無双ゲーの無双される側に転生したので、ネームド達を避けつつ生きていき…たかったなぁ? 作:ムクロウ
この世界の知的生命体は
人間・亜人・魔物で構成されており、
亜人にはエルフと獣人。
その他の種族は魔物として扱われる。
エルフは見た目が人とほとんど差がないことと、
特異な能力がその寿命と魔力量くらいしか
人間と変わらないことで亜人となっている。
逆に獣人は身体能力以外が人間と同じ為亜人だが
かなりギリギリのラインであり、
理性を失い本能で動いている獣人は魔物扱いだ。
魔物は魔物というだけで人類の敵であり、
無論鬼も魔物として扱われている。
ちなみにどの部分でも混血は嫌われる。
鬼人とはまた違った禁忌判定である。
まぁ鬼が魔物認定は実は妥当なのだ。
その理由は…まぁおいおい語るとしよう。
………………
天が震える。
大地が波打ち、緑が掻き消える。
シオンとツバキの戦いの余波は、
絶えず周囲を破壊する。
「
シオンが再び魔法を使い、空を刀で埋め尽くす。
「それはさっき見た!」
ツバキも再び顔を守りつつ突っ込む。
「
だが、シオンはさらに魔法を発動し
大量の刀を6本に収束する。
一本一本のあまりの魔力密度に
星の隕鉄が耐えきれずに赤熱している。
「マズッ!?」
「"箒星"」
閃光
慌てて突進をやめるも、
シオンはそのまま刀を閃光に変える。
「"夜雀'"!」
六撃
6本の刀全てに対して手刀を撃ち、
咄嗟に狙いを逸らす。
逸らし切れなかった刀が着物に掠り、
その部分が跡形もなく消し飛ぶ。
「この着物上物なんだぞ!」
肉体が耐えきれず手の骨が砕けるも、
即座に再生させシオンを睨むツバキ。
「まだ終わってないわよ?」
「ッ!」
空中を足場にバク宙し、背後からの"箒星"を躱す。
「そらよっ!」
跳び上がった高度から魔力を圧縮した球を
サッカーボールのように蹴り込む。
「品のない攻撃方法ね!」
それを6本の刀で防ぐも、
破壊された後魔力爆発を起こして
魔力球を相殺する。
「貴方着物を着てるんだから
足を上げるのは止めなさい?はしたない」
「別に私とお前しかいないんだ。
構いやしないだろ?」
「マナーの問題よ」
「鬼にマナーなんざ、
馬の耳に念仏レベルの愚行だろ」
軽口を叩き合いながらも、
刀と拳をぶつけ合い、
周囲を更地に変えていく2人。
「
シオンは砕けた刀を消しつつ、
自らの手元で
一本の刀を創り出す。
隕鉄が耐えられるエネルギー量を超えている為、
すぐに壊れてしまうが
「"箒星"」
「ぐぅっ!?」
閃爆
その前に閃光として射出、
ぶつけた瞬間に大爆発を引き起こす。
たまらず吹き飛ぶツバキ。
「ゲホッゲホッ!流石だな…」
「もう終わりかしら?
随分と弱ってるみたいね」
ツバキはボロボロで、右腕を抑えている。
シオンはそれを無表情を装って見ているが、
眉が下がっているのは気づいていないらしい。
「…そろそろ終わらせましょう。
シオンの周りに十字架を模した片刃の剣が
数十本出現する。
「行きなさい」
「くっ!?」
それらが不規則な挙動でツバキに迫る。
ツバキは避けようとするが、
ボロボロの肉体は魔力循環で支えられる限界など
疾うに超えており、十字架が迫る。
そして…
「ぐぁっ!?」
身体中に十字架が突き刺さる。
だがそれらは体を傷つけず、
ツバキの肉体を空中で完全に固定した。
「その十字架は相手の拘束に特化してるの。
本来の貴方なら振り切るのも簡単でしょうけど、
今の貴方じゃ抜け出せないでしょう?」
「ハハッ…いい趣味…してんじゃ…ねぇの?」
意識を保つのもやっとな様子で応えるツバキ。
「さっさと…殺せ…よ。
お前を…殺そ…うと…したんだ。
慈悲…なん…て…いらねぇ」
「…えぇ、そうさせてもらうわ」
そう言って、シオンはツバキの頭に手を添える。
「…?何を」
「ただし殺すのは、貴方の首輪よ」
集中する。
頭の中、脳みその中央左寄り、
海馬と呼ばれる記憶を司る部分を少し外れた部分を
意識の全てを総動員して探る。
「っ!」
あった。制御兼自爆装置。
コレは繊細なものだとヒリュウは言っていた。
斬ったりすればすぐに爆発するだろう。
ならどうするか
「借りるわね、ヒリュウ」
先人と同じことをすればいい。
勘違いしてはならないが、シオンの力は星の力だ。
