無双ゲーの無双される側に転生したので、ネームド達を避けつつ生きていき…たかったなぁ?   作:ムクロウ

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時系列は本編五話と入れ替わりです。


没案
剣技全てに雷の名前が付いてるんだから、雷使えても良くない?


 

この世界は主に戦場、都市、魔域の

三つのエリアで構成されている。

 

このエリア間はしっかりと分けられている。

 

戦場では俺達クローン兵や

特殊な生まれの人間などが

日々軍からの命令などに従い戦争をしている。

 

都市では戦闘能力をほぼ持たない一般人や、

その国の君主や議員が住み、

現実より多少発展した

所謂SFチックな暮らしをしている。

 

国家は一部の権力者達が主となっており、

都市を戦場の勝敗によって奪い合っている。

その為戦場での勝敗は

支配体制こそ変わるものの、

民衆にとってはあまり身近ではなく

普通に平穏な暮らしをしている者が多い。

 

国同士が明確に分かれているのは

都市のエリアまでであり、

戦場のエリアは国同士の境界線で発生し、

境界線近くの都市の所有権が勝敗で決まる。

 

ちなみに国を広げたがっているのは

資源関係が関わってくる。

都市の下は魔力の地脈が通っており、

そこでは魔石と呼ばれる鉱石が生成される。

魔力はこの世界では電気と同義であり、

レンジも冷蔵庫もテレビも魔力で動いている。

魔石とはその魔力の塊であり、

地脈とは発電所のようなものなのだ。

 

新たに発電所が建てられない状況だから、

発電所を奪い合ってそれぞれが

発展しようとしてるのが現在の戦争である。

 

では魔域とは何かというと、

人類未到のエリア、

または人類が生存不可能なエリアだ。

魔物の宝庫であり、気候も不安定。

魔力が濃く、常に様々な魔法が渦巻いている。

常に危険が伴うことから

わざわざ入ろうとする者も少ない。

ゲームでも終盤のレベル上げ以外で

来る機会はほとんどないエリアだ。

 

さて、現在の俺の住処ことシオンの家は、

皆さんのご察しの通りこの魔域にある。

危険度Sの上級者でさえ中々来ない危険エリア。

通称『蓬莱山』の頂点に建つこの家は、

和風の御屋敷の形をした要塞だ。

 

魔物すら個人の魔力の影響下では発生しない為、

下手な都市内部より安全である。

…ここに住んでるのがシオンでなければの話だが。

 

 

………………

 

 

目を瞑り、体内の魔力の循環を意識する。

角が熱を帯び、肉体を魔力が巡る。

魔力が充分な量巡り始めた辺りで目を開き

 

 

今回の的である丸太を両断する。

 

「…ふぅ、魔力循環には慣れてきたな」

 

この世界の人間は基本的に

魔力を消費し身体能力を強化することで

戦っている。

 

だが魔物は違い、体の中で魔力を循環させて

肉体を活性化することで身体能力を向上させる。

要は魔力消費なしで身体強化が使えるのだ。

 

俺もまた、肉体が魔物に近づいたことで

魔力循環が扱えるようになった。

 

割と比にならないレベルで身体強化が向上し、

魔力消費も0といいことばかりである。

 

「ただなぁ…雷魔法が欲しい」

 

雷魔法は火力が非常に高いのも特徴だが、

唯一の身体強化を重ねがけ出来る属性なのだ。

 

実はタケミカヅチ流は名前の通り

雷魔法が使えることが前提の流派だ。

あの爆発的な強化と火力があるからこそ

"雷雲"は要塞となり、"雷切"は躱せず、

"鳴神"は絶対足りうるのだ。

タケミカヅチ流がどマイナーな理由の一つだ。

 

「俺は何故氷魔法だけなのか…」

 

…シオンの家に来た次の日。

俺は魔法の適正を調べたが、結果は惨敗。

魔物化までしたのに適正は氷一色だった。

思わず涙さえ流し、

シオンに慰められるという珍事が起きたりした。

 

まぁ適正は適正だ。仕方ないとして、

なら代わりの方法を考えるしかないのだが…

 

「既存の氷魔法にそんなのないんだよね」

 

新しい魔法を作ったやつが

今更何を言うかと思うだろうが、

アレは死にかけてたら出来た奇跡だ。

 

つまり今の俺に新しい魔法は作れない。

 

「…自分の心臓に刀でも叩き込んでみるか?」

 

手にある夜霜丸を見つめる。

コイツは意味わからん魔法の塊だし、

ワンチャンないかな?

