無双ゲーの無双される側に転生したので、ネームド達を避けつつ生きていき…たかったなぁ? 作:ムクロウ
夜霜丸
未だに製作者である俺達すらよく分かっていない
怪物級の刀型決戦兵器。
多分夜霜丸の能力は俺の鬼角の能力と魔法。
シオンの莫大な魔力による防御の特性を
独自に解釈して生み出されたっぽいので、
多分夜霜丸には意志がありそうなのが
怖いところだ。
二段階目の能力を初めて使った時、
それを見たシオンから言われた言葉はこれだった。
「前口上が完全にプロポーズとか
カッコ良すぎて大事なところが疼くとか
言いたいことはいっぱいあるけど…
それ、絶対人がいるところで使っちゃダメよ」
何故?と聞くと
「強すぎて100%利用しようとするだろうし、
周囲一帯を容赦なく皆殺しにしちゃうから」
…まぁ結局使うことになったんだけどね?
………………
花弁が舞う
辺り一面の花畑
青く輝くは黒い彼岸花
その中心で、俺は刀を地面から引き抜く。
引き抜いた地面から黒氷の茎が伸び、
巨大な一株の紫苑となる。
見上げれば
黒氷で
こちらに
「相も変わらずいい景色だ。
不純物が混じってるのは残念だがな?」
そんな一面濃藍色の世界で、
『アマルガム・ジェル』は
完全に黒氷に覆われて、停止していた。
夜霜丸は漆黒から
星空のような刀身へと変化し、
俺も紅の髪が黒髪に
吹き出す魔炎も蒼白になっている。
その能力は
『半径100mに黒氷で夜空と花畑を作り出し
それに触れたものを黒氷に閉じ込め、
魔力を吸収し使用者に還元する』
『刀を向けた方向の
射程距離500mの全てを黒く凍結させる』
の二つだ。
美しくも残酷な死の花園。
その舞い散る花弁の一つに当たった瞬間、
瞬く間に凍りつき、その魔力を吸い上げられる。
一段階目だと魔力を吸い上げるだけだが、
二段階目は吸い上げた魔力をそのまま使用者…
つまり俺に還元することが出来る。
簡単に言えば、
相手を閉じ込めて魔力タンクにする。
それがこの花園の能力だ。
空中に浮かんでる星にも同じ能力はあるが、
どちらかというとアレは直接攻撃用だ。
花園の能力はある程度実力があると効きづらく、
シオン等だと段々と凍っていく程度にまで落ちる。
『アマルガム・ジェル』も
実は瀕死だったから一瞬で凍りついただけだ。
そういった相手に対しての攻撃方法として、
また凍りついた相手を破壊する手段として
夜空の星々は存在する。
刀を向けた方向を凍てつかせる能力は、
対軍勢用の能力だ。
ただ、まだ制御が甘いことが関係し、
本来横に振えば
その範囲全てが凍りつくのだが、
今は切先を向けた方向を
直線的にしか凍てつかせられない。
「っと考えてる暇はないか、
さっさと終わらせよう」
この状態の最大の欠点は、
今の俺では2分間しか持たないということだ。
俺は『アマルガム・ジェル』に刀を向ける。
あれはまだ生きている。
2分間ではアイツの魔力は吸い切れない。
なので
「
そのまま破壊する。
星々の一つが俺の詠唱を合図とし
音速を超えて『アマルガム・ジェル』へ向かう。
「あの世行きのチケットだ。
代金はテメェの命で頼むぜ」
爆砕
全身を覆い尽くす黒氷と共に
『アマルガム・ジェル』は粉々に砕け散った。
「ふぅ…夜霜丸、解除だ」
俺の言葉と共に、
花園と星々が蒸発するように消えていく。
俺の髪と魔炎も紅色に戻った後、
本能を封じていつも通りの髪色に戻す。
夜霜丸も漆黒に戻ったのを確認してから、
ゆっくりと鞘に納める。
「あ゛〜…キッツゥ…」
そのまま後ろに倒れ込む。
氷点下まで温度が下がった地面に寝転がると、
そこにあった霜や氷の結晶が砕ける。
本能解放で炎のように熱された体も冷えていく。
死ぬほど疲れた。
何しろ本能解放してステータスを上げていても
頭痛がする程の使用難度を誇るのだ。
実際冷気は完全に制御できていない為、
今頃中央広場の周りは
極低温の地獄絵図になってるだろう。
もし人がいたら凍りついて死んでる。
「っあ〜でも休んでる暇ねぇ…
さっさと撤収しないと帝国軍が来ちまう…」
重い体をゆっくりと起こす。
今の俺の戦闘能力はかなり低い。
魔力はすっからかんだし、
体力も消耗してて動きが鈍重だ。
おまけに…
ー腹が減った
「っぐぅ…」
鬼の衝動も抑えるのに一苦労だ。
この状態で帝国軍とやりあったら
間違いなくボロ雑巾になるだろう。
「とりあえず転移装置を…ゴホッ!?」
手を口にやれば血色に染まる…
「…そろそろ限界か」
俺は今鬼化最悪のデメリットを無視している。
その代償として、俺の肉体は常に瀕死状態。
さっきの戦いも
実は一発まともに貰ったら即死だった。
魔力循環で肉体を持たせてるだけなので、
魔力が切れればこの通りだ。
「チッ…ホント嫌な体だぜ」
地面に落ちていた笠を拾い上げて被る。
この笠には俺の体組織が含まれてる。
そのおかげで夜霜丸の能力の影響を受けずに
原型を保ったままである。
転移装置を拾い上げ、残りを全て壊す。
これで追われる心配はない。
そのままスイッチを押す。
起動した装置の光に包まれ…
「ここは…帝都近郊の森か?」
光が収まると、俺は森のコテージに居た。
どうやら身を隠すには
最適な場所を引けたらしい。
「ハァ…どうにかなったか…」
側にあった椅子に腰掛ける。
そろそろ対策くらい考えないとヤバい。
目眩がして、頭の奥から声がする。
ー喰わせろ
「うるせぇ…なぁ」
黙ってろよ。堪え性のないやつめ。
「シオンは何してんのかね…」
アレと出会ってなきゃいいが…
…あ?