それには当然、この星、地球も含まれる。
故に彼女は、全属性を扱える資質がある。
つまり
「
氷魔法だって使える。
シオンはその手に魔力を収束し、
一本の美しい氷の刀を創った。
それはどこか、夜霜丸を連想させる。
「
わざわざ刀を作ったのは、扱いなれているから。
その属性の力を持つ物を媒介に魔法を使うと
制御しやすく、威力も高くなる。
その物体を使い慣れていればいるほど
制御が容易になるのだ。
「っぁ…」
制御装置が凍りつく。
ツバキの体から力が抜ける。
「ツバキ…!」
シオンはそれを支えようとする。
それは…
「…ろ」
「えっ?」
致命的な隙だった。
「避けろ!シオン!」
ツバキの体が高速で動き、
シオンの心臓へ貫手を放つ。
シオンは呆然としたまま動けない。
そのまま心臓を貫かれ…
「させねぇよ!」
「ひゃっ!?」
貫かれるその瞬間、
横合いから凄まじい勢いで現れた人影が
シオンの体を掻っ攫う。
「…え?……え?」
怒涛の急展開に付いて行けていないシオンが
顔を上げると
「よぉシオン。
俺抜きで他の女とデートとは
あんだけ言っといてそっちが浮気か?」
シオンをお姫様抱っこするヒリュウかいて
「俺も混ぜろよ」
あの日と同じ笑ったような声で
ボロボロの笠に空いた穴から右目を覗かせ
ツバキと対峙していた。
………………
疾走する 駛走する 急駛する
邪魔な木を切り倒し
面倒な川を飛び越え
それでは間に合わないと空を駆ける
「間に合ってくれよ…!」
多分シオンは勝つだろう。
そこは疑っていない。問題はその後だ。
きっとシオンは洗脳を解こうとするだろう。
だが、『アマルガム・ジェル』は言っていた。
俺が制御下から脱却したから開発した、と。
つまり同じ手段は
必ず対策されていると考えた方がいい。
そしてシオンはそれを知らない。
目の前に鳥の魔物の群れが現れ
「退けぇ!」
その全てを強引に切り捨てる。
これがただの強いやつならここまで俺は焦らない。
所詮は
やられたとしてもシオン本体には届かない。
だが相手は鬼だ。
俺と同じ魂を観測出来る存在だ。
シオンの
ぶち抜くなんて真似が出来るかもしれない。
無論シオンなら耐えるだろう。
一撃でやられるほどシオンはヤワじゃない。
だが確実に
その場合レベル200の分身を作り出す魔法が
暴走し地形が変わる威力の魔力爆発が起こる。
帝都どころか周辺地形もろとも更地になるだろう。
そんな悲劇は避けなければならない。
それに
「アイツが傷つく姿なんて、俺が見たくない」
シオンがアレと戦っている場所は
帝都から見てオレの森から反対方向だ。
「な、なんだぁ!?」
「空飛ぶ浪人!?ギャグ漫画かよ!?」
帝都上空に差し掛かったが、
民衆の声を無視して駆け抜ける。
「て、敵襲?と、ともかく撃てぇ!」
銃弾の雨がこちらに迫る。
「邪魔を…するなぁ!」
切る
視界を覆う全てを切り捨て
聞こえるあらゆるを断ち切り
感じる悉くを斬り払う
一時的に空中に神通力で踏ん張る。
"雷雲"を発動させて全てを切り落としつつ
氷魔法で足場を作り出す。
それに乗りながら着地し、
滑って移動しながら斬り続ける。
本能解放は出来ない。
次使えばデメリットを無視しきれない。
魔力もほとんどないのを
生命力ごと魔力循環で消費し続けている。
それでも尚、前に、前に
「前に!」
当たったら死ぬからその前に斬る
殺し合いになる前に武装のみを斬る
ぶつかって止まる前に建物を斬る
「命を!燃やせぇぇえ!」
最悪全部消し飛ぶんだ!
多少の被害は許容しやがれ!
「こ、コイツ…!?」
「隊長、と、止まりません!?」
「ひ、怯むなぁ!相手は所詮1人だ!
諦めなければ…」
「俺が…」
「ヒィッ!?」
「諦めるわけねぇだろうがぁ!!」
帝国の外壁が目の前に迫る。
硬度?魔法?知ったことか!
納刀する暇すら惜しい!
左腕にぶっ刺す!
抜刀!
「"鳴神ィイ"!」
一閃
視界いっぱいの壁を粉々に切り刻む
腕から血が噴水のように出るが無視する
「嘘だろ…!?帝国建国以来
一度も破られなかった複合障壁が…!?」
攻撃が止んだ!この隙に!
「見えた!」
駆け抜けた先でシオンを発見する。
それはもうすぐ胸を貫かれるところで…
「…"落ちる椿の花の色"!