 

「ヒリュウ?」

 

「あっ…」

 

振り返ると、

笑ってるのに目が笑ってないシオンが居て…

 

「…何か申し分はあるかしら?」

 

「…ごめんて」

 

※たっぷり怒られた

 

 

 

…さて、気を取り直して行こう。

 

とにかく俺の技は全て未完成。

雷の代用品がなければ完成は不可能だ。

 

しかしとりあえず今は

この身体に慣れなければならない。

 

魔力循環はあくまで増えた能力の一つ。

他にもいくつか増えている。

 

一つ目が鬼眼

これを簡単に言うなら魂を見る目だ。

 

その者の魂そのものを見て、

相手の生命力や強さ、

寿命なんかを見ることが出来る。

 

また、自然の力を見ることでそれを操り、

回復に使える能力もある。

 

…残念ながら雷の代わりにはならないが、

充分な能力と言える。

 

次に鬼角

これは魔力を集積して回復を早める機能と、

鬼の本能を解放して

肉体を大幅に強化する力がある。

ただしこれは鬼としての最悪のデメリットを

誘発するのでNG

 

コイツは危険すぎるので

いざという時にしか使えない。

要は今の俺にとっての『鬼薬』である。

 

最後に神通力。これは空を歩く力だ。

詳しく言うなら様々なものに干渉し、

それを足場とする能力だ。

 

普通に便利、ありがたいね。

 

「…なんで鬼なのに攻撃的な能力が少ないんだ」

 

これじゃ雷魔法の代わりなんざ不可能だ。

やっぱ刀を叩き込んで…

 

「…」

 

やめておこう。背中に冷たい視線を感じる。

 

それはそれとして、こんなにも能力が追加され

肉体の基礎スペックも向上したとなると、

把握するだけでも一苦労である。

 

それに慣れるのにここ2週間程度は

シオンの家に入り浸りながら修練を重ねている。

 

その間シオンは俺のことをジッと見ている。

俺みたいな凡才の剣なんてつまらないだろうに。

 

「"氷刀(エッジ・オブ・クレバス)"」

 

周囲に数十本の刀を作り出す。

これはあくまで訓練用、魔力はそこまで込めない。

 

「…」

 

剣を構える。

左手を前に、右手を水平にする。

 

…刀をこちらに向け、全方位に配置する。

 

「…"雷雲"」

 

刀を自身に向けて射出すると同時に

剣を振るう。

 

切る ()る 斬る

 

頭を狙う死を切り裂き

足を抉る殺意を両断し

心臓を喰らう本能を斬り伏せる

 

この刀程度なら切り捨てられるが、

まだまだシオンの刀は"雷雲"で切れる領域にない。

 

その程度で"鳴神"など、夢のまた夢だろう。

 

最後の刀を"雷切"で粉微塵にする。

 

「遠いなぁ…自分の凡才が嫌になる」

 

 

………………

 

 

彼は何を言っているんだろう。

私、シオン・フォン・アガペーはそう思う。

 

視線の先では私の愛しい人、

ヒリュウが鍛錬を再開している。

 

彼の使っている魔法の原型は私の魔法だ。

おそらく性質も同じものであり、

それはつまり使用難易度も同じということだ。

 

私の魔法は、模倣しようとした魔法使いが

悉く狂死した超難度の魔法だ。

 

それをたった2週間で数十本同時に

発動できていることがどれだけおかしいのか

きっと彼は自覚していないのだろう。

これを未熟だというのなら、

きっと世の中の魔術師は血の涙を流すだろう。

 

