無双ゲーの無双される側に転生したので、ネームド達を避けつつ生きていき…たかったなぁ?   作:ムクロウ

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北海道旅行中なので、更新遅くなります。


過去の全てVS刹那の現在 自分同士の大喧嘩

 

なんとなく、分かっていた。

今回は初めてじゃない。

 

いつかの過去、きっとずっと昔に

俺は呆れるほど多くの悲劇を見て来た。

 

きっと多くの死に様があって

その多くが不幸に塗れた生き様だった。

 

その無念は分かる。

だってそれらも俺だから。

 

空亡の言葉は正しく、

俺にとってそれは優しさに近いのだろう。

 

馬鹿馬鹿しいくらいの強さを得られたら

そう願った『俺』は1人じゃないだろう。

 

悲劇を繰り返したが故に生まれた

全てが手遅れになってから来た救世主

 

なんともまぁ皮肉な存在で、

『俺達』にピッタリなヒーローだ。

 

…だからこそ、俺は止めた。

目の前の悲劇は、まだ間に合う。

 

 

………………

 

 

「なんで止める。

 お前にとって別にコイツは特別じゃねぇだろ」

 

ーーそうだな。俺にとってシオンは

  あくまでもこの世界で救いたいと思った

  大勢の中の1人に過ぎねぇ

 

「大したこだわりもねぇのに、

 わざわざ起きてまで止めたのかよ?」

 

ーーもちろんだ

 

「何の為だ?正義か?偽善か?

 それとも自己犠牲の精神か?」

 

ーーなわけねぇだろ

 

「じゃあなんだよ」

 

ーー自己満足だ

 

空亡はキョトンとした後、

苦々しい表情をする。

 

「またそれか!そうやってまた誤魔化して!」

 

「うるせぇ」

 

空亡が割れる。

体の右半分がヒリュウの肉体に変わる。

 

息を呑むシオンを放って、

自分同士の論争は続く。

 

「これは俺の物語だ。

 横から邪魔してんじゃねぇよ」

 

「っテメェ…ッ!?」

 

空亡は右側を見て、硬直する。

ヒリュウは

 

「ちょっと話そうぜ…

 久々にさ…」

 

完全に

 

「キレちまったよ…!」

 

ブチギレていた。

 

 

………………

 

 

黒天の太陽が輝く真っ白な世界。

そこはヒリュウと呼ばれる男の精神世界

 

「ブッ!?クッ…」

 

そこで圧倒的強者である空亡は、

ヒリュウの顔面ストレートを喰らっていた。

 

「よくもまぁ好き勝手やったなクソ野郎…」

 

「んだと…この分からず屋が!」

 

「ガッ!?グッ…」

 

空亡の拳がヒリュウの腹に刺さる。

思わず地面に転がるヒリュウ。

 

「テメェはいつもそうだ!

 どんだけ助けようとしても!

 いつもいつもテメェ1人で抱え込みやがる!」

 

空亡は吐き出すように言葉を続ける。

 

「ちったぁ頼りやがれ!オレはテメェだ!

 頼ったって誰も文句なんざ言うこたぁねぇ…」

 

「俺が俺に文句があるんだよ…!」

 

虚を突かれて黙る空亡。

 

「あぁそうだろうさ。

 テメェに頼ったところで誰も文句は言わねぇ。

 俺以外はな!」

 

立ち上がりながらヒリュウは言う。

 

「いいか!

 これは俺の物語だ!

 過去や悲劇なんざ知った事じゃねぇ!

 『俺達』は好きな事やって

 自分勝手に生きてるんだよ!

 報われない?当然だろうが!

 報われたくてやってるんじゃねぇからな!

 救いたいから救ったんだ!

 自己満足でヒーローやってんだよ!

 それを…」

 

空亡に再び走り寄り

 

「テメェが横槍入れてくんじゃねぇ!」

 

「ガハッ!?」

 

脳天に踵落としを決める。

この世界での物語の始まり。

その合図となった一撃。

 

「何度だって言ってやる!

 これは俺が星を撃ち落とす(最強と並び立つ)物語だ!

 それは俺自身にだって邪魔させねぇ!」

 

「お前にはオレがいるだろうが!