「ちょっと待てっ!?」
思わず立ち上がる。
立ち眩みがするがそんなことはどうでもいい。
研究所からアイツ逃げ出してたよな!?
ってことはシオンが今回来なかったのは…
「こんな千載一遇のチャンスを
シオンは絶対に逃さない…!」
最悪だ…!
一番悪いパターンを引いた場合
「帝都が吹き飛ぶぞクソッタレ!」
………………
「久しぶりね、帝都を見るのも」
こんな所、もう二度と来ないと思ってたのに
「さてと、あの子はどこかしら…」
帝都近郊の空から地上を見渡す。
あの子がいるならすぐに探知できるのだけど…
爆発
帝都の中央広場が爆ぜ、異形の化け物が現れる。
「何かしら?
確かもうヒリュウは来ているはずだけど…」
そう思いつつ、とりあえず破壊しようと
自身の周囲に刀を創り出し、そちらへ向ける。
だが…
「!…ふふっ♪余計なお世話みたいね」
その化け物に向かう人影を見て止める。
遠くから見ても分かる浪人笠。
私の愛しい人が向かっているのだ、
何の心配もないだろう。
「さて、無粋な真似は許さないわよ?」
「ハッ!誰がするかよ」
背後にいる人物に釘を刺す。
ここは地上からかなり離れてるけど、
この子には関係ないのだろう。
身長191cmとかなり大柄な体格
頭の横で二つの団子を作り、
そこから髪を垂らした
いわゆる地雷ヘアの白髪に金のメッシュ
少し髪を引っ掛けながら生え際から伸びる
2本のカーブした長い角
ヒリュウと同じ龍のような金眼は、
勝ち気な眼光を放っている。
いつ脱げるか分からないレベルで
足元も胸元も着崩した白い着物
不敵に笑う赤い唇からは白い牙が覗く
「久しぶりね。ツバキ」
「おうよ、久しぶりだな。シオン」
彼女の名はツバキ・アケボノ
彼女こそ『リベプリ』の
強さランキング2位候補の1人であり
「ありゃなんだ?アタシの眷属か?」
「私の伴侶よ」
「はぁ?」
「お前の伴侶ぉ?何の冗談だよ?」
「…失礼ね。
私に伴侶が出来るのがそんなにおかしい?」
少しムッとした表情のシオンに、
呆れたように返すツバキ。
「おかしいなんてもんじゃねぇよ。
天地がひっくり返るどころか、
あの世とこの世がぶっ壊れてもありえねぇだろ」
「あら、随分な言い草ね?
さては先を越されて悔しいのかしら?
貴方にも可愛いところがあるのね」
影のある笑顔をしながらシオンが煽れば
「あ゛ぁ゛ん?んだとテメェ…?」
青筋を浮かべながらツバキが応える
「「…」」
2人は無言で向き合って
「「死ね」」
お互いの破壊を振りかぶる。
シオンは刀を、ツバキは拳を
衝突
空中での凄まじい衝撃に地上の草原が捲れ上がる。
猛風が木を引っこ抜き、振動で大地が割れる。
「テメェの脳髄引き摺り出して、
今夜の晩飯にしてやるよぉ!」
「出来もしないことを声高らかに
語るのは恥ずかしいわよ?」
「ほざけぇ!」
煽り合いつつ、反動で距離が開く。
「
シオンが手を空に向ければ
刀が空を覆い尽くし、ツバキを狙う。
「"箒星"」
極光
シオンが手を振り下ろすと同時に
全ての刀が絶死の閃光となる。
「こんなもん!」
ツバキはそれに対して顔を守りつつ
真正面から突っ込む。
閃光の雨はツバキを撃つが
「っ…相変わらず脳筋ね!」
「そりゃどうも!」
それら全てを肉体で弾き返す。
よく見れば魔力の炎がその身を守り、
刀の刃を肌まで届かせていない。
「その馬鹿魔力にモノをいわせた
ゴリ押しは止めなさい?