ちなみに私がここにいるのは監視である。

放っておくとヒリュウは

すぐに死に際まで自分を追い込もうとする。

この前なんて氷魔法で体を極限まで冷やした状態で

瞑想し始めて、自殺願望でもあるのかと思った。

 

彼はこの2週間の間にありえないスピードで

強くなっているのだが、

その裏では何十回も死にかけている。

この山の魔物の気配も随分と減った。

誰かさんが自分を顧みずに殺し回ったせいだ。

果たして何をそんなに急いでいるのか。

 

そんな彼が一際拘る技、それが鳴神だ。

 

私が彼に惚れた要因となったあの技は、

あれでまだまだ未完成だという。

ヒリュウ曰く

 

「あんなもん鳴神モドキと呼ぶのも烏滸がましい」

 

らしいが、彼は本当に分かっているのだろうか?

 

あの技は世界の法則に背く技だ。

失伝した技らしいが、当然だろう。

アレは摂理に対し真っ向から喧嘩を売っている。

 

故にこそあの太刀筋は人を魅了し、

だからこそ彼は人を惹きつけてしまう。

 

人は輝きを見ると、それに惹かれる。

さながら街灯に群がる虫のように

その眩しいまでに真っ直ぐな生き様が、

脳に焼きついて離れなくなるのだ。

 

ふと見ると、彼が動きを止め、

目を閉じて集中する。

 

夜霜丸を納刀し、そして…

 

「"鳴神"」

 

抜刀

 

…あぁ、もう。ズルい人ね

 

私の胸は高鳴りっぱなしだ。

既に彼の一閃は私にも見えない。

戦闘となれば避けられるだろうが、

さらに速くなれば避けることすら難しいだろう。

 

彼の目の前の空間はズレている。

切ったのだ。

ただ剣のみを使い、彼は次元に干渉してみせた。

 

彼が目を開ける頃にはそれは元に戻る。

彼は気づいているのだろうか?

いや、きっと気づいていたとしても

彼は変わらないだろう。

 

「…ダメだな。まだまだ未熟だ」

 

愚痴を溢す彼の表情は、

不満そうながらもどこか楽しげだ。

 

きっと彼にとって一番の楽しみは

あのどこまでも真っ直ぐな太刀筋を

追い求めることなんだろう。

 

彼はあの剣を完成させる為なら、

どこへだって行くだろう。

 

だけどね、私だってやっと見つけたのよ?

自分自身を投げ出してでも求める(もの)

 

絶対に逃してなんてあげないから

覚悟してね?

 

 

………………

 

 

鍛錬を終えて、納刀しつつため息を吐く。

 

さっき放った"鳴神"は確かに空間を切断した。

だが、それだけだ。

あれは神通力を応用して空間を認識し、

それを狙ったから切れただけで

逆に言えば空間以外は無傷だ。

それではダメなのだ。

"鳴神"は振り抜いた場所の全てを

問答無用で斬り伏せる技だ。

予備動作が大き過ぎて使い物にならないし、

速度も神速には程遠い。

 

「…ダメだな。まだまだ未熟だ」

 

これではシオンに笑われてしまうだろう。

伊達に2週間も同棲していない。

これだけ一緒に過ごしていれば

恋慕とまでは言わないが情くらい湧く。

 

慕ってくれてるやつから失望されて、

何も思わない程俺は冷酷じゃない。

 

「さて、と。シオン!」

 

「何かしら?」

 

「一撃だけ頼む」

 

「はーい」

 

さて、ここで問題だ。

何故今までシオンに手伝って貰わなかったと思う?

