無双ゲーの無双される側に転生したので、ネームド達を避けつつ生きていき…たかったなぁ?   作:ムクロウ

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難しかった…この作品なんか話進むごとに書くの難しくなってる気がする


クソ面倒臭い人間関係に巻き込まれました

 

ID-4771『Henker』

『リベプリ』において唯一操作可能なクローン兵

通称『パイセン』

 

作中に出てくるどのクローン兵とも違い

明確な意思と感情を持つクローンの存在は

俺達プレイヤーに大きな衝撃を齎した

 

何しろ今まで容赦なく殲滅されていた

所謂雑魚敵の一人が、

明らかな人間性を保持しているのだ。

このクローンの加入を夢見た人も多かっただろう

 

残念ながら結果としては、

『Henker』は最強(シオン)の踏み台として一蹴される

 

だが、それと同時に作中でも数少ない

シオンに一矢報いたキャラの一人でもある

 

シオンに袈裟懸けに切り裂かれ、

まさに死を迎えようとするその瞬間

 

「テメェも帝国も、冥土の土産にゃ丁度良いな

 …次に来るのはこんな奴らだってなぁ!」

 

帝国への叛逆による自爆を逆手に取り

至近距離での爆発をシオンに直撃させたのだ

 

もちろんその爆発で傷つけるには至らないが

最強相手に大金星である

 

ネットでは

『自意識のあるクローンの死に方として100点満点』

『モブの負けイベを漢の散り様に変えた名役者』

『主人公の窮地を救うキャラのムーブしてる』

と言われて親しまれている

 

またシオンのセリフの中でも、

『Henker』について言及されており、

彼女にとっても記憶に残る出来事となっている

 

主人公よりも早くに最強(シオン)に爪痕を残し、

この世界の厳しさを表したような死に様

故に『パイセン』と呼ばれている

 

…これもし『リベプリ』のストーリーとして

俺のアレコレが放映されたら

掲示板とか大騒ぎなんだろうなぁ

 

とまぁそれなりの立場であるパイセンだが

その背景は大して明かされない

当たり前だがパイセンは

ちょっと強いモブ兵士であり、

感情が強めなだけのクローンでしかない

故に大した背景は無い

 

…というのが考察班の見解だったのだが?

グリムってなんだよ!?

なんで帝国の中枢に繋がりが!?

話が違うぞ!

俺のチャートはボドボドだぁ!

元から?うるせぇ!

 

 

………………

 

 

この世界の空も青いんだなと、

どこか達観した目で空を見つめる。

 

「青いなぁ…」

 

こうやってのんびり眺めるのは初めてだ

まぁ下以外全てが青空なら、

眺める以外の選択肢が無い訳だからな

当然空について考えたくもなろうさ

 

…さて、そろそろ現実逃避は辞めようか

 

「ふッざけるなよクッソ運命がぁあ‼︎」

 

地上が見えねぇ!雲の上かよ!?

 

「"雷切"‼︎」

 

高速で目の前に迫る雲を切り裂く

 

「落下死なんざ笑えねぇぞ!」

 

この世界の自然現象は全て

自然の魔力を用いた魔法と定義される

雲は水属性に相当する補助魔法扱い!

足場として認識されちまうんだなぁこれが!

 

雲が晴れた先はただただ広い草原だった

少し遠くに大きめの街のような物が見える

 

「っここかよ!」

 

()()()()()・ランブル高原!

 

初期パーティメンバーである

ウィルカの出身地であり、

ゲームで初めて登場する魔域!

 

「安全地帯…とは言えねぇわな!」

 

そりゃ、蓬莱山よか余程マシだが

かと言って安全かと言えば

ここは魔物と戦闘民族しかいないのだから

危険であると言えるだろう

 

「…っ!そろそろ着地か!」

 

とんでもない高さだろうと地面には着く

無論重力圏内ならの話ではの話だけどな

 

着地点に注目すると、二つの魔力反応がある

 

「片方は…魔物!アイツクッションにしよう!」

 

落下しながら狙いを定め、一直線に落ちていく

 

…この時もう少し深く考えてれば、

面倒事にならずに済んだんだけどなぁ…

 

 

………………

 

 

私達の村では、代々生贄の儀式がある

 