即座に夜霜丸を納刀。
本能を解放し、そのまま
「届け!」
地面を全力で蹴り飛ばし、加速。
自分を弾丸として射出する。
シオンの胸に貫手が迫るが
「させねぇよ!」
横合いから掻っ攫う。
オレの体は二つの無茶の同時発動で
紅の魔炎が吹き出し
肉体が燃えて蒼い炎を纏っているので、
シオンを抱き上げると同時に氷魔法で
シオンの周りを冷やす。
「…え?……え?」
「よぉシオン。
俺抜きで他の女とデートとは
あんだけ言っといてそっちが浮気か?」
呆然としているシオンに軽口を叩く。
そうしてる間にも、俺の体は悲鳴を上げている。
足の骨はさっきの踏み込みに耐えきれず、
絶えず自壊と再生を繰り返している。
"雷雲"と"鳴神"を無茶な体勢、
無謀な状況で放ったせいで内臓もグチャグチャだ。
鞘代わりに使った腕も、
完全にはくっついていない。
「俺も混ぜろよ」
ここまで死にかけるとヤケクソ通り越して
面白くなってくる。
やっぱ極限状態ってのはこうでなくちゃなぁ!
屋敷での生活中もなんだかんだ死にかけたが、
やはり保険があるのと無いのでは
精神の持ち様が違う。
シオンを空中で降ろし、
自分で飛べるのを確認して下がらせる。
向こうからは濃厚な殺気がガンガン飛んでくる。
ラブコールにしちゃ物騒だ。
一発で死ぬ?既にボロボロ?
だからどうした上等じゃねぇか!
相手だってボロボロだ!
こちとら目的達成して絶好調!
ハンデなんざいくらでもくれてやるよ!
「お前…シオンの旦那か?」
聞こえづらいだけだと信じたい言葉が飛び出す。
面倒な笠を脱ぎ捨てる。
2人が何故か驚いているが、関係ねぇ!
「旦那ぁ?俺はコイツんとこの居候だよ!
恋愛関係なんざありゃしねぇ!」
「ブフッ!」
急に笑い出したな、
「ハッハッハッハッハッ!
その体で話す事がそれかよ!
お前面白いやつだな!名前は!」
「ヒリュウだ!」
「アタシはツバキだ!
どうだい?アンタ私の男にならないか?」
「悪いな!今は刀が恋人でね!」
「そいつぁ残念…だ!」
話しながら蹴り込んでくるのを
抜刀した夜霜丸で受け流す。
「アタシは命令に逆らえないからさ!
アンタでどうにかしてくれよ!
出来ることならアタシを殺しt」
「分かった」
言葉を遮る。
「ゴチャゴチャうるせぇ、いいから…」
刃を上に向け、左手を添えながら
「黙って救われてろ」
獰猛に笑いかける。
「…ハッ、ホント面白えよ。お前」
ツバキも魔炎を激らせ、
しっかりとした構えを取る。
「いい男過ぎて参っちまうね。
そろそろ我慢も限界だし、
命の奪い合いと行こうじゃねぇか!」
「勝手に言ってろ囚われの鬼姫!
傅け!夜霜丸!」
………………
私が貫かれる瞬間に助けに来てくれた彼。
その笠を取った顔を見て、
私は思わず息を呑んでしまった。
蒸発してしまったらしい左目
右目の金眼だけが、爛々と輝いている。
左目と右の首筋辺りから大きく広がった罅割れ
罅割れの向こうからドス黒い何かが覗いている
紅の魔炎に混じるは、蒸発した彼の血液
燃え盛る蒼い炎は、焦げた匂いを運んでくる
どう足掻いても満身創痍で、
その一つ一つが
彼が動けるような状態ではないことを伝えてくる。
でも、それでも彼は笑っている。
本当に楽しそうに。
ギラギラとした貪欲な目で相手を見つめ、
玩具を目の前にした子供のようだ。
きっと止めるべきなんだろう。
彼が助けてくれたから、
私にはまだまだ戦える状態だ。
でも、彼の手がそれを許さなかった。
私を降ろした後、後ろに下がらせたあの手。
きっと凄い無茶をしてきたんだろう。
後ろを見れば帝国の外壁が大きく吹き飛んでいる。
あんな事を今の彼がしたら、
体が弾け飛んでも何らおかしくない。
それでも私を助けに来ることを選んでくれた人が、
自分が戦いたいと願っている。
それを否定するなんてことは
今の心臓がうるさい状態じゃ出来やしない。
護って貰えるなんて想像もしてなかった。
助けて貰うことがあるなんて
これっぽっちも
一緒にいてくれたら満足で、
それ以上なんて考えもしなかった。
こんなの知らない。
こんな気持ち、私は知らない。
想像すらしなかったことをして貰った時の気持ちを
どう表せばいいのかも分からない。
一つ確かなことは
私は、私のヒーローに
また、心を奪われてしまった。
・人間
この世界における支配者側。
上下関係に厳しく、クローンなど科学力に長ける。
・亜人
この世界における被差別側。
基本的に迫害されており、
エルフは魔法に、獣人は身体能力に長ける。
・魔物
この世界における敵対者側
その全てが人類の敵として認識される。
種類によって様々な特徴を持ち、
一番種類が多く、コレからも増える分類。