ケイローンの弓矢   作:聖闘士

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第2射

 

 その日、ハリー・ポッターは複雑な心情で夜を過ごした。それは突如現れた大男、ルビウス・ハグリッドがもたらしたある知らせのせいだった。かの大男によれば自分は両親はおろか、先祖代々魔法使いの家系であり、ホグワーツなる学校で魔法を学ばねばならないというのだ。そんな彼の頭の中では、2つの思いがごちゃ混ぜになっていた。

 

「大丈夫だハリー。きっとホグワーツでだって友達はできる。心配しすぎんな」

 

「でもサリーは、僕の親友は一人になっちゃうよ!…魔法は使ってみたいけど、サリーを置いていくなんて…」

 

 そう。彼もまた、己の親友と心躍る未知の世界を天秤に掛けていた。初めて知る両親の死の真相。初めて己を見てくれた大人。おとぎ話のような世界に魔法。しかし小さな英雄は、たくさんの時間を共にした己の親友を裏切れなかった。

 

「しかしなぁハリー。マグルは魔法界のことを知っちゃなんねぇんだ。このルールはダンブルドア先生だって変えられねぇ」

 

「そんな、どうにかサリーも一緒に…」

 

「お前さんには気の毒だが、無理だ。ホグワーツは全寮制だが、帰れないわけじゃない。会おうと思えばいつだって会える。それに、魔法を学ばなきゃ悪い魔法使いに狙われた時かなわねぇんだ」

 

「…本当に帰ってこれるんだよね?」

 

「あぁ。手紙だって出せるぞ」

 

「…わかった。僕、ホグワーツに行くよ」

 

 ハリーの出した結論は彼の親友(サジタリウス)とは異なり、友を置いて未知の世界に足を踏み出すという、勇気に溢れた決断だった。

 

「よし、わかった。じゃあハリー、行くか」

 

「どこに?」

 

「お前さんの親友のとこへだ。しばしの間別れるんだ。一言言ってやるとええ」

 

「…うん。そうするよ」

 

「あぁ。俺は送るだけだ。ええな?」

 

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 胸が張り裂けそうだ。ちょっとでも気を抜いたら涙がでそうだ。共に過ごした日々を思い返せばきっと決心が揺らいでしまう。そんな思いを胸に、ハリーは親友の住む孤児院へと向かう。

 

「あら坊や、どうしたの?」

 

「あの、サリー、サジタリウス・ブラックはいますか?」

 

「えぇ、いるけれど、坊やのお名前を聞いていいかしら?」

 

「あっ、ハリー・ポッターです」

 

「ハリー君ね。呼んでくるからちょっと待ってて」

 

 なんと言えばいいのか。魔法界のことは話せないが、親友に嘘はつきたくない。そんな考えがグルグル頭を巡っているうちに、時は来る。

 

「やぁハリー。どうしたんだい?」

 

「サリー…僕、僕は…」

 

 言葉が閊える。

 

「…ハリー。何があっても、僕らは親友だ。言いにくいなら、日を改めたって良いんだよ?」

 

 その言葉で、抑えていた感情が、涙が、親友への思いが溢れた。

 

「ごめん…!僕、遠くへ行かなきゃいけないんだ!サリーと離れたくなんてなかったんだ!…でも、行かなくちゃ、ならなくて…!」

 

 しかし神は、魔法は、彼らを見捨てなかった。

 

「…ん?行かないんじゃないのかい?」

 

「え?どういう…?」

 

「いや、僕はてっきりホグワーツ(・・・・・)に行かないのかと…」

 

「え…!?ホ、ホグワーツにって、まさかサリー!君も…?」

 

 悲しみに溢れていたハリーの心は、一転して期待に染まる。大きくなる鼓動を感じながら、親友の言葉を待つ。

 

「あぁ良かった!僕ら一緒に魔法使いになれるらしいじゃないか!こんな嬉しいことないよ!」

 

「ホ、ホント…?じゃあ、本当にサリーも、ホグワーツに?」

 

「そうだってば。君の所に来た先生は教えてくれなかったのかい?」

 

 その言葉でどれだけハリーが救われたか、説明の必要はないだろう。唯一の親友を残して1人で行くと思っていたのに、最高な形で裏切られたのだ。悲しみの涙は嬉し涙に代わり、歪んだ顔は笑顔に彩られる。

 

「なんだ…そうだったのか…!まったく、僕は昨日の夜寝られなかったって言うのに!」

 

「ハハ、それじゃあ1日近く悩んでたのかい?昨日すぐ来てくれればよかったのに」

 

「おじさんに連れられて大変だったんだよ。さっきハグリッドって人に送ってもらったんだ。彼、すっごく大きいんだ!」

 

「へぇ!会ってみたいなぁ!」

 

「すぐに会えるさ!サリーのとこへはどんな人が?」

 

「僕のとこには副校長先生が来てくれたよ!すっごく品のいい魔女だったんだ」

 

「そうだったんだ…。あ、ハグリッド!サリーもホグワーツに行くんだ!もう最高さ!」

 

「おぉ、そうだったのか!そりゃよかったな!お前さんがサリーか?」

 

「はい!サジタリウス・ブラックです!よろしくお願いします!」

 

「そうかそうか!俺はルビウス・ハグリッドだ。よろしくな」

 

 しかし嬉しそうな2人の前を歩く大男の顔は晴れない。ある考えが彼の頭をよぎったからだ。

 

 サジタリウス・ブラック…?星座を冠する名前に、ブラック…。俺の気にしすぎだといいんだが…

 

 

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「サジタリウス・レギュラス・ブラック、か…。途絶えたと思われていたブラック家に男児がいたとはのう…。彼を隠し通したレギュラス・ブラックは一体何を…」

 

「アルバス!!ブラック家に跡取りが居たというのは本当か!?」

 

「おぉフィニアス。確認は取れておらんが、まぁ間違いないじゃろう。サジタリウスという名前に加え、マクゴナガル先生の話ではレギュラス・ブラックにそっくりだそうだ」

 

「おぉ!アルバス、その子を連れてきてくれ!」

 

「新学期が始まればその機会もできるだろう。もう少しの辛抱じゃよ」

 

 …彼の父レギュラスはトムの側近だった。叔父のシリウスはハリーの両親を裏切った。…まだこのことを伝えるには早いだろうが、いつか来るその時に備えなければ…

 

 叶うならばハリーの友として、ヤツに立ち向かってほしい…

 

 

 様々な思惑が各々の頭を駆け巡る中、2人の少年は夢を見る。それは城のような建物で杖を片手に笑いあう、2人の姿だった。

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