巫女が最も信頼する者を魔物へと変え、

その者に巫女が喰われることで

その魔物が村の守護神となる儀式だ

 

守護神となった魔物は無害で、

60年程の寿命の限り村を守護してくれる

 

私は、そんな村の巫女として産まれた

魔視…見えない程の微弱な魔力の流れを視る瞳

これを持って産まれた者が

代々この村の巫女となるしきたりなのだ

 

そんな私には、幼馴染がいた

ツァーレという名前の男の子

 

怖がりな私はいつも人混みから離れていた。

けれどツァーレが手を引いてくれて、

だから私達はずっと一緒だった

 

でも、成長するにつれて私はツァーレから離れた

このまま一緒にいたら、

絶対にツァーレが守護神になってしまう

だから、私は離れるしかなかった

 

嫌だったし悲しかったけれど

これもツァーレの為だと思って

 

周りの大人達は、

なるべくツァーレと関わるように言った

今のうちに関わっておかないと後悔すると

 

それを無視して、私はドンドン孤立していった

 

きっと誰とも親しくなければ、

守り神なんていなくなるって信じて

 

ツァーレはそれでも私に関わろうとしたけど

何度も突き放している内に

段々と関わりは薄れていった

 

これでいいんだ

これでツァーレは守り神にならない

それだけで、私は幸せだと思いながら

 

…乾いて痛む心には、必死に蓋をした

 

 

………………

 

 

あれから数年が経過した

 

私はもう22になったけれど

未だに結婚の話すら出ない

 

当たり前だろう。誰だって魔物になんてなりたくない

結果として私には大切な人なんていなくなった

 

確かにツァーレを信頼していたけれど

最早ここまで来るとただの思い出だ

今は村の中ですれ違ったら話す程度だ

 

彼はとても幸せそうだ

だから、何も問題なんてない

 

 

その、はずだったのに

 

 

ねぇ

 

 

どうして

 

 

私は貴方の為に離れたのに

 

 

私はこんなにも不幸になったのに

 

 

どうして

 

 

貴方の横には別の女がいるの?

 

 

幸せそうに笑っているの?

 

 

私は貴方の何なの?

 

 

ただの幼馴染だったの?

 

 

じゃあ…

 

 

じゃあ私は何の為に

 

 

 

 

………疲れた

 

 

今日は、休もう

 

 

明日は、きっといい日に

 

 

あぁ、それじゃダメなんだっけ

 

 

…ハハッ

 

 

そうやって寝て、次の日

 

 

当代の守護神が死んだ

 

 

私は、巫女としてのパートナーが必要になり

 

 

ツァーレが、選ばれた

 

 

選ばれてしまった(選ばれてくれた)

 

 

もう、どうすればいいのか、分からなかった

 

 

………………

 

 

…儀式の時間がやってきた

 

 

私とツァーレは、

儀式を行う為の祭壇に登っていく

 

色んな話をした

 

今までどうしてたのか

 

どうして離れたのか

 

どうしてこうなってしまったのか

 

 

話している間、

ツァーレは恨み言一つ言わなかった

 

 

ただ、ごめんと

君のことを考えてあげられなくてごめんと

もっと見てあげれば良かったと

謝罪をしました

 

 

それがとても嬉しくて、苦しかった

 

 

だってそれなら、昨日の私の葛藤は?

 

 

ツァーレはただ純粋に

私の幸せを願ってくれていました

 

 

なら、くだらない苦悩で

幸せな生活を送っていたツァーレを

地獄に引き摺り込んで

挙げ句の果てに安堵まで感じた

浅ましい私は一体何だと言うのでしょう?

 

 

恨んで(愛して)欲しかった

 

 

そしたら私だって、

何の障害もなく貴方を憎めた(愛せた)のに…!