美しくないわよ?」
「殺し合いに綺麗も何もあるかよ!」
そのまま拳をシオンに叩きつける。
が、それをシオンは大太刀を数本創って防ぐ。
「少なくとも彼の戦いは綺麗よ?」
「惚気は結構だ、ぜ!」
ツバキはシオンの惚気を聞きながら、
ウンザリした顔で回し蹴りを放ち、
大太刀諸共シオンを蹴り飛ばそうとする。
「あら、いいものよ、恋って。
貴方もしてみれば分かるわ」
「説教どうも!お返しだ!」
それをシオンは受け流し、
そのまま切り掛かるのをツバキが白刃取りする。
一見じゃれあっているように見えるが、
このやり取りの応酬だけで
帝都近郊は草一本生えない荒地と化している。
「そんな性格してるから行き遅れるのよ…」
「テメェこそつい先日まで行き遅れてた癖に
よくもまぁほざけるな!」
「今の私は幸せだもの」
「そりゃ良かったな!
言ったアタシが馬鹿だったよ!」
もう一度距離を取る2人。
「
シオンが再び空に手を向け
今度は巨大な柱の如き刀を落とす。
ヒリュウが切ったものとは速度も魔力密度も
段違いである。
「そうこなくちゃなぁ!」
ツバキもさらに魔炎を吹き出し、拳を構える。
「"裏燕"!」
そのまま刀に一直線に向かい、
その先端に向けて全力で裏拳を放つ。
「脳筋過ぎるのよ!貴方!」
「だから楽しいんだろうが!」
短いやり取りの後、巨刀が砕ける。
だがツバキも無傷とはいかず、
手の甲が切れ、血が流れる。
「いいねぇ…昂って来やがった!」
「そういう所、やっぱり鬼同士似るのかしら?」
「なんだ?愛しの旦那の話か?」
「そうよ。彼、貴方に似た所があるから」
「へぇ…」
ツバキは少し舌舐めずりをする。
「…あげないわよ?」
「奪おうなんざ考えてねぇよ。
ただちょっと興味湧いたから
是非とも戦ってみたいってのと」
そこでツバキは妖艶に笑う。
「あんまりにもいい男だったら、
味見くらいはいいだろ?」
「良いわけ無いでしょぶっ殺すわよ?」
思わず口調が崩れながら殺意を迸らせるシオン。
「おぉ、いい殺気だ!
お前からここまでの殺気を引き出すとは
ますます興味が湧いてくるね!」
それを真っ向から受けながら
何でもないかのように笑うツバキ。
「ハァ…こんなおかしな奴に目を付けられた
あの子が可哀想でならないわ…」
「…それお前が言うのか?」
本気で憂いた表情をするシオンに
思わず真顔になるツバキ。
遠くから「どっちもどっちだクソが!」という
セリフが聞こえてくる気がする。
「まぁいいわ。とりあえずツバキ、
貴方あの子を狙うことは変えないのね?」
「ん〜まぁな。
なんだかんだ同じ鬼にいい男もいねぇし。
私も相手が欲しくないと言えば嘘になるし。
お前の惚れた相手なら間違いは無いからな」
清々しいまでにつまみ食い宣言をするツバキ。
「なら駆除するしかないわね」
「お前本当ソイツにお熱だな…
親友の頼みくらい聞いてくれてもいいだろ?」
「悪いけど、帝国に捕らわれるような
情けない親友を持った覚えはないのよ」
「それを言われると何も言えねぇけどよ…」
そう、シオンが帝国の支配から自由になる方法を
探していた理由こそ、このツバキである。
「今も逆らえはしてないんでしょう?」
「そうだな。今は戦ってるから
ある程度の勝手は認められてるだけだ」
シオンの言葉に、
申し訳なさそうにするツバキ。
「今回本体じゃなく
それに対しての皮肉かよ?」
「それもあるわね」
この2人はお互い本気ではない。
ツバキは操られてる上に実験で疲弊してるし
シオンはそもそも本体じゃない。
さらに言えば先程のやり取りも牽制に近い。
それでこの被害が出るのだ。
2人がどれだけ規格外か分かる。
「それじゃあ、再開しましょうか」
「あぁ、そうだな。
お前を殺して、お前の旦那も殺してやるよ」
わざとらしく笑うツバキに
「いいえ、私が貴方を殺すのよ」
冗談混じりで応えるシオン。
(どうか私を殺してくれ)
(絶対に救ってみせる)
お互いに正反対のことを想いながら、
最強と準最強が、再び激突する…
ヒリュウのヒミツその②
前世で『リベプリ』に推しがいた
※シオンではない