 とっくに追い越した背中を

 どう追いかけるってんだ!?」

 

「馬鹿かテメェ?」

 

叫ぶ空亡に笑うヒリュウ。

 

「ゲームってのは

 0から始めるから楽しいんだろうが」

 

「…」

 

呆然とする空亡に続ける。

 

「この世界でのオレの選択は!

 全て俺の意志で決めたもんだ!

 救ったやつは俺がやりたいことやった結果だ!

 それを殺す?ふざけんな!

 俺の人生だ!

 救ったやつを再び不幸にしようってんなら!」

 

ヒリュウが言葉を続ける度に、

その体の周りを氷の結晶が舞い散る。

 

「俺が!テメェを!ブチ殺す!」

 

()()

研究の副産物。

氷の結晶同士をぶつけ合い、

ただ自然の落雷を落とす魔法が

空亡に炸裂する。

 

「カッ…カカッ…

 カカカカカカカカッ!」

 

笑いながら空亡は立ち上がる。

 

「そうかよ…あぁそうかい!

 なら…」

 

力が渦巻く。

存在してはいけない程の力が解放される。

 

「オレはテメェの言ったように!

 身勝手にテメェを救ってやるよ!」

 

「やってみろよ!俺は俺の為に!

 テメェはテメェの為に!

 自分同士の大喧嘩だ!

 こういうのの方が…」

 

お互いに睨み合いながら、

鏡合わせのように獰猛に笑う。

 

「「(オレ)達らしい!」」

 

 

………………

 

 

私は呆然とヒリュウを見つめる。

 

ヒリュウは今、黒氷の中にいる。

私が握っていた夜霜丸が突如鞘から抜けて

地面に突き刺さったかと思えば

ヒリュウがそれに凍棺(コキュートス)を使い、

黒氷で自分を凍らせたのだ。

 

空亡の方も簡単に出られるはずなのに

二人とも目を閉じたままだ。

 

…まさか死んだんじゃ

 

「生きてるよ」

 

「ツバキ!」

 

ボロボロになりながらも、

どうにか立ち上がるまで回復した私の親友は

すぐ側まで歩いて来ていた。

 

「中で二つの魂が動いてる。

 よく似てて見分けるのが大変だけど」

 

「そう…良かった…」

 

「多分精神世界で争ってるよ。

 主導権争いってよりは、兄弟喧嘩に近いけど」

 

確かにそれはそうだ。

空亡からはヒリュウに対して親愛というか

父性に近いものを感じた。

 

「この場合私達は

 ヒリュウを応援すべきなんだろうが…

 空亡の話を聞く限り、

 果たしてどっちの方が幸せかね?」

 

「それは…」

 

おそらく、私達では答えが出せない。

救ってもらった人間ほどあの話は心に響く。

どうすることも出来ずに立ち尽くしていると

 

「…っち、こっちから話し声が…!」

 

3人程気配が近づいてくる。

 

「ここに…!ってシオンさん!?」

 

「ヒッ!殺される…!?」

 

「…」

 

「貴方達は…」

 

現れたのはいつかの3人組。

おそらくこの中の誰かが

ツバキとの戦いの中で援護してくれたのだろう。

 

「ヒリュウさん!?」

 

「氷漬けになって…!?」

 

「…貴様」

 

ヒリュウを認識した瞬間、

即座に戦闘態勢に入る3人。

 

「ハァ…ヒリュウ…貴方って人は…」

 

いつの間に堕としたのか…

そういえばあの時そもそもこの子達を

助ける為に飛び込んで来たんだっけ…

 

「…やっぱり帰ったら襲いましょう。

 早めに分からせとかないと…」

 

「元の調子に戻ったのは良かったが、

 誤解を解いてからにしてくれねぇ?」

 

すっかり元通りになって

独占欲を発揮しているシオンを

呆れたように正気に戻すツバキ

 

「ね、ねぇ、多分だけど…」

 

「勘違い…じゃない?」

 

「…アホらしい」

 

その様子にすっかり毒気を抜かれた3人。

そして説明を聞いた3人組もまた、

ヒリュウが目覚めるのを待つことになった。

 

 

………………

 

 

黒い閃光が縦横無尽に奔る。

多くの顎が喰らい尽くそうと迫り、

橙と黒の混ざった炎が魂までも焼き尽くす。

 

「やっぱ基礎性能が違い過ぎなんだよ!」

 

「なんだ!言い訳か?」

 

「違ぇよ愚痴だ!」

 

俺はそれに対して氷刀(エッジ・オブ・クレバス)を合わせるが

秒で砕ける為、常に綱渡り状態だ。

 

「マトモな刀が無けりゃお前はオレと

 戦う舞台にすら立てやしねぇ!