 

 

…そして、私達は祭壇に着いた

 

 

広い広い草原の真ん中に、黒曜石の土台

その上に立った祭壇の頂上には、

掌サイズの肉塊が乗っている

 

アレは先代守り神の残骸

 

先代を喰らうことで、

ツァーレは次代の守り神になる

 

ランブル高原の魔物達は数が多く、

守り神無しでは、この村は住む場所を失ってしまう

 

心優しいツァーレは

それを分かっているのに逃げることなど出来ない

 

ツァーレに最後のお願いをした

どうか私を忘れないで欲しいと

憎んで、恨んで欲しいと伝えた

 

ツァーレは恨みも憎みもしないが、

絶対に忘れないと返して、肉塊を喰らった

 

守り神になる人間は、

人間だった頃に大切だったものを

残滓として覚えていることがある

 

知性など無くても、愛など無くても、

せめて私を私と思って喰らって欲しい

そんな醜い私をどうか許さないで(忘れないで)

 

ツァーレは一瞬口を抑えた後、

背中側から爆発するようにして肉塊が飛び出す

ツァーレ自身を肉塊が飲み込んだ後収縮し

繭のような形態へと変貌する

 

やがてその繭が被れて、

中から巨大な黒い蛇が現れる

 

私には見える

立ち昇るような黒いドス黒い魔力

今回の守り神は歴代最強だろう

ツァーレに魔法の才能があったことが

どうやら影響したらしかった

 

これなら、綺麗に死ねそうだ

痛みなく逝けるなんて、

醜い私には上等な末路だろう

 

その時、私をジッと見つめていた蛇が

この鳴き声を放った

 

…リュ…ーナ…

 

 

…は?

 

 

その名前は、ツァーレの横にいたアイツの名だ

 

 

ふざけるな

最後の最後まで私を苦しめるのかお前は

死に際くらい、叶わぬ願いを抱かせろよ

 

大きく開いた黒蛇の牙が目の前に迫る

 

こんな…こんな結末あんまりだ

 

呪ってやる

 

アイツを、村を、世界を

 

全てを呪い殺してやる!

 

今更そんなことを考えても、

とっくに私の運命は決まっていて

目の前に迫る顎が止まることなどあるわけもなく

 

スローになった世界で見た走馬灯は

酷く空虚で薄っぺらくて

 

あぁ、私、何の為に産まれたんだろう?

 

大人達の言葉が脳裏を過ぎる

 

ツァーレ、もっと貴方と一緒にいたなら

 

幸せな結末も、あり得たのかな?

 

そんな後悔と共に視界は暗くなっていって…

 

 

空気を読まない天雷が、全てを奪い去っていった

 

 

…ぇ?

 

空から何かが稲妻のように落下して、

黒蛇が眼前で瞬時に叩き潰される

 

「…ったく、死ぬかと思ったわ」

 

立ち上がったのは、()()の青年

魔物の皮を使ったレザージャケットにレザーパンツ

目元は前髪で影になっていてよく見えないが

その手にはどこまでも黒い刃を持つ刀

 

異常なまでの魔力隠蔽により、

微かに漏れ出た魔力のみが魔視の瞳に映り

濃紺と朱赫が燐光のように瞬く

 

その姿を、私は美しいと思った

 

だからこそ、許せなかった

 

八つ当たりだと知りながらも、

その存在を呪わなければ、狂ってしまいそうだった

 

「あん?お前は確か…」

 

段々と苦々しい顔になっていくソイツに

醜い自分を無様に生き残らせた男に

私は呪詛を叩きつける

 

「…よくも私の大切な人(憎悪の対象)を殺したな。

 お前のありとあらゆる全てを呪ってやる…!」

 

それに対して、侮蔑に顔を歪めながら男は返す

 

「ほざくな残骸。貴様の過失を俺に押し付けるな。

 自責を誤認して他者に憎悪を振り撒く呪物風情が

 俺に届くとでも思ったか」

 

黒い切先が眼前に向けられる

 

…私と彼は、こうして出会った

今思い返しても、最悪の出会い方だ

 

だがこの日、確かに私の運命は変わった

 

 

………………

 

 

「ほざくな残骸。貴様の過失を俺に押し付けるな。

 自責を誤認して他者に憎悪を振り撒く呪物風情が

 俺に届くとでも思ったか」

 

…言い過ぎだろ。何言ってんだ俺

 

確かに何言ってんだテメェくらいは

言うつもりだったが

ここまでボロクソに言うつもりはなかった

樹鱗再臨(禍を仰げ)の影響はどうやら大きいらしい

まさか使用してない時に漏れ出てくるとは

 