それにはシオンの最大の弱点を明かす必要がある。

 

「いくわね」

 

さぁ、答え合わせと行こう。

正解は…

 

「…あっ」

 

「やったなお前!」

 

天が揺れる。

途方もない質量が落ちてくる音がする。

 

雲を引き裂き地を鳴らしながら

落ちて来たるは巨大な柱

…ではなく柱の如き大きさの刀である。

 

そう、何を隠そうこの最強(バカ)

致命的に手加減が下手なのである。

 

「ご、ごめんなさい!すぐに消すから!」

 

「いや、いい」

 

「え?」

 

「このまま叩き斬る」

 

納刀した刀を掴む

目を瞑り、構える

 

今の俺の"鳴神"ではコレは斬れない。

あまりの魔力量に空間が歪んでるレベルのものだ。

本当に刀か疑いたくなる。

 

「…"落ちる椿の花の色"」

 

呟く。

それは俺が設定したキーワード。

それの危険性ゆえに少し長めとなっている。

 

「ッ!」

 

甲高い音を立てながら角が光り輝く。

肉は沸き立ち、血潮は燃える。

髪は朱色が侵食するように髪を染め、

血のような紅色に変わる

体の至る所から魔力が吹き出し、

焔のように揺らめく。

 

鬼角の力 本能解放

角から魔力を喰らい続けることで

魔力循環で流れる魔力を溢れ出るほどに増大させ、

本来あり得ない出力を叩き出す荒業だ。

鬼の本質は全てを呑み込む欲だ。

それを解放した以上この後のしっぺ返しが怖いが、

とりあえず無視する。

 

目を開く。

目尻から魔炎が零れ落ちる。

刀は目の前まで迫っている。

 

定めるは標的

 

我が手に刀

 

万象一切斬れぬもの無し

 

抜刀

 

「"鳴神"」

 

一閃

 

 

……………

 

 

山の麓から凄まじい衝撃音がする。

地震と見紛うレベルの二つの振動。

今頃山の麓は落ちてきた刀の残骸によって

大惨事になっているが、どうせここは魔域だ。

どれだけ破壊しようがじきに直る。

 

納刀

今のはかなり近かった。

やっぱり極限状態ほどいい鍛錬はないな。

 

…あぁ、渇くなぁ

 

っと危ない。呑まれるとこだった。

再び角に本能を封じ込める。

 

振り返り、呆然としてるシオンに向けて

 

「ぶいっ!」

 

満面の笑みでVサインを出す。

 

どうだ凄いだろ

俺の憧れは実現可能だ

 

お前をもう、独りになんてしない

 

そういう意図を込めたVサインだ。

いっつも寂しそうな顔してるもんだから、

慰めてやりたくなった。

伝わってるかな?

 

シオンは目を丸くした後、目尻に涙を浮かべて…

 

「おい泣くな泣くな…ってのわぁ!?」

 

慌てて近づくと、

そのまま勢いよく抱きついてきた。

…こりゃしばらくは離してくれそうにないな。

倒れ込んだ状態で頭を撫でながら空を眺める。

空は黄昏色で、もう夜が来る。

 

さて、タイムリミットだ。

明日は帝国に向かわなきゃいけない。

 

明日、主人公達が初めて敗北するイベントがある。

その時は敗北の衝撃で動けなかったことで

結果的に助かるのだが、

今回主人公達は既に敗北を経験してしまった。

つまりは死んでしまう可能性がある。

 

殺そうとしたわけでもないのに

俺のせいで死んでしまうのはとても忍びないので

助けに行きたいわけだが、

なんともまぁクソッタレなことに

主人公の今回の敵は条件付きなら

シオンの化身(アバター)を倒せるやつだ。

 

攻撃性能だけは極振りしておいたが

基本的には近接攻撃しか出来ないし、

速度を出すには予備動作が必須の俺が

どこまで行けるかは分からない。

 

それでもどうにかしなきゃいけないのは、

なんとも世知辛い世の中だ。

 

「なぁシオン」

 

「なぁに?」

 

「明日帝国にデートに行こうぜ?」

 

…何故急に泣き止む。

こっちを見る目が完全に据わってるんだが?

 

「今夜は初夜ね?」

 

「やらせねぇよ?」

 

この後の攻防戦の方が刀よりよっぽど疲れた。




※ヒリュウとシオンはカップルではありません。
 ヒリュウ側が恋愛感情がないと供述しています。
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