 今生きてるのはこの世界では

 身体能力が同じになるからに過ぎねぇ!」

 

「言い訳か?」

 

「事実だろうが!」

 

まっ、そらそうだ。

本体のシオンを瞬殺するようなやつに

分身のシオンに苦戦する俺が

普通にやって勝てるわけがない。

 

だがここは精神世界だ。

肉体に縛られていない為、身体能力は全くの同一。

勝敗を決めるのはその他の戦闘技能となる。

 

空亡の能力は主に肉体の変形と

指向性エネルギーの放出。

そして、魂を焼く原罪の炎だ。

 

空亡曰く燃え上がる憎悪が原罪の炎で、

俺の黒氷が冷え切った絶望らしい。

 

一方俺の能力は刀一辺倒だ。

何をするにもとりあえず刀が必要になる。

 

故に氷魔法で刀を作るわけだが、

別に俺は魔法が得意なわけではない。

 

なので作った刀は充分な物でなく、

簡単に破損し使い物にならない。

だが…

 

「それで諦めてちゃ楽しくねぇよなぁ?」

 

イメージする。

思い出すのは夜霜丸の能力。

空亡が言うにはアレはオレの力だ。

なら…

 

「…来い!夜霜丸!」

 

地面に黒い影ができ、

それが水面のように波打つ。

 

「お側に」

 

出て来たのは濃紺色の髪の和服の女性

ショートボブに髪を切り揃え、

瞳はどこかの誰かによく似た至極色だ。

 

「「…誰?」」

 

「まぁ誰とは我が主様、

 お呼びされたので参上したのですよ?」

 

俺と空亡は顔を見つめ合う。

 

ーー呼んだのお前やん?

 

ーーいや知らんが

 

…まさか

 

「「お前夜霜丸か!?」」

 

「はい、もちろんでございます」

 

意思があるとは思ってたが、

ここまで明確だとは思わねぇよ!

 

「ま、まぁいいや。力を貸せ相棒、

 お前がいなきゃ始まらねぇ」

 

「承知いたしました。

 貴方が望むのならば、どこまでも」

 

夜霜丸が輝き、

黒刃に白い持ち手の刀となる。

それを手に取り、構える

 

「傅け 夜霜丸」

 

(あおぐろ)いオーラが吹き出す。

 

「…色々あったが仕切り直しだ。

 構わねぇだろ?」

 

「あぁ、テメェをぶちのめす事に変わりはねぇ!」

 

そう言って放たれる光線を

 

「"雷切"」

 

剣圧をぶつけて逸らす。

 

「切るつもりだったんだがな」

 

「そう簡単にはいかねぇだろ」

 

「それもそうか」

 

別に刀を手に取ったからって

戦力差はそう変わらないのだ。

相変わらず空亡の方が数段強く、俺は劣勢だ。

 

高速で夥しい数放たれる顎を

"雷雲"で全て弾き返す。

速度が一緒なので、迎撃はできる。

だがそれは向こうも同じ事。

さらには…

 

原罪の炎に黒氷をぶつけて相殺しながら、

相手の懐に潜り込む。

 

抜刀

 

「"鳴神"」

 

一閃

…それは空亡に逸らされる。

 

これだ。同じ身体能力ということは

"鳴神"についてこれてしまう。

肉体がないから過剰燃焼(オーバースロットル)は使えないし、

本能解放の源はそもそも空亡だ。

ようは速度を上げる手段がない。

俺の剣術が通用しない為、

どこまで行っても千日手…

 

「"玲瓏"」

 

とは、ならない。

空亡の放った

一切動きに無駄のない突きが鳩尾に突き刺さる。

 

「ゴフッ!」

 

たまらず吹き飛ぶ。

速度が同じなら、より洗練された方が勝つ。

経験も年数も圧倒的に向こうが上だ。

話にならない。

 

「諦めろ。テメェじゃ俺に勝てねぇ」

 

「ハッ…ハハハッ…」

 

笑う。何言ってんだテメェ?

