ってないわ。そんな危険を冒してまで、アビドスを助ける理由があるのかしら」》
「……うーん、そうだな。そうだ、リオ。お前ミレニアムのトップだよな。資金に興味はないか?」
《「……貴女のポケットマネーってわけではなさそうね。詳しく」》
声色が変わった。やっぱりな。あの時渡された記録を見てもしやと思ったんだ。
「アビドスは、カイザーの問題さえなければあの大量の砂がある。ガラスや建物や道路のコンクリート、浄水場のろ過技術や電子回路のシリコン成分にもなる、土に近い質感の砂漠のものでもない純粋な「砂」だ。それをミレニアムだけに提供するってのはどうだ?……まあさすがにアビドスのトップ、つまり小鳥遊ホシノに話をつけないといけないわけだが」
《「……エリドゥを作るために多額の資金を使った記録を覚えていたわね?食えない人だわ」》
「使えるものは何でも使うさ。それが生き抜く秘訣だ」
《「いいわ。その話、乗りましょう。うちで一番速いステルスヘリを貸してあげる。運転はトキに任せるから好きにしなさい。座標は―――」》
「助かる」
通話を切って刀を持ちなおし、モモイとミドリの元に向かうと、なにやら盛り上がっているところだった。
「あ、いいところに!セツナちゃん、もっと動きを見せてくれない!?これをゲームで再現することができたら、ストーリーはともかくアクション性がものすごいことに……」
「悪い。ちょっと用ができてな。私はすぐにここを発たなきゃいけなくなった」
「え、そうなの…?」
「なんでー!?」
膨れ面で不服を意思表明するモモイに、私はメモ帳とペンを貸してもらいさらさらさら、と書き記した。
「私の電話番号だ。用事が終わったらお前たちのゲーム開発部とやらに顔を出すから、それで勘弁してくれ」
「お姉ちゃん、どうどう」
「ぶー……でも用って、なにしにいくの?」
「うん?ああ……」
上着を羽織り、刀を納めた鞘を握り、立ち去ろうとしていた私はモモイの言葉に立ち止まり、少し考えてから一言、告げた。
「ちょっとした戦争だ」
アビドスの砂が金になる話で、一番欲しいのは誰かなと考えたらエリドゥで裏金使いまくってるリオしかないよねって。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。