咄嗟に魔物の因子を抑え込む錠剤を飲み、

人間の姿で会うことは出来たが

まさかこのイベントに割り込んでしまうとは…

 

このイベントは本編では既に終わった後で

現場の回想としてのみ見ることが出来る

所謂過去に起きた悲劇的ポジションの話だ

 

ウィルカの故郷に帰る途中、

主人公達はかつて集落だった残骸を発見する

少し離れた場所に移り住んだ生き残りに話を聞くと

凶悪な魔物が全てを破壊したと話す

 

実際に集落の奥に大蛇がいるのだが、

本来の経緯は少し異なる

 

それは凶悪な魔物ではなく村人のなれ果て

クソみたいな儀式によって歪んだ人の業

どこにでもある悲劇によって、

そこらに転がる復讐劇と同じ最後を迎えた

哀れな馬鹿どもの痕跡があの村だったのだ

 

所謂自業自得の極地のような村だが、

どうやら俺はその村の儀式に

中途半端に介入してしまったらしい

 

よりにもよって片割れが手遅れになった直後に

それをぶっ殺して登場することになるとは

流石の俺でも考えてなかった

 

この呪い殺しそうな目をしてる深緑色の短髪の女…

通称モブ巫女さんを助けるのは正直マズイ

原作にどんな影響があるか分からない

 

巫女に向けた黒い切先を見つめる

 

これを振るえば、その命は簡単に狩れる

なんなら村を滅ぼすくらい造作もない

だが、それは俺のやり方じゃない

 

「…」

 

さて、どうするか

 

「お姉様!」

 

「あん?」

 

横合いから飛んできた水弾を斬り、

冷気によって凍てつかせる

 

そちらを見れば、息を切らした少女が立っている

どことなく巫女さんに似た容姿だが、

こっちは背が小さく、髪型はツインテールだ

 

「今度は何だ。

 初対面で敵意を向ける決まりでもあるのか?」

 

「黙れ!お姉様から離れろ!」

 

「リュニー!何故来たの!」

 

…リュニー?なんかそんな名前聞いたな。

確か黒蛇の側に

落ちていたアイテムがリュニーの髪飾り…

あっ…ふーん

 

「だって!」

 

「いいから帰って!貴方を巻き込みたくない!」

 

「嫌!お姉様が死んじゃう!」

 

なんか勝手に悪者にされてるな?

俺今のところそのお姉様助けた側なんだけど?

 

「…ハァ、もういいや。

 とりあえず帝国はどっちかだけ答えてくれ。

 俺はこんなところに用は無いんだ」

 

「え…?お姉様を殺すんじゃ…」

 

「なんで殺すんだよ面倒くさい。

 敵意を向けて来なければ関わりもしなかったわ」

 

呪うとか言ってたから殺処分を考慮はしたけど

 

「貴方は…何なの?」

 

「答える必要があるのか?」

 

巻き込まれる前に立ち去りたいんだが

 

「お姉様、この人は一体…?」

 

「…私がツァーレだった魔物に喰われる瞬間、

 それを引き裂いて空から降ってきた人です」

 

悪かったって、知らなかったんだよ

 

「なら恩人じゃん!なんで刀向けられてるの!」

 

「それは…」

 

おっと、流れ変わったな?

 

「何かしたんなら謝って!恩返しはするべきだよ!」

 

「…無礼なことを言ったことを謝罪します。

 どうかお礼をさせていただけませんか?」

 

「私もいきなり攻撃してごめんなさい!

 償わせてくれませんか?」

 

そう言って、2人して頭を下げてくる

 

「えぇ…」

 

嫌だよ面倒臭い…

 

「…」

 

かと言って旅支度も無しに移動するのはなぁ

別に生きるのに苦労は無いが、

準備した方がいいのは確かだしなぁ…

 

「…あの?」

 

俺がいなくなったら

この村もう一回儀式をするかもだし…

というか間違いなく地獄を繰り返すしなぁ…

流石にそれ見過ごすのは人としてどうなんだ…?

 

「…えっと?」

 

「…分かった。

 とりあえずアンタらの住処に案内してくれ」

 

「っ!良かった!こっちです!」

 

…なんでこうなるかなぁ




というわけで新章開幕!シオンの元から脱走したヒリュウによる自由な旅(当社比)が始まる!
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