 

「楽しくなってきたところだろうが!」

 

「変わらねぇな!オレ!」

 

光線、顎、獄炎。

それらを切り飛ばし、

凍てつかせながら嗤い合う。

どこまで行っても結局…

 

「テメェだって俺なら分かるだろ!

 この悦楽が!」

 

「あぁもちろんだ!今は面倒くせぇがな!」

 

「同感だ!」

 

俺達は同じだ。

戦いを楽しみ、好きな事をして生きる。

それだけは変わらない。

 

イメージしろ。

必要なのは速度、これを上げる手段。

答えは知っている、雷だ。

ならどうやってそれを使う?

俺に使うことが許されているのは氷だけだ。

 

「考え事か?余裕だな!」

 

「若人の発想を邪魔すんなよ老害!」

 

飛び込んできた空亡の拳に

刀の振り下ろしを合わさる。

技術の差で吹き飛ぶ。

 

氷しか使えない?

それがどうした?

氷が雷にならない等誰が決めた?

魔法とは究極的には概念だ。

使用者のイメージこそが形となる。

それを俺は、空亡(オレ)が喰らった

シオンの一部を通じて理解した。

 

思い描け、求めるは雷霆。

ありとあらゆるを置き去りにする刹那の雷光。

分析し、夢想し、再現しろ。

ここは俺の心の中だ。

想像可能、それ即ち…

 

「…実現可能!」

 

魔法を発動する。

数々の世界の記憶がある空亡さえ見た事がない、

何にも当てはまらない全く新しい魔法構成。

 

空亡の足が止まる。

その魔法への驚きからか、それとも期待からか。

 

これが俺の、俺だけの雷だ!

 

氷雷(カザハナノイカヅチ)!」

 

中空に魔力が収束し、

雪白色の稲妻が飛び出す。

それは霹靂の勢いで空亡へ迫り

 

「喰らうかよ!…ってガァッ!?」

 

凍撃

迎撃しに来た顎を砕き、

その残骸を伝って空亡本体へ到達。

右腕を内部から凍結させた。

 

氷雷(カザハナノイカヅチ)

その正体は、

雷の特性を完全に再現した凍結の概念だ。

速度、威力、()()の特性が再現され、

それら全てに凍結属性が付与される。

 

「…カカカッ!最高だぜ!

 やっぱそうこなくちゃオレじゃねぇよな!」

 

腕ごと氷を砕き、

一瞬で再生しながら空亡は笑う。

内部から凍っている為、

体ごと砕いて再生しなければ動くことはない。

 

すっかり楽しんでやがる。

流石俺、目的は忘れてはないが、

やはり刹那主義だ。

 

「だがそれがどうした!

 飛び道具が増えた程度なら

 それに対処すりゃ終わりだぞ!」

 

「まぁ焦るなよ。今見せてやる…!」

 

…ここまで随分と長かった。

俺の求めた理想についに手を掛けた。

まさか素養の問題で

死ぬほど大変になるとは思ってなかったが、

やっと完全な形で使ってやれる。

()()()()()()()

 

天牢雪獄(テンロウセツゴク)氷雷(カザハナノイカヅチ)

 

この魔法は本来、強烈な冷気を纏って

触れたもの全てを自動的に凍てつかせる魔法だ。

近接戦闘をしようとすると

刀すら凍らせる為、使い勝手が悪かった。

だが、今は違う。

 

雪白色の稲妻が体に流れる。

溢れ出た氷雷が体から迸り、

周囲を凍てつかせていく。

 

「…いくぞ、ここからは」

 

一歩、それだけで空亡の目の前に移動する。

動いた軌道に雪白色の稲妻が残る。

 

「ッ!」

 

迎撃しようとする空亡の左腕を切り飛ばす。

凍結が伝わり、左半身が内部から凍結する。

 

「反撃のターンだ」




・夜霜丸と氷雷
本来夜霜丸を解放して魔法をつかうと全て黒氷となるが、氷雷は全く新しい構成の魔法の為、魔法判定を受けない。
…健気な刀が含めないように配慮したのもある。

分岐点
Aルート
https://syosetu.org/novel/345520/14.html
Bルート
https://syosetu.org/novel/345520/